ジャパンディスプレイ、550億円を調達

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経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)は3月30日、第三者割当増資などで約350億円 、資産売却で200億円、合計550億円を調達すると発表した。

第三者割当増資(海外機関投資家)  300億円
第三者割当増資(日亜化学工業)  50億円
能美工場の資産の産業革新機構への売却  200億円 産業革新機構はJOLEDに現物出資
合計 550億円

調達した資金は、2018年度下期に見込まれている液晶ディスプレイモジュール 「Full Active」の需要増に対応するための運転資金及び「Full Active」の後工程製造(モジュール組立)の設備投資等に充当する。

「Full Active」はディスプレイ4辺のすべてを狭額縁化したもの。2017年6月から出荷が開始され、複数の大手中国メーカー等に採用されている。
Appleは次のiPhoneで有機ELの採用を2モデルに増やし、1モデルで液晶を残す方針で、この液晶には、JDIの新型液晶「Full Active」が採用される予定。

Appleの有機ELへの転換で、JDIの同社向け販売が無くなるのではと懸念されたが、残ることとなり、それへの対応を行う。


但し、Appleの液晶回帰は一時的なものであり、最終的には有機ELに全面転換すると思われる。
JDIとしては一刻も早く、有機ELの体制をつくる必要があるが、膨大な資金が必要であり、単独での生き残りは難しい。

山形大学の城戸淳二教授の「大学教授のぶっちゃけ話」(2016/9/12)は「日本の有機ELディスプレイ」で次のように述べている。

間違いなく、確実に、100%の確率で、JDIのお客さんである中国のセットメーカーは3年後には自国パネルメーカーからのパネル調達になるでしょうし、JDIにとって最大の大口顧客のアップルも、液晶から有機ELに舵を切ることから、JDIの客は一気になくなることが予想されます。
ですから、JDIが生き残るためには、一刻も早く有機ELの生産に取り掛からなければならず、それができないと5年後には会社の存続すら難しいでしょう。

付記  JDIは6月26日、下記を発表した。

・ 2017年2月停止の能美工場(印刷方式OLEDの量産用に7月1日付でJOLEDに売却される)を産業革新機構に200億円で譲渡。

・ 産業革新機構に割り当てた新株予約権付社債のうち200億円(印刷方式OLED向け資金を調達することを目的)を買入消却

・ FULL ACTIVEの出荷拡大に向けて増加する運転資金を使途として産業革新機構から200億円の借入調達を行う。

・ JOLEDと資本業務提携の基本契約を締結

JOLEDが発行する種類株式のうち現時点でJDIが保有する全ての種類株式の普通株式への転換(議決権比率は一時的であるが、現在の15%から20%台に上昇)(決権比率を51%に引き上げることは予定せず。)
JOLEDとの研究開発分野における協業及び知的財産権の取り扱い
能美工場を活用した生産技術支援等

ーーー

JDIは主力のスマートフォン向けの液晶パネルが振るわず、2017年3月期決算の純損益は317億円の赤字で、3年連続の赤字だった。2018年3月期も赤字となる。

2016年も資金難に陥り、産業革新機構から750億円の支援を受けたが、すでに底をついている。

昨年夏の段階で、取引銀行に融資を要請、主力銀行は総額1100億円規模の融資枠を設ける方向で最終的な調整に入った。筆頭株主(35.58%出資)の産業革新機構が債務保証する。

国内に6カ所ある生産工場の集約や早期退職者の募集を検討している。財務基盤の改善を急ぐと同時に、生産設備を入れ替えるなどして競争力を高める方針。

中国江蘇省にある工場や石川県能美市の能美工場の生産停止などを検討しており、能美工場の従業員は同県白山市の白山工場に配置転換する。

2017/8/4 ジャパンディスプレイ、1千億円融資要請

石川工場 東芝モバイル(松下電器)  
能美工場 東芝モバイル(東芝) 停止→譲渡
白山工場 ジャパンディスプレイとして新設   2016/12 稼働
鳥取工場 ソニーモバイル(鳥取三洋)  
東浦工場 ソニーモバイル  
茂原工場 日立ディスプレイズ  
深谷工場 東芝モバイル(東芝) 2016/4 閉鎖

一方で、主要顧客のAppleの有機ELシフトで顧客を失うことを恐れ、JDIは外部のスポンサー探しに奔走した。

Appleや、中国の・京東方科技集団、天馬微電子、華星などと交渉を重ねてきたが、まとまっていない。
台湾の鴻海精密工業も検討対象となったが、シャープを傘下に置くことがネックとなった。

しかし、Appleが次のiPhoneで1モデルで液晶を残す方針を決め、この液晶には、JDIの新型液晶「Full Active」が採用されることが決まり、方針を変更した。

液晶増産のための部材調達や生産設備導入に充てるため、今回の資金調達を決めた。

第三者割当増資で、液晶パネル向けの発光ダイオードを手掛ける日亜化学工業(中長期の保有を前提)から50億円と、迅速に多額の資金調達に応じることが可能な資金力を有する海外機関投資家15社から計300億円、合計350億円を調達する。

資本関係は次の通りとなる。

当初 現状 増資後
産業革新機構  70% 35.58% 26.81%
ソニー 10% 1.78% 1.34%
東芝 10%
日立 10%
日亜化学 3.52%
海外機関投資家計 21.12%
うち Segantii Asia-Pacific Equity Multi-Strategy Fund 60億円 (4.22%)
Monashee Investment Management LLC 26.38億円 (1.86%)
Nezu Asia Capital Management Limited 21億円 (1.48%)
GSA QMS Master Fund Limited  20億円 (1.41%)
その他現行株主 62.64% 47.21%
合計 100% 100% 100%

合わせて、2017年12月に稼働を停止した能美工場の資産を産業革新機構に約200億円で譲渡する。

産業革新機構はこれを JOLEDに対し現物出資する。

JOLEDは2017年12月、生産拡大のため2018年3月末までに約1000億円の第三者割当増資を実施する方向で検討していると発表した。

約1000億円の3分の2をジャパンディスプレイの能美工場(石川県能美市)に投資し、生産規模を現在の10倍程度まで引き上げたい考え。残りは運転資金に充てる。

JDIは2016年12月にJOLEDへの出資比率を15%から51%に引き上げる計画を掲げていたが、中期経営戦略の見直しに伴い、実現していない。
今回、JDIはこの
方針を撤回した。

JOLEDは2017年12月、生産拡大のため2018年3月末までに約1000億円の第三者割当増資を実施する方向で検討していると発表した。

3月24日の記事で、デンソーなどからの500億円の増資を報じ、残る500億円増資後の出資比率を予想した。

2018/3/24 デンソー、JOLEDに300億円出資 

残る500億円のうち、産業革新機構が200億円を現物出資すると、(報道に基づくと)下記の通りとなる。

  現状 増資-1 増資-2 増資完了後
産業革新機構 75% 196億円   200億円 31.4% 396億円
ジャパンディスプレイ 15% 39億円     3.1% 39億円
Sony 5% 13億円 50億円   5.0% 63億円
Panasonic 5% 13億円 50億円   5.0% 63億円
デンソー     300億円   23.8% 300億円
住友化学     50億円   4.0% 50億円
SCREEN     50億円   4.0% 50億円
others(交渉中)       300億円 23.7% 300億円
合計   262億円 500億円 500億円   1262億円


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