Xerox、富士フィルムと条件面で再交渉へ

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Xeroxは5月9日、株主に宛てた書簡を公表した。

これまでの経緯を説明するとともに、今後の方針について次の通り述べた。

1) 富士フィルムによるXerox買収について、1月31日に発表したものより良い条件にするよう富士フィルムと交渉する。

2) すべての株主の声に耳を傾ける。

3) 裁判所の仮処分は誤ったものであると信じており、異議を申し立てる。

なお、これに対し富士フィルムは5月10日、「ゼロックスから買収条件の具体的な提案は受けていない」とし、「提案済みのプランがベストで、新たな提案があった場合には当社の株主にとってもメリットがあるか検証が必要だ」と説明している。

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Xerox は5月4日、裁判所が4月27日に下した買収手続きの差し止め命令に対し、異議申し立てをしたと発表した。「買収提案を認めるかどうかは裁判所ではなく、Xerox の株主が決めるものだ」と主張し、裁判所による差し止めの無効を訴えた。

富士フィルムホールディングスも同日、異議申し立てをした。

米ニューヨーク州の裁判所は、上訴の審理を9月から始めると決めた。 審理までは差し止め命令が継続される。


Xeroxによる経緯の説明は下記の通り。

2015年秋に、Xerox取締役会は事業の戦略的レビューを開始した。

この結果、2016年1月にビジネス・プロセス・アウトソーシング事業を行う Conduent Incorporated をスピンオフ(分離・独立)することを決めた。これはCarl Icahnの意見を容れたもの。

この間、Icahn と Deasonの両株主とは建設的話し合いを続けた。Icahnの指名した人を取締役に加え、Deasonとの株を巡る争いも解決した。

Conduentのスピンオフの後、株主価値を高めるための方法の検討を進めた。

その結果、Xeroxと富士ゼロックスの統合が最も魅力的であると考えるに至った。

発表後に、投資家と100回以上の会合を持ったが、その意見は、
 両社の統合は戦略的な論拠がある、
 株主の支持を得るためより良い条件を得るべきだ、
 富士ゼロックスの経理スキャンダルは考慮すべき問題だというものであった。

Icahn/Deason 両氏には意見を述べる権利はあり、我々は反論する用意はあるが、二人が全株主を代表して話したり、他の株主が意見を述べる権利を奪う権利はない。

これまで両氏の発言に一々反論していないが、Xeroxと富士ゼロックスの統合が破産のリスクを生むと述べたのには、誤りであり無責任であると指摘せずるを得なかった。

Deason氏は訴訟に訴え、Xerox株主が総会で投票する権利を奪った。裁判所は4月27日に彼に味方した。

(4/27 裁判所が買収手続きの一時停止を命じる仮処分)

この命令は、Xerox株主がこの取引が自分自身の利益になるかどうかを決める権利を奪うものであり、法を無視したもので、覆るものと信じている。

では、なぜ、2人と和解したのか?

(5/1  Xeroxと株主が和解、株主側が主体の体制へ)

それは、裁判所の命令が、富士フィルムとの条件を良くするための交渉を禁じており、株主の利益を最大限にすることができないと考えたためである。
2人と和解すれば、長く続く訴訟による不確実性や混乱を避けられ、事業を進められ、裁判所の仮処分命令にとらわれず、富士フィルムとの条件交渉が可能になると考えた。

何が変わったのか?

和解の発表後に、二人は彼らの体制で事業を進めることを公言した。すると、株価は12%以上下がり、投資家との話し合いで、多くの株主がこれに反対していることが分かった。

そして、5月3日の裁判所のヒアリングで、裁判所は、差し止め命令のもとでも、富士フィルムと代替案の交渉をすることができると明言した。

(5/2 富士フィルムが上記和解に異議申し立て)
(5/3 裁判所が関係者に意見提出を要請、決着に時間がかかる見通し)

その日の午後、2人は、Xeroxが富士フィルムとの契約を直ちに終息させなければ、和解契約を終息させ、戦争に出る("go to war")と伝えた。

取締役会は、十分に検討・分析することなしに富士との契約を終息するようにとの圧力を拒否した。

このため、和解の撤回が株主の利益になると判断した。

(5/3 Xeroxが和解の撤回を発表、以前の体制に戻す。)

今後について:

  • 事業の安定に注力する。

  • 株主の利益の最大限化のため、富士フィルムからの対価を増やすことも含め、代替案を探る。

  • 株主の声を反映できるようにする。定時株主総会での取締役候補の指名を認めるreopen the window for nominating director candidates 。株主が総会で決める権利を奪う差し止め命令には上訴して争う。

5/4  Xeroxと富士フィルムが裁判所に買収手続き差し止め命令への異議申し立て。裁判所は審理を9月に始めると決定)

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株主総会は6月にも開かれる予定であるが、裁判所の審理は9月に始まるため、今回の総会には富士フィルムとの契約は議題にあげられない。

Xeroxはこれまで、総会での取締役候補の推挙の期限の2017年12月11日であるとしてきたが、今回、推挙を認めるとした。

当然、Icahn/Deason 側は候補を出すため、委任状争奪戦になると思われる。

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