欧州中銀、量的緩和の規模を縮小、実施期間は延長 

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欧州のユーロを使う19カ国の金融政策を決める欧州中央銀行(ECB)は12月8日の理事会で、量的緩和政策の実施期間を9カ月間延長し、少なくとも2017年12月末まで続けることを決めた。
ただ、2017年4月から国債などの購入規模を現在の月800億ユーロから月600億ユーロに減らす。

ECBは拡大を続けてきた量的緩和の方向を転換するが、市場の状況などで物価が上がらない場合は、買い入れ規模の再拡大や実施期間の延長をする考えも示した。

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ECBは2015年1月22日、定例理事会を開き、ユーロ加盟国の国債などを購入し、資金を大量に金融市場に供給する「量的緩和政策」の導入を決めた。

ユーロ圏は物価が下落し続けるデフレの懸念が強まっており、量的緩和はこれを払拭する狙いで、量的緩和の導入は1998年のECB創設以来初めて。

量的緩和政策の概要は下記の通り。

1) 2015年3月から2016年9月末まで、毎月 600億ユーロ、総額1兆1400億ユーロの金融資産を買い取る。

2) ユーロ圏の全加盟国の残存期間2~30年の国債を購入対象とする。購入はECBへの出資比率に応じて行う。

3) 購入した国債の信用が低下し、国債価格が急落して、ECBに損失が生じた場合、
   損失の2割は全加盟国で分担
   残る8割は、国債を発行した国の中銀が負担。

4) ギリシャの場合、EU、ECB、IMFの3機関で構成する国際債権団がまとめた支援プログラムの条件を順守する必要がある。

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2016年4月、買い入れ規模を当初の月600億ユーロから月800億ユーロに増額した。

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当初案では量的緩和は2016年9月末までとなっていたが、ECBは2016年9月8日、3つの政策金利の据え置きと量的緩和(QE)プログラムの現状維持を発表した。

主要政策金利であるリファイナンスオペの最低応札金利を0.00%で据え置く
下限政策金利である中銀預金金利はマイナス0.4%、上限政策金利の限界貸出金利は0.25%で維持した。

ECBは2016年3月10日、追加緩和で -0.4%に引き下げた。

資産購入規模は月額800億ユーロの現状を維持し、少なくとも 2017年3月まで実施し、必要に応じその後も継続すると確認した。

いずれにしても、インフレ率が中銀の目指す方向に沿った軌道で持続的な調整が認められるまで続けると表明した。

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今回、量的緩和政策の実施期間を9カ月間延長し、少なくとも2017年12月末まで続けることを決めたもので、2017年4月から国債などの購入規模を現在の月800億ユーロから月600億ユーロに減らす。

当初期限 買い入れ規模
2015/3~ 2016/9 月 600億ユーロ
2016/4~ 月 800億ユーロ
2016/9 2017/3
2017/4~ 2017/12 月 600億ユーロ

買い入れ規模の縮小を決めた背景には、物価上昇が緩やかに続いていることがある。

ドラギECB総裁は、 原油価格の上昇などに後押しされて物価が上向くと説明。2019年の消費者物価上昇率が1.7%と、政策目標である「2%未満で、その近辺」に近づくとのシナリオを示した。

しかし、ドラギ総裁は「(量的緩和の規模を段階的に縮小して終了する)Tapering は議論していない」と繰り返した。市場の状況などで物価が上がらない場合は、買い入れ規模の再拡大や実施期間の延長をする考えも示した。

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米国は2012年9月にQE3 を開始し、以降、毎月850億ドルの債券買い入れを行ってきたが、2014年1月には、債券買い入れ規模を減らし、その後、毎月の債券買い入れを順次減少させ、2014年11月には買い入れをゼロとした。

そして、2015年12月16日に、米経済は2007-09年の金融危機による打撃を概ね克服したとの認識に立ち、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を 0%~0.25% から0.25%~0.50% に引き上げ、2016年中に4回の利上げを予想した。

2015/12/17 米国、利上げ

その後、利上げを見送ったが、12月13日~14日の連邦公開市場委員会では利上げが決まると予想されている。

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