島野製作所、アップルの特許裁判で敗訴

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島野製作所がアップルを特許権侵害で訴えた控訴審で、知的財産高裁は10月26日、特許権の侵害がないとした一審・東京地裁判決を支持、島野製作所の控訴を棄却した。


島野製作所は、電源アダプターに使われる「pogo pin」というるコネクタ部分の接触端子の専業メーカーで、2005年からアップルのノートパソコン(Magsafe、Magsafe 2)に接続する電源アダプタ側の端子向けに、単独サプライヤーとして供給してきた。

島野は2012年にアップルから増産要求を受け設備投資を実施したが、直後に取引を急減させられた。

島野は取引回復を求めたが、納入価格を半額以下にするよう要求され、さらに納入済みの在庫部品についての値下げ分として約159万ドルのリベート支払を求められた。

島野はいずれの要求にも従ったが、2014年8月にアップルを相手に独占禁止法違反と特許権侵害で訴えた。

① 独禁法違反等  リベート支払等に関する損害賠償請求(約100億円)

② 特許権侵害   一部のアップル製品についての販売差止及び損害賠償請求(約10億5千万円)

東京地裁は2016年2月15日、「係争をアメリカの裁判所で解決することを定めていた両社の合意は、合意が成立する法的条件を満たしておらず無効」と判断、国内で審理することを決めた。

2016/2/20 島野製作所の対アップル訴訟で国際裁判管轄の企業間合意に無効判断 


このうち特許権侵害について、東京地裁は3月17日、島野製作所の請求を棄却する判決を言い渡した。

島野は控訴したが、知的財産高裁は10月26日、特許権の侵害がないとした一審・東京地裁判決を支持、島野製作所の控訴を棄却した。

本件の問題は次のとおり。

  島野主張:

島野はアップルから依頼を受けて電源アダプターに使われているプランジャーピンを新製品用に開発し、アップルの要求で量産体制を構築した。
ところが、アップルは島野との合意を無視するかたちで、別のサプライヤーに代替ピンを製造させていた。
しかも、これが島野の特許権を侵害していた。

  アップル主張:

島野製作所が侵害を主張する特許権は、アップルの技術者と島野製作所の技術者が共同して発明したものを島野製作所が2011年11月に単独で特許出願したもので、権利が無効である。

新しいポゴピンは別設計であり、島野製作所の特許権を侵害していない。


一審東京地裁は、
島野の特許は押付部材全体が球であるピンのみを権利範囲としており、アップルが使用しているピンの形状はその範囲に属さないと判断した。

http://bylines.news.yahoo.co.jp/kuriharakiyoshi/20160403-00056167/


控訴審で知的財産高裁は、一審での中心的争点であった押付部材の形状の違い(球 vs キノコ型)だけではなく、技術的意義そのものが違うというところまで認定されてしまった。
判決では次の通り指摘された。

アップル製品と島野発明とは、押付部材とプランジャーピンとの接触に関し、技術的意義を異にするものということができる。

このため、アップル製品のコマ状部材は、構成要件Dの「押付部材」に該当せず、ほかにアップル製品の構成中、「押付部材」に該当するものはない。
また、アップル製品のコマ状部材の球状部がプランジャーピンの傾斜凹部を押すことは、構成要件Dの「押圧」に該当せず、ほかにアップル製品の構成中、「押圧」に該当するものはない。

均等侵害の主張について、成立が認められるための条件を満たして折らず、主張自体、失当である。

島野発明とアップル製品は、本質的部分において相違することが明らかであるから、均等侵害の成立を認める余地はない。

更に、アップル側からの島野特許の無効審判が行なわれていたが、8月16日に島野特許の無効の審決が出た。

元の出願を分割して、アップルの実際の製品に権利行使できるようにしたことが分割要件違反とされ、出願日が訴求しなかったことが無効の理由ととされた。

http://bylines.news.yahoo.co.jp/kuriharakiyoshi/20161026-00063719/


アップルは世界中で特許の争いをしており、特許の申請に当たっても、また法廷闘争に当たっても、十分な対策をしていると思われる。

特許権侵害については、島野の完敗である。

残るのは独占禁止法の争いであるが、これについての状況は明らかになっていない。

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