日英、原発建設協力で覚書、日立・東芝の案件対象

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日英両政府は12月22日、原子力分野で包括的に協力する覚書を結んだ。世耕弘成経済産業相が同日、来日したGreg Clark ビジネス・エネルギー・産業戦略相 と会談し、 覚書を結んだ。

・Decommissioning and Decontamination 廃炉、除染での協力
・Research and Development
・Global safety and Security Practices
・Nuclear New Build

覚書では、日立傘下のHorizon Nuclear Power が英中部Wylfa で、東芝傘下のNuGenが英中部 Moorside(Sellafield)でそれぞれ計画する原発について言及した。
(In particular, both sides note the proposals for nuclear power stations in the UK put forward by Japanese companies, namely the Horizon project at Wylfa in Anglesey and the NuGen project at Moorside in Cumbria. Both sides note the progress made to date by the developers and welcome the opportunity to continue to discuss the development of their proposals.)

また、原子力の研究開発や、福島第1原子力発電所の廃炉や除染などでも協力を深めることを確認した。

日本政府は原発の輸出を促進するため、今後英国側と資金支援の詳細な検討を進める方針で、まず、国際協力銀行(JBIC)や日本政策投資銀行を活用したHorizonへの投融資の検討作業を英国側と進める。
原発稼働後の電力の買い取り価格や買い取り期間、事故が起きた場合の賠償の仕組みなどについても英政府と協議し、持続可能な枠組みづくりをめざす。

支援総額は1兆円規模になる公算が大きく、2017年中にも大枠を固める。

Clark 氏は会談の中で、原発の新増設について「英国の産業戦略、クリーンなエネルギー開発を考える上で非常に重要だ」と指摘した。

安倍政権には、新興国での初の原発受注で、インフラ輸出に弾みがつくと期待していたベトナムでの原発計画が中止になり、あせりがある。

2016/11/14  ベトナムの原発建設計画 中止へ

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英国では19基の原発が稼働しているが、英国政府は2009年11月に原発拡大策を発表した。
10か所に原発を新設し、2025年までに全電力の25%を原発で賄う計画(当時は全電力の13%)。

稼働中 廃止 政府案
Dounreay 実験炉
(Scotland 北端)
2基 
Hunterston  2基   2基 
Torness  2基 
Chapelcross  4基 
Calder Hall  4基 
Braystones
Sellafield
(Moorside)
Windscale(Sellafield)  1基 
Kirksanton
Hartlepool  2基 
Heysham  4基 
Wylfa  2基 
Trawsfynydo  2基 
Sizewell  1基   2基 
Berkeley  2基 
Bradwell  2基 
Oldbury  2基 
Hinkley Point  2基   2基 
Dungeness  2基   2基 
Winfrith SGHWR  1基 
合計  19基   26基 



しかし、福島事故で原発の安全確保のためのコストが見直された結果、2012年以降、ドイツ、英国の企業が原発計画から撤退した。

安倍首相は日本の原発の新規制基準は「世界一厳しい基準」と自画自賛している。

しかし、英国のHinkly Point やSizewellで計画中で、フランスのフラマンビル、フィンランドのオルキルオト、中国の台山で建設中の欧州加圧水型原子炉(EPR) は日本よりもはるかに厳しい基準であり、これが建設費高騰の理由である。

安全システムは日本の2系統に対し、4系統あり、飛行機の衝突や内圧に耐える合計の厚さが2.6mの2層のコンクリート壁 を持つ。

事故で炉心溶融が起きても溶け落ちた核燃料は「コアキャッチャー」と呼ばれる巨大な受け皿に流れ込む仕組みを備える。その上部にある貯水タンクは高温になると蓋が自動的に溶けて弁が開き、その結果コアキャッチャーを水が満たして溶け落ちた燃料(デブリ)を冷やす機能がある。

新規制基準制定時のパブリックコメントではコアキャッチャーの義務化を求める意見があったが、無視された。

しかも、日本との違いは、これらは地震の恐れのないところで建設される。地震のない所でも日本よりはるかに厳しい基準が求められている。

http://maptd.com/map/earthquake_activity_vs_nuclear_power_plants/

地図を拡大すると、日本以外の原発のほとんどが地震発生の歴史がないことが分かる。米国西海岸の原発はほとんど停止した。

各社の撤退を受け、英国政府は原発推進のため自然エネルギーの普及に使われている「固定価格買取制度」を原発に導入した。

フランスのEDF と英国政府は2013年10月、Hinkley Pointに欧州加圧水型原子炉(EPR) 2基 総出力320万kWを建設することで合意した。(追加2基も計画)
中国広核集団(CGN) が33.5%を出資、残りをEDFが出資する。

英国政府とEDFは今回、原子力発電での電力の固定価格買取価格(35年間)について、下記の通り合意した。

Sizewell での建設を決める場合 £89.50/MWh(約14.1円/kWh)
Hinkley Point単独の場合    £92.50/MWh(約14.6円/kWh)

* この計画については、英国新政権が中国の進出を懸念し、7月29日に「待った」をかけたが、9月15日に承認した。

2016/8/4 フランスと中国の企業による英国Hinkley Point C 原発計画に黄信号

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日立製作所は2012年10月30日、ドイツのエネルギー会社のE.ON及びRWEからHorizon 全株式を買収する契約を締結した。
買収額は
6億7000万ポンド(約850億円)。

2012/11/1 日立製作所、英の原発会社買収

Horizon は、北ウエールズのAnglesey島のWylfa Newydd とSouth Gloucestershire のOldbury-on-Severn の2カ所で、5,400MW級以上の原発(1,300MW級をそれぞれ 2~3基)を建設する。

2016/7/9 日本原子力発電、日立の英国の原電事業に協力 

2020年代前半の稼働を目指すが、2基にかかる総事業費を現時点で約190億ポンド(約2.6兆円)と想定。日立が総事業費の1割程度、英国政府が25%以上を出す案が出ている。

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東芝は2014年1月15日、スペイン大手電力会社Iberdrola S.A.から、英原子力発電事業会社NewGeneration (NuGen)の株式50%を、GDF Suez から同社保有のNuGen社株式10%を、それぞれ譲り受けると発表した。取得額は総額で約1億ポンド。

NuGenは東芝 60%、GDF Suez 40%の出資となる。

NuGen は、英中部Sellafieldで合計出力360万キロワットの原発建設を予定している。

Westinghouse Electric のAP 1000 を3基建設する予定。東芝は 原発設備を納入した後に経営権を売却することを想定しているとされている。

2013/12/27 英国が原発建設再開、固定価格買取制度導入、東芝と中国企業が計画に参加

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