東芝は1月27日、原発事業を大幅に見直す方針を明らかにした。
エネルギー部門を担当する社内カンパニーのエネルギーシステムソリューション社から原発事業を独立させ、社長直轄としてリスク管理体制を強化する。
海外については、原発の新規受注の停止や建設請け負いからの撤退など事業縮小の可能性を示唆した。原子炉の納入や既存原発の保守・管理などは続けるとみられる。
国内事業は原発再稼働、メンテナンス、廃炉を中心に責務を果たすとした。
東芝は福島第1の汚染水から放射性物質を取り除く装置や核燃料を取り出す機械、原発内部の様子を調べるロボットなどを手がける。
今後は溶け落ちた核燃料(デブリ)を取り出す難工事を控え、役割は重要さを増す。
福島第1原発の廃炉は東芝の人材や技術がないと立ち行かないため、政府は再建の行方を注視している。
原子力部門を統括する志賀重範会長(過去にWestinghouseの会長や社長を歴任)が退任する方向で調整に入った。巨額損失を招いた事業部門の統括役として経営責任を明確にする。
エネルギーシステムソリューションカンパニー社長でWestinghouse会長のダニー・ロデリック氏も退任する可能性が高い。
東芝の海外事業の縮小で、政府が掲げるインフラ輸出の柱のひとつである原発事業への影響は避けられない。
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既報の通り、 東芝はアメリカの原子力事業の損失額について、当初の見通しよりさらにおよそ2000億円拡大し、7000億円規模に上る可能性があるという見通しを取りまとめた。
東芝はこれを避けるため、1月27日の取締役会でフラッシュメモリー事業の分社化も決めた。その他の事業・資産の売却も行う。
分社化するのは社内カンパニーのストレージ&デバイスソリューション社のメモリ事業(SSD事業を含む)で、NAND型フラッシュメモリーはスマートフォン用の記憶媒体などに使われ、世界シェア2位と競争力がある。
NAND型フラッシュメモリーは、記憶の書き込みと消去が繰り返し可能で、電源を切っても記憶が消えない特徴を持ち、スマートフォンなどには欠かせない半導体 。
調査会社「ガートナー」によると、世界市場での売り上げのシェアは、トップが韓国のサムスン電子で32.6%、東芝は21%で2位、東芝と四日市市の半導体工場を共同運営しているアメリカのWestern Degital が15.4%で3位となっている。
分離事業の2015年通期の売上高は8,456億円、連結営業利益は1,100億円であった。
新会社の株式の19.9%を売却し、売却益で資本を増強する。
独禁法第10条2項で、会社が他の会社の株式取得する際、一定の基準に当たる場合には、公正取引委員会に事前に届出しなければならないとされている。
具体的には、取得後の 議決権の数の割合が新たに20%又は50%を超えることとなる場合となっている。昨年の東芝メディカルシステムズの株式のキヤノンへの売却では、3月末までに売却して売却益を計上するため、奇手を使った。
公取委は両者に対し異例の注意を行うとともに、今後、企業結合を計画する者が仮にこのようなスキームを採る必要があるのであれば、当該スキームの一部を実行する前に届出を行うことが求められるとした。
2016/7/4 公取委、キヤノンによる東芝メディカルシステムズの株式取得を承認
このため、今回は売却する株式を20%未満とし、独禁法の問題を回避する。
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東芝は2016年3月に「半導体メモリー」と「原子力」を経営の柱に据える方針を発表、当時の室町正志社長が「新生東芝の第一歩を刻みたい」と語った。
しかし、その「原子力」の赤字で事業縮小が止む無くなり、「半導体メモリー」も外部資本を入れることとなった。
最近の組織改編状況は下記の通り。
2016年3月に、白物家電事業を美的集団(Midea Group)に約537億円で売却、東芝メディカルシステムをキヤノンに6655億円で売却した。
社内カンパニー(黄色)は2015年度の7社が、2016年度には4社になった。
このままでは、今後も事業の売却が行われると思われる。東芝では、インフラシステムソリューシャンについて、「事業の柱」であり、売却は考えないとしている。
なお、シャープを買収した台湾の鴻海精密工業の郭台銘董事長は、東芝の一部事業への出資・買収について関心があることを明らかにしている。半導体と放送機器事業とされる。
鴻海は、8Kがエレクトロニクス製品における核心技術のひとつになるとにらんでいる。
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東芝は2006年2月に英国原子燃料会社(British Nuclear Fuels) からWestinghouse Electric の全株式を買収する契約を締結した。
米国の重電メーカーのWestinghouse Electric は1990年代に深刻な経営危機に直面、1996年に防衛産業部門をNorthrop Grummanに売却、1997年に 原子力以外の電力システム部門をSiemensに売却した。
Westinghouseは1995年に放送会社のCBSを買収しているが、1997年に社名をCBSに改称し 、Westinghouseの名が消えた。子会社にWestinghouseの商標の管理会社がある。
1998年に最後に残った原子力部門をBritish Nuclear Fuelsに売却した。
そのCBSは1999年にアメリカのメディアコングロマリットのViacomに買収され 、Westinghouseは完全に消滅した。
British Nuclear Fuelsが買収した原子力部門がWestinghouse Electric の商標を使用している。
英政府が100%出資するBritish Nuclear Fuelsはその後巨額の赤字を背負って事業戦略の見直しを迫られ、2005年7月にWestinghouseの売却を表明した。
これに対し、General Electric が日立製作所と共同で、また三菱重工業も買収に名乗りを挙げたが、2006年2月に東芝が54億ドル(当時のレートで6,210億円)で買収する契約 を締結した。
この時、入札に参加した日本の業界関係者は「価格は2,000億円から、どんなに高くても3,000億円」と見ており、「相場の2倍超」という東芝の買値が話題になった。
同年10月に手続きを完了したが、株式取得に当たり、東芝は77%(4,158百万ドル)、The Shaw Group が20%、石川島播磨重工業が3%出資とした。
東芝は2007年8月、カザフスタン共和国のKazatomprom に東芝持ち分の77%のうちの10%を5.4億ドルで売却する契約を締結した。ウラン資源開拓事業で世界的なリーダーであるKazatomprom を出資者として迎えることにより、原子力事業のグローバル展開を一層強化していくとした。
2012年7月に米国大手エンジニアリング会社のCB&I が Shaw Group を買収することで合意、2013年2月に買収した。東芝は 2012年10月10日、Westinghouseの株式 20%を Shaw Groupから取得すると発表した。Shawが当初の株式取得時のオプションを行使するもの。
これにより持株比率は、東芝が87%、Kazatompromが10%、石川島播磨重工業が3%となった。
付記 石川島播磨は、オプション権を行使してWestinghouse株式を東芝に売却する検討に入った。
Westinghouse を高値で買収したのと、その後の放漫経営を東芝本社が放置していたのが、たたっている。
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