東京ガス、英のCentrica とLNGをスワップ

| コメント(0)


東京ガスは11月21日、英エネルギー大手 Centrica のトレーディング事業会社であるCentrica LNG社と、「相互協力に関する協定」を締結したと発表した。原料調達等を中心とした分野において更なる連携強化を図る。

その具体的な取り組みの第一歩として、LNGのスワップを行い、「LNGの輸送効率向上を通じたコスト削減を目指す枠組み」の実現を目指すことに合意した。

東京ガスが米国産LNGを欧州に供給する一方、Centrica はこれまで英国に輸送していたマレーシアのLNGを日本に供給する。
米国の東海岸のLNGは輸送距離が長く、パナマ運河を通るためコストがかさむが、スワップでコストを抑える。

試算ではLNGの運賃(100万BTU当たり)は次ぎの通り。(ソース:Platts LNG Forum, Tokyo 2012/9/25)  

Cove Point(東海岸) 日本 $3.07

マレーシア日本 $1 程度 (豪州 Gorgonからの場合 $1.17)
Cove Point(東海岸) 欧州 $1.05

参考 Kirimat(カナダ西海岸)からは$1.24、Gulf Coast からは$2.96

東京ガスはCove Point LNGプロジェクトから購入する年間140万トンのうち、年間35万トン(1隻)~70万トン(2隻)を想定しており、輸送費は、船1隻の1往復当たりで1億円超を削減できる見込み。(標準的な大きさのタンカーで1回に運べるLNGの量は、145千立方メートル:約6.7万トン)

Centricaも後記の通り、LNGをマレーシアから英国まで輸送しているが、これを日本に送ることで運賃の節約になる。

ーーー

住友商事と東京ガスは2014年2月、Dominion 社が米国メリーランド州で実施する Cove Point LNGプロジェクト(液化能力 年500万トン)における天然ガス液化加工委託およびLNG販売を目的に、共同事業会社 ST Cove Point LLCを設立した。

住友商事の100%子会社であるPacific Summit Energyを通じて米国産天然ガスを調達し、Dominion Cove Point LNG が液化加工した年間約230万トン分のLNGを輸出するプロジェクトで、2017年の稼働開始を目指している。

このうち、東京ガスは年140万トンのLNGを輸入、住友商事は残り90万トンのうち、80万トンを関西電力に販売する。

Dominion は他に、インドのGailとの間でLNG年230万トンの契約を締結している。

2013/9/13 米、日本向けLNG輸出 2件目を承認 


東京ガスは自らもシェールガス開発に参加している。

2013年3月にQuicksilver Resources Inc.から、米国テキサス州バーネット堆積盆におけるシェールガス開発事業の権益25%を485百万米ドルで取得した。
同社持分のガス生産量は、LNG換算で約35~50万トン/年と見込んでおり、米国内市場に販売する

2016年6月21日、VirTex Groupがテキサス州南部ウェブ郡・ラサール郡に保有するEagle Ford 層他におけるシェールガス開発事業の権益を取得したと発表した。

取得 LNG換算持分 取得価額 取得時 
WTI原油価格
Barnet 2013/3/29 35~50万トン/年 約520億円
(減損358億円)
$97.23
Eagle Ford 2016/6/21 20万トン/年 約80億円 $48.85


2016/6/30 東京ガス、米国の
Eagle Ford層におけるシェールガス開発事業への事業参加 

ーーー

Centrica plc は英国のガス・電力事業を行う持株会社。英国最大のガス事業者であり、ノルウェーや北米などでも事業を展開している。

1986年のガス法の改正で英国のガス事業は民営化され、British Gas plc が設立された が、1997年2月にBritish GasはCentrica、BG Group、Transco の3社に分割された。

その後、BG Group は2016年にShellに統合された。

2015/4/13 Shellが英BG Groupの買収で合意 

1990年に従来の国営電力会社が発電会社3社と12の地域配電会社及び送電会社のNational Grid に分割されたが、National Grid は2002年にTransco を買収し、2005年にTranscoをNational Grid の一部門とした。

Centricaは"British Gas" のブランドを引き継ぎ、ガス事業を一部門としている。

英国は北海油田の生産減少を受け、2005年7月に約20年ぶりに本格的にLNG輸入を再開した。

輸入再開に向けて、Isle of Grain のLNG基地が商業運転を開始した。

CentricaはマレーシアのPetronasからBintulu LNG のLNGを購入し、Isle of Grain のLNG基地に輸送している。

Bintulu LNG については、2016/6/7 JX、Petronas LNG 9 への資本参画

別途、Centricaは米国のCheniere Energy Partners のSabine Pass LNGの第5系列175万トンの20年間の長期販売契約を締結している。

2016/2/27 米国のLNGの初輸出


ーーー

日本の輸入LNGの契約は大半が原油価格スライドで、現在は輸入価格が下がっており、米国の東海岸からの輸入は割高となっている。

9月のLNG通関価格と米国の天然ガス価格、それを基にしたLNG輸入価格 は次ぎの通りとなる。 
(Henry Hub 天然ガス価格 + 口銭15% +液化費 3$ + 運賃 3$)

今回のスワップで、運賃は約2$安くなることになる。

ーーー

東京ガスは2020年に向けた経営計画「チャレンジ2020ビジョン」で、ガス上流事業の拡大と海外でのLNG Value Chain の構築を掲げ、今後も投資を積極的に進める。

地域ごとにLNGバリューチェーンを構築し、併せて地域間でのバリューチェーン展開を目指す。

コメントする

月別 アーカイブ