米大統領、通商法301条で対中調査指示

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トランプ米大統領は8月14日、不公正貿易での制裁も視野に、中国に対する通商法301条に基づく調査を開始するよう指示した。

https://www.whitehouse.gov/the-press-office/2017/08/14/presidential-memorandum-united-states-trade-representative


内容は次の通り。

中国は知財やイノベーションや技術に関連して、米国の技術と知財の中国企業への移管を求めたり、米国の利害に悪影響を与えるような、法律、政策、慣例、行動を実行している。
これらは、米国の輸出を妨げ、米国のイノベーションに正当な対価を払わず、米国の雇用を中国に移転し、その結果、対中貿易赤字を増やし、米国の製造業、サービス、イノベーションを弱体化させている。

このため、USTRに対し、1974年通商法301条(301~309条の総称)の section 302(b) に基づき、中国の法律、政策、慣行、行動が不当又は差別的で、米国の知財、イノベーション、技術発展に害を与えているかどうかの調査を行うよう命じる。

不当と判断すれば制裁措置の発動も検討する。

1974年通商法301条では、米国の通商に負担・制限を与えている外国の慣行等について,当該国と協議を行うことを義務付け,解決しない場合には,関税引上げなどの一方的措置を発動する権限を行政府に与えている。

署名に先立ってトランプ大統領は「 外国による知的財産の盗難は、年間で数百万人の雇用喪失と数十億ドルの損失をもたらしている。不公正な行為からアメリカの労働者や技術、産業界を守るのは私の義務であり、責任だ」と述べ、不公正な貿易慣行の是正を求めていく姿勢を強調した。

直接言及はしなかったが、北朝鮮が核やミサイルの開発を進める中、中国から協力を引き出すため、圧力を強める狙いもあるものと見られている。

USTRのLighthizer 代表は今回の大統領令を受け、USTRが最優先課題の一つとして調査の検討に取り組む方針を示した。

付記

米通商代表部(USTR)は8月18日、中国による知的財産権の侵害を対象に通商法301条に基づく調査を開始したと発表した。

中国商務部の報道官は8月21日、「米国は世界貿易機関(WTO)のルールを無視し、国内法を根拠に中国に対して貿易調査を発動した。無責任であり、中国に対する指摘は客観的ではない。中国は米国のこうした一国主義的、保護主義的なやり方に強烈な不満を表明する」と述べた。
また、「中国は米国が事実を尊重し、協力の強化を願う双方の産業界の強い願いを尊重し、多国間の貿易ルールを尊重し、慎重に行動することを呼びかける。中国は調査の進展状況を注意深く見守り、あらゆる適切な措置を取り、中国の合法的な権利を断固として守る」と述べた。

これについて野党・民主党の上院院内総務は8月14日、声明を発表し「トランプ大統領の行動パターンが続いている。中国に対する発言は厳しいが、行動は弱々しい」と述べ、通商問題で大統領令の署名を連発しているものの、具体的な対応が伴っていないと批判した。

トランプ大統領は4月20日、大量の鉄鋼輸入が米国の安全保障を脅かしている懸念があるとして、米通商拡大法に基づいた鉄鋼輸入の実態調査を米商務省に指示した。

更に4月27日に、アルミニウムについての調査を指示する大統領令を出した。

鉄鋼については、トランプ大統領が関税引き上げと輸入割り当てを同時に課す考えを表明したが、米産業界で賛否が分かれて おり、決まっていない。
(輸入鋼材の攻勢を受ける鉄鋼業界は早期の関税引き上げなどを要求しているが、石油業界はパイプラインの価格の上昇につながりかねない制裁措置には反対、自動車産業も反対している。 )

2017/4/22 Trump大統領、鉄鋼輸入規制に向け、実態調査を指示


中国外交部の報道官は8月14日の定例記者会見で「中米の利益の相互融合が日増しに深まり、互いに切り離せない緊密な構造がすでに形成されている中、貿易戦争に前途はなく、勝者なくして共に負けるのみだ」と述べた。

「中米の経済・貿易関係の本質は互恵・ウィンウィンだ。双方は中米包括経済対話を通じて、双方の経済・貿易関係に生じる問題への対処について重要な共通認識にいたった。双方が相互尊重、平等及び互恵の精神に基づき、互いの懸念を対話によって解決し、中米の経済・貿易関係の持続的で健全な安定した発展を維持することを希望する」と述べた。

また「中国側は知的財産権の保護を一貫して非常に重視している。近年中国は関連法規を制定・整備し、知的財産権の侵害という違法犯罪行為への取り締まりを強化し、社会全体の知的財産権保護意識の強化を重視し、誰の目にも明らかな成果を得た」と述べた。

さらに「WTO加盟国による貿易措置は、すべてWTOルールを順守する必要がある」と米国の動きにクギを刺した。

WTOは一方的な制裁措置を認めていない。米の通商法301条は、何が不公正であるかの判断を米国が一方的に認定し,対抗処置を講じられるという意味で、 WTOルールに抵触する可能性が極めて高い。

米国が実際に制裁に乗り出せば、中国が対抗措置に動くなど、世界経済に大きな混乱をもたらす恐れもある。

米政府高官も「調査結果を得るまで1年近くかかる可能性もある」と述べるなど中国の出方を見極めつつ、全面対決は回避したいとの思いがにじむ。



付記

米通商代表部(USTR)は8月18日、中国による知的財産権の侵害を対象に通商法301条に基づく調査を開始したと発表した。

中国商務部の報道官は8月21日、「米国は世界貿易機関(WTO)のルールを無視し、国内法を根拠に中国に対して貿易調査を発動した。無責任であり、中国に対する指摘は客観的ではない。中国は米国のこうした一国主義的、保護主義的なやり方に強烈な不満を表明する」と述べた。また、「中国は米国が事実を尊重し、協力の強化を願う双方の産業界の強い願いを尊重し、多国間の貿易ルールを尊重し、慎重に行動することを呼びかける。中国は調査の進展状況を注意深く見守り、あらゆる適切な措置を取り、中国の合法的な権利を断固として守る」と述べた。

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