トランプ大統領、イラン核合意離脱表明

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トランプ米大統領は5月8日、欧米など6カ国とイランが結んだ核合意から離脱すると表明した。核合意に基づく対イラン経済制裁を再開する大統領令にも署名した。

その一方で、イラン核問題の包括的解決は同盟国と協力するとし、新合意に関しイランと交渉の用意があるとした。

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イランの核開発をめぐり、米・中・露・英・仏・独( P5プラス1=国連常任理事国5か国+ドイツ)とイランは2015年7月14日、「包括的共同作業計画」(Joint comprehensive Plan aof Action = JCPOA)に合意した。

イランは今後10年以上にわたり核開発を大幅に制限し、軍事施設への査察も条件付きで受け入れ 、米欧や国連は原油禁輸や金融取引制限などの制裁を解除する。

イランは下記を実施する。

Natanz濃縮施設の濃縮ウランの濃縮度低減(20%超→3.67%)、低濃縮ウラン貯蔵量削減(10t→3.67%換算300kg)、
遠心分離機の数の削減(19,000→6104)

Fordow濃縮施設の活動を停止

Arak重水炉の設計変更、兵器級プルトニウム製造の禁止

https://www.jaea.go.jp/04/iscn/archive/nptrend/nptrend_01-06.pdf


2016年1月16日、国際原子力機関(IAEA)はイランが核濃縮に必要な遠心分離器などを大幅に削減したことを確認したと発表した。

これを受けてイランと6カ国は同日、合意の履行を宣言し、米欧諸国はイランに対する経済制裁を解除する手続きに入った。

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トランプ大統領は大統領選当時から、オバマ政権時代のイラン核合意を「史上最悪の合意」と酷評し、離脱・破棄の考えを強調していた。

トランプ大統領は 2017年9月、イランが弾道ミサイルの開発を続けていること(合意には弾道ミサイル開発の制限などが含まれていない が、大統領はその点を批判している)、過去に核兵器の起爆装置の製造が試みられた疑いのある軍事施設について、イランがIAEAの査察を受け入れていない ことなどを批判、合意からの離脱にも言及した。


一方、IAEAは、濃縮ウラン総量などで規定違反がなかったと認定 している。米国が問題視する「軍事施設の査察」については、合意文書に明記されておらず、明確な合意違反といえない。

今回、トランプ大統領は、核合意は「巨大な絵空事だ」と批判した。発言要旨は次の通り。

イラン政権はテロに資金提供する主導的な国家だ。

2015年に米前政権はイランの核開発計画に関して他国と歩調を合わせて合意に至った。理論的には「イラン合意」と呼ばれるものは米国とその同盟国をイランの核爆弾の狂気から守るためのものだった。

実際には、この合意によりイランはウランの濃縮を続け、長期的には核戦争の勃発間際に至るようなことを許してしまった。
合意は経済制裁を解除し、代わりに政権の核活動に非常に弱い制限しか与えなかった。

米国が最大の影響力を持てたときに、この破滅的な合意はイラン政権に数十億ドル、その一部は現金を手渡したことになる。

今日、このイランの誓約は虚偽である確証が得られた。先週、イスラエルはイランが長い間隠匿していた諜報記録を公表し、イラン政権がこれまで核兵器を開発していた事実があると結論づけた。

イラン合意は根幹から欠陥があり、我々が行動を起こさなければテロ支援国家が世界で最も危険な兵器を手にすることになるだろう。従って米国はイランとの核合意から離脱することを表明する。

数カ月以内に、イランに対する制裁を再開するための大統領覚書に署名する。最高水準の経済制裁を制定する予定だ。イランが核兵器を取得することを支援する国も米国から厳しい制裁を受ける。

イランとの合意から脱退するにあたり、米国は同盟国と共にイランの核脅威に対する包括的で持続的な解決策に取り組んでいく。同盟国と共に取り組んでいく。これはイランの弾道ミサイルの脅威の除去、世界的テロ活動の停止、中東における威嚇的な行動の防止が含まれる。

これに対し、オバマ前政権まで米国務省でイラン核問題にかかわったトーマス・カントリーマン前国務次官代行は次の通り述べている。 (毎日新聞)

イランとの核合意の結果、イランのウラン濃縮活動は9割減となった。IAEAの監視活動により、イランの核兵器取得を恒久的に防ぐことも可能となった。合意は十分に機能している状態にある。

濃縮に使う遠心分離機の保有制限が10年間と定められているが、これを延長することができれば、効果はさらに高まる。

「10年間」の期間を利用してイランとの信頼関係を築くことで解決を図ろうとした。

合意離脱を主張するトランプ大統領や、皆が知っている過去のイランの核兵器計画をあたかも新事実のように取り上げて批判するイスラエルのネタニヤフ首相の主張は、問題解決の動きに逆行したものだ。

イランは弾道ミサイル実験を繰り返したり、テロ支援を続けたりするなど中東の不安定要因となっているが、それを不満に米国が一方的に離脱する道を選べば合意は崩れ、状況はさらに悪化してしまう。

合意が機能している現在、米国が離脱して再び制裁を科しても、同様の支持は得られないだろう。

国際原子力機関(IAEA)は5月1日、イランで2009年以降、核開発の「確たる兆候」は見られないとの従来の調査結果を確認する声明を発表した。

核合意維持を求めてきた英仏独は、マクロン仏大統領とメイ英首相、メルケル独首相が連名で、米国の核合意離脱に「遺憾の意」を表し「核合意への関与の継続を強調する」と訴えた。
3カ国首脳は「米国以外の当事者国が核合意を完全に履行するのを妨げる措置をとらないように」と米に要求。イランにも「引き続き核合意に基づく義務を果たさなければならない」と求めた。


現時点では制裁の内容は明らかでないが、米財務省によると、制裁再発動に伴い、米企業はイラン国内での新規ビジネスができなくなり、既存契約も一定期間内に終了することが求められる。

今後、イランとの原油取引や金融取引ができなくなり、イランと取引がある外国企業も米金融市場から締め出される「2次制裁」対象となる恐れがある。

ムニューシン米財務長官は5月8日、経済制裁再開の一環として、米航空機大手ボーイングと欧州大手エアバスに与えたイラン向け輸出の認可を取り消す方針を明らかにした。核合意後、両社は国営イラン航空から計約200機を受注していた。

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