SaudiAramcoの上場問題

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サウジアラビアはSaudiAramco の新規株式公開(IPO)を巡る積極姿勢を後退させている。

当面、海外での上場をやめ、サウジ証券取引所(Tadawul)のみで上場する方向で進んでいる。年内とされていたが、2019年4月になると報道されている。

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サウジアラビア政府は2018年1月1日付で、Saudi Aramcoの企業形態を株式売買が可能な Joint Stock Companyに変更させた。
これにより、サウジ政府以外の投資家がAramco の株主になることができる。

Aramco は2018年下期にも株式の5%を内外市場で公開する予定で、上場する市場(複数)については、New York、London、Tokyo、Hong Kong などが候補として挙がっていた。
その後、国外上場候補をNew York、London、Hong Kong の3か所に絞り込んだと報じられた。

2018/1/11 Saudi Aramco、上場に備え企業形態を変更 

しかし、その後、法的リスクや、海外の取引所が企業に求める情報開示の基準が厳しいことなどを懸念し、先ず自国の証券取引所に限定する方針だと報じられている。

ムハンマド皇太子は3月20日、トランプ米大統領とホワイトハウスで会談し、Aramco の上場についても協議したとみられるが、具体的な進展はなかったとされる。

エネルギー産業鉱物資源相はテレビのインタビューで、Aramco のニューヨーク上場の条件や訴訟を巡るリスクに懸念を表明した。
ニューヨーク市が、ExxonMobil やBPなどの国際石油会社に対し「気候変動の原因を招いた」として提訴したことを具体例に挙げた。

ニューヨーク市は2018年1月10日、ExxonMobil、Chevron、BP、Shell、ConocoPhillips の5社を提訴すると発表した。
5社が気候変動の一因となっており、過去及び将来ニューヨーク市に財政的負担を強いるとし、港湾保護、上下水設備の改善、気候変動緩和、公共医療活動等に費やす数十億米ドルの補償を求める。
同市はすでに、海面上昇、強大な嵐、気温上昇対策のために200億米ドル以上を費やしている。

また、米国では2016年に米同時テロに関与した疑いがある外国政府に、遺族らが損害賠償を請求する訴えを起こすことができる「テロ支援者制裁法(JASTA)」が成立、本年3月に米国の判事がサウジ政府の要求を却下してサウジ政府を被告とする裁判が開始されることとなった。

サウジ政府が最大株主になるアラムコは、資産差し押さえなどの潜在的なリスクにさらされる。

2016/10/1 米同時テロ遺族のサウジ提訴法案、大統領拒否権を覆し成立

2018/4/6 サウジ政府を被告とする9.11同時多発テロ訴訟、裁判開始へ

上場会社になると、Aramco の確認埋蔵量などのデータを公表する必要が出るが、これに対する反発も根強い。




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