日産自動車は8月8日、日産が保有するバッテリー事業およびバッテリー生産工場を中国の投資会社GSR Capitalに譲渡する契約を締結したと発表した。
売却対象のオートモーティブエナジーサプライ(AESC)に共同出資するNECも、自社及び子会社のNECエナジーデバイスが所有する AESC 株式を日産に売却したこと、及びNECエナジーデバイスをGSR Capital に譲渡する交渉を行っていることを発表した。
NECエナジーデバイスはバッテリーおよび電極の開発・製造を行っており、AESCに電極を供給している。
GSR Capital (金沙江創業投資基金)は、北京、香港およびシリコンバレーに拠点を持つ中国の投資ファンドで 、電気自動車、新エネルギー、現代農業、医療および無線技術などの高成長分野への投資に焦点を置いている。近年、超小型EVメーカーやリチウムイオン電池メーカーに相次いで投資を行っている。
サッカーのイタリア1部のACミランは本年4月にRossoneri Sport Investment Lux に売却されたが、このオーナーはGSR Capital の会長のSonny Wu(伍伸俊)である。
日産の譲渡契約の対象となるバッテリー事業には、AESCの全株式(NECから譲渡を受けたものを含む)、北米日産会社が保有するバッテリー生産事業、英国日産自動車が保有するバッテリー生産事業、及び日産のバッテリー事業に関連する追浜、厚木、座間の開発・生産技術部門の一部が含まれる。
日産では、「AESCは、GSR Capital の幅広いネットワークや積極的な投資を活用し、新たな顧客の獲得により、その競争力の向上が可能となる。これは日産にとってはEVの競争力の更なる強化にもつなが る」としている。AESCを引き続き同社の重要なパートナーとし、日産は市場をリードするEVの開発及び生産に専念するとしている。
GSR CapitalのSonny Wu 会長は、「AESCの取得は、新エネルギー自動車産業に関わる当社にとって重要な一歩とな る。R&Dへのさらなる投資を行い、米国、英国および日本で既存生産能力を拡大していく。また、中国および欧州に新たな工場を建設し、世界中により良い製品を提供してい く」と述べた。
NECでは、スマートエネルギー分野では蓄電システムの構築・運用・保守を行うサービス事業へのシフトを進めており、総合的に検討した結果、このたびの契約締結に至ったとしている。
ーーー
オートモーティブエナジーサプライ(AESC)は2007年4月に、日産自動車、NEC、NECトーキンの合弁により、自動車用高性能リチウムイオン電池の開発、マーケティングを事業内容として設立された。
2008年に自動車用高性能リチウムイオン電池の開発、生産、販売を行う会社へ移行、2010年にHEV用、EV用のバッテリーの本格的な量産を開始した。
2010年4月にNECエナジーデバイスが設立され、NECトーキンの「大容量ラミネートリチウムイオン二次電池」事業を承継した。
AESCの株主も、NECトーキンからNECエナジーデバイスに代わった。
Renault と日産自動車は当初、AESCの技術をベースにした 電気自動車用電池工場を、2012年半ばまでにRenault のフラン工場に建設する計画を発表していた。
しかし、この計画は延期された。
2012年時点では、ルノーのEVの電池については、小型商用車「Kangoo Z.E.」とセダン「Fluence Z.E.」向けはAESCが、2人乗りの超小型車「Twizy」向けはLG Chemが供給していた。
電気自動車の分野での戦略的提携をしている Renault とフランス原子力庁は2012年7月、電気自動車用次世代電池の量産開発でLG Chemと提携すると発表した。
LG Chemは、EV用次世代電池の工場をフランス国内に建設し、2015年末からEV用電池の現行品の量産を開始する。
ルノーが2012年末発売予定の小型 EV「ZOE」も、LG Chemの電池を採用する。AESCの生産能力が限られているため、日産自動車は自ら出資するAESCの電池を優先して使い、RenaultはLG Chemの電池を採用することになったとされた。
Renault は2014年5月21日、Renault とLG Chemが次世代のゼロエミッションの自動車用のバッテリーを共同開発する契約に調印したと発表した。
車載リチウムイオン電池の世界シェアは次の通り。(2017/8/3 日本経済新聞)
Gigafactory内に設置されたパナソニックの電池セル工場で 新型EV(電気自動車)「モデル 3」およびTeslaの住宅用蓄電池「PowerWall」、産業用蓄電池「PowerPack」向けに、「2170」サイズの円筒形電池セルを生産する。
コメントする