原発に強度不足の鋼材使用の可能性

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原子力規制委員会は8月24日、各原発事業者に対し原子炉容器等における炭素偏析の可能性に係る調査を指示した。

2015年4月、建設中のフランスの Flamanville 3号機で、Areva社傘下のCreusot 工場 (Creusot Forge ) が製造した原子炉容器上蓋と下鏡に鋼材組成の異常が見つかった。
炭素濃度の高い箇所では機械的強度が弱まるため、フランスの原子力安全局 (ASN) は、他の原子炉機器にこれと同様の異常が存在するかを特定する分析調査の実施をフランス電力(EDF) とArevaに指示した。

その結果、ASNは6月28日に下記の発表を行った。

フランスで運転中の58基の加圧水型原子力プラントのうち、9つの原発の18基の蒸気発生器で水室(Channel Head) の機械的強度が想定より低い可能性がある。

原発 リアクター
Le Blayais No.1
Bugey No.4
Chinon B1, B2
Civaux No.1, No.2
Dampierre No.2, No.3, No.4
Fessenheim No.1
Gravelines No.2, No.4
Saint-Laurent-des-Eaux B1, B2
Tricastin No.1, No.2, No.3, No.4

これらはArevaのCreusot 工場 と日本鋳鍛鋼(新日本製鐵グループ及び三菱グループの共同出資)が鍛造したもので、機械的強度を低下させる炭素濃度の高い領域を持つ鍛造鋼が使われた可能性がある。

ASNはEDFに対し、当該蒸気発生器の水室の機械的強度を裏付けるよう指示を出した。

このような鍛造鋼がクラス1容器(高温高圧の原子炉冷却材を閉じ込める原子炉容器、蒸気発生器、加圧器)において、使用されていないかどうかについて調査を継続するとしている。


これを受け、原子力規制委員会は、国内の実用発電用原子炉の原子炉容器等において、炭素濃度の高い領域が残っている可能性がある鋼塊部分を含んだ鍛造鋼の使用の有無等について確認する必要があると判断し、今回、下記のとおり指示した。

下記の調査対象機器について、製造方法及び製造メーカーを調査し、その結果を報告すること。

加圧水型原子炉:原子炉容器、蒸気発生器、加圧器
沸騰水型原子炉:原子炉圧力容器

調査の結果、鍛造鋼の使用が確認された場合は、当該鍛造鋼が規格を上回る炭素濃度領域を含む可能性について評価し、その結果を報告すること。

フランスで2015年4月に問題が分かり、ASNが調査を指示し、本年6月に結果を発表しているのに対し、原子力規制委員会の対応が遅いのが気になる。

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