USTR、通商法301条に基づく対中制裁関税案を発表、中国も対抗措置を発表 

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USTRは4月3日、通商法301条に基づき、中国の知的財産の侵害に対して発動する制裁関税の原案を公表した。

トランプ大統領の中国の知財侵害に制裁関税を課すよう指示した大統領令に基づく。

2018/3/23 トランプ大統領、中国の知財侵害に制裁関税を指示

産業用ロボットなど生産機械を中心とした約1300品目に25%の関税を課す。米国の消費者への悪影響を抑えるためスマホや衣料品など輸入額の大きい消費財は除いた。

対象品目の2018年の想定輸入額は500億ドルで、中国からの輸入額の約1割に相当する。(2017年の輸入額は5065億ドル)

  全リスト https://ustr.gov/sites/default/files/files/Press/Releases/301FRN.pdf

5月15日まで企業など一般から意見を募ったうえで対象品目を確定し、トランプ大統領が発動の是非を決める。

主な対象製品は下記の通り。

材料 鉄、アルミ、化学品、医薬品
生産機械 産業用ロボット、旋盤、射出成型機、金型、製紙機械、縫製機械
航空宇宙・輸送機器 航空機、ヘリコプター、航空機部品、自動車、バイク、船舶
重工業 タービン、コンプレッサー、ブルドーザー、ショベルローダー
医療機器 医療機器
部品 モーター、ヒューズ、プリント基板
電化製品 食洗器、磁気メディア、光ディスク、LED


対象品目は産業機械や航空・宇宙など中国が重点投資する産業から選び、他の国から代わりに輸入できないような製品を除いた。

大型飛行機や通信衛星のように昨年米国への輸入のなかったものや、武器のように輸入がほとんどあり得ないものなど、200品目以上が対象に含まれている。

スマホやラップトップパソコン、衣服や靴、おもちゃなど輸入額が大きい消費財は除外した。

しかし、フラットパネルTV(2017年の輸入39億ドル) や3リッター以下の電気及びガソリン自動車(同14億ドル)は対象となった。中国で組み立てられ米国で販売されているGMのSUVのBuick Envision や吉利汽車のVolvoなどが対象となる。

ライトハイザーUSTR代表は「中国の輸出に最大限の損害を与える半面、米国の消費者への影響を最小限にする」とするが、米国の産業界では、中国の部品に依存するサプライチェーンに影響を与え、最終的に米国の消費者の購入価格が上がることとなるとしている。


トランプ政権は制裁関税の詳細を詰めるのと同時に、制裁回避を求める中国との交渉も進める。

米国は知財侵害対策に加えて、1000億ドルの貿易赤字の削減策を求めており、中国政府は天然ガスや半導体、自動車などの輸入増で応じる構えを示している。

別途、中国商務部は本年1月には、ハイテク製品の対中輸出を制限する米国の規制が米国の対中貿易赤字の原因になっているとの認識を示した。

2018/3/19 トランプ政権、貿易赤字解消に躍起、対中貿易赤字1000億ドル削減を要請 

米政権は通商交渉で納得できる合意に達した場合、関税発動を取りやめる考えを示唆している。

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米国が通商法301条に基づき関税25%をかける中国製品1300品目を公表したことを受け、中国商務省の報道官は4月4日、「米国のやり方は典型的な単独主義で貿易保護主義。中国は激しく責任を問い、断固として反対する」と表明。「米国の利益にも中国の利益にも世界の利益にもならない」と強調した。


そのうえで「米国のやり方はWTOの基本原則や精神に著しく違反しており、中国はWTOでの紛争解決手段に訴える」と表明した。

同時に中国対外貿易法に基づき、米国製品に同じ規模での報復措置を準備しており、近く発表するとした。

この発表の直後に、中国商務部は公告34号を出し、米国の違法な行動から中国の権利を守るため、中国の対外貿易法や国際法の基本原則に基づき、米国産の大豆やその他の農産物、自動車、化学品、飛行機など計106品目(2017年の輸入額は約500億ドル)に25%の関税をかける方針を発表した。

対象は、大豆、トウモロコシ、棉花、小麦、牛肉、たばこ、乗用車、試薬、ポリアミド、飛行機、その他。

全リスト http://images.mofcom.gov.cn/www/201804/20180404161059682.pdf

付記 
石油化学品では、
EDC、アクリロニトリル、LDPE、PVC、アクリル重合体、ポリアセテール以外のポリエーテル、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、その他のポリエステル、ポリアミド、シリコーン、酢酸セルロースなどを含む。

SMやEGは含まれていない。

人民日報は追加関税の実施時期について、「米国の(制裁の)実施状況をみて、別に発表する」と伝えている。

中国では、以下の点から、大豆の輸入制限を切り札とみている。昨年の米国産大豆の輸入額は139億ドルに達する。

アメリカの大豆輸出依存度は高く、生産量の40%以上を輸出しており、その内の60%以上が中国市場向けである。アメリカの大豆生産の95%以上が中西部の農業生産地域にあり、このうち8つの農業州がトランプを大統領選で勝利に導いた重要な票田となった。もし、大豆輸出が制限されれば、これらの地域の経済は直接影響を受け、政治的に大きなダメージを受ける。

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米国は3月23日、通商拡大法232条に基づき、中国などに鉄鋼とアルミニウムにそれぞれ25%、10%の関税を課す輸入制限を発動した。

中国は対抗策として4月2日から、米国から輸入する豚肉やワイン、果物など128品目に報復関税を発動している。

2018/4/2 中国、対米報復関税を発動

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