インドネシアのニッケル、ボーキサイトの輸出承認、フィリッピンは多数のニッケル鉱山に閉鎖命令

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インドネシアのエネルギー・鉱物資源省は1月12日、「ニッケルやボーキサイトの未加工鉱石について一定の条件を満たした場合に5年間の輸出を認める」と突然発表した。

インドネシアはニッケルの世界最大の産地だが、政府は付加価値の高い製錬業育成のため2014年から未加工鉱石を一律禁輸としていた。

今回、輸出再開で歳入増や雇用増を目指す方針に変えた。2月1日に施行される。

発表では、ニッケルとボーキサイトは、国内に設置した製錬所の能力の30%を利用すれば未加工鉱石の輸出を認める。国内で供給が需要を上回った際にも輸出を認める。但し、5年以内に自分の精錬所を建設する約束をすることを条件とした。

外資系企業に関しては10年以内に株式の51%を政府や国内企業に売却するなどの条件も付けた。

その後の説明内容は次の通り。

ニッケル鉱は平均で1~3.5%を含有するが、低グレード品(含有量1.7% 以下)のみ輸出を認める。

精錬所の能力は現在、年1600万トン(うち低グレード品は1000万トン)。
全体の1600万トンの30%、480万トンの低グレード品を採掘者全体で国内精錬所に供給すれば、低グレード品を輸出できる。
この場合、2,3社が480万トンを供給さえすればよいこととなる。政府がサプライチェーンでの"traffic manager" として調整に当たる。

輸出できるのは、5年以内に精錬所を建設する約束をしたもののみ。

ボーキサイトについても、国内精錬所に30%の供給を義務付ける。
現在既に精錬所建設を進めているもののみに認める。少なくとも洗浄過程の建設を始めているものとし、最低含有量を42%としている。

政府は、6カ月ごとに建設の進展状況をチェックし、約束を果たさない場合はニッケルとボーキサイトの輸出ライセンスを取り消すとしている。

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インドネシア政府は2014年1月12日、国内での加工推進を目的とする未加工の鉱石の輸出禁止措置を導入した。

インドネシアで採掘された鉱石を国内で加工・精錬することを義務付ける「鉱物・石炭鉱業法」(2009年制定)に基づくもので、
加工製品の輸出増加を通じて、鉱物資源からの収益を長期的に拡大する狙いがある。

ただし、当局の間でも、未加工の鉱石の輸出禁止により、短期的には外貨収入が落ち込み、経常赤字が拡大し、通貨ルピーを圧迫する、大量の失業が発生するとの懸念があり、長時間の協議の末、加工・精錬を実施または計画している企業に2017年まで精鉱あるいは加工鉱石を輸出することを認めるという鉱物省の提案が採用された。2017年からは全ての企業が金属製品あるいは鉱石の精製品のみ輸出可能となる。

1) 加工・精錬を実施または計画している企業は2017年まで、銅、マンガン、鉛、亜鉛、鉄鉱石を輸出できる。

2) ニッケル鉱石とボーキサイトについては、国内に十分な数の製錬所があるため、輸出禁止措置
  (年間20億ドル以上の輸出が影響を受ける)

3) 石炭とスズの輸出は規制対象外

この当時、日本はニッケル鉱石の輸入 は、インドネシアが44%、フィリピンが32%、ニューカレドニアが24%であった。

2014/1/16 インドネシアが鉱石禁輸実施、直前に緩和


業界では当初、「すぐに撤回するだろう」との見立てもあったが、禁輸期間は長引いた。

フィリピンの環境規制の強化もあり、ニッケルは2016年に6年ぶりに世界で供給不足に陥った とされる。

今回の輸出解禁で、一部メディアは「世界のニッケル鉱石の供給力が14%上昇する」などと報じた。

但し、ニッケル価格は最大消費国の中国の景気減速などで低迷しており、インドネシアが輸出を再開すれば、国際価格をさらに押し下げる可能性がある とみられた。
(その後、下記のフィリッピンの鉱山閉鎖で、ニッケル価格は再度、上昇に転じた。)

また、低濃度のニッケル鉱石は精錬・加工にエネルギーが多く必要で、加工する中国などで公害悪化も懸念される。

銅、マンガン、鉛、亜鉛、鉄鉱石などの輸出は2017年まで認められていたが、国内での加工・精錬設備の建設は進んでいない。

今回、これらの輸出継続についてもいろいろな条件を付けている。

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フィリッピン政府は2月2日、公害対策のため、21のニッケル鉱山を含む23の鉱山の閉鎖を命じた。対象のニッケル鉱山は国全体のニッケル生産の約半分を占め、世界の供給の約10%を占めるとされる。
Nickel Asia Corpの鉱山も含まれる。

また、豪州のOceanagold Corpが運営するフィリッピン最大の金鉱山を含む5つの鉱山の停止も命じた。

環境天然資源相は、鉱山の損益より公共の福祉を優先すると述べた。大臣は、自ら視察して決めたとし、これらのうち15鉱山は水源地域にあると述べた。
Duterte大統領も同省の決定を支持している。

対象の鉱山は必要があれば訴訟の構えとしている。

Duterte大統領が2016年に大統領に選出された直後に、政府は鉱山が環境規制を無視しているのではないかとして全国調査を実施した。

その結果、フィリピン国内の鉱山の75%が環境基準に不適合と警告された。

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