ユーロ圏財務相、 ギリシャ金融支援の8月終了で合意

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欧州連合(EU)は6月21日開いたユーロ圏財務相会合で、ギリシャを8年に及んだ金融支援から8月に「卒業」させる政策枠組みで合意した。

第3次支援の枠組み内で最終的な150億ユーロの追加融資を実施することや、過去の支援融資の返済期限を10年間延長することを決めた。

現在の第3次支援枠組みが終了する8月以降は、新たな融資を受けることなく自力再建を進め、支援から脱却する。

EU欧州委員会のモスコビシ委員は記者会見で「ギリシャの財政危機は今夜終息した」と述べ、2010年から続くギリシャ支援が完了するとの認識を示した。

ただGDPの1.8倍に達した債務をギリシャが計画通りに返済できるか不透明感はぬぐえていない。

合意には、8月20日に期限を迎える第3次支援の終了後に、財政再建の取り組みを厳しく監視していくことも盛り込まれた。ギリシャによる返済の持続可能性も今後再検討する。

付記

ユーロ圏救済基金である欧州安定メカニズム(ESM)は8月20日、ギリシャが2015年8月に合意した3カ年の第3次金融支援を終了したと明らかにした。

ESMはギリシャに対し、マクロ経済の調整や銀行の資本再構成のため、3年間で619億ユーロを支援。241億ユーロの追加融資は必要ないと判断した。

今回の合意事項は次の通り。

現在実施中の第3次支援策(860億ユーロ)のうち、最後の150億ユーロが今後実施される。約250億ユーロ分は未使用となる。

最後の150億ユーロのうち55億ユーロは債務返済用の勘定に、95億ユーロは非常時のためのバッファー勘定に、それぞれ振り分けられる。

付記 欧州安定メカニズム(ESM)は8月6日、ギリシャに150億ユーロの融資をしたと発表した。ドイツが融資の承認を留保し、遅れていた。

バッファー勘定には既にギリシャ自体も拠出しており、8月20日の支援策終了までに241億ユーロに達する見通し。
終了後約1年10カ月間にわたってギリシャの財政ニーズをまかなうことになる。

欧州委員会の推計では、2022年まで基礎的財政収支の黒字をGDP比3.5%に維持し、2023年から2060年まではEU財政規律に則って年平均2.2%の黒字を保つことになる。

第2次支援策の下で欧州金融安定基金(EFSF)が提供した969億ユーロ相当の融資は利払いを含めて10年間繰り延べられる。

第2次支援策に基づく債務買い戻しに関する金利マージン上乗せは今年をもって撤廃される。

欧州中央銀行およびユーロ圏各国の中央銀行が購入したギリシャ債から出た利益は、2018年から2022年6月まで半年ごとにギリシャに移管される。
ギリシャが合意した改革を実行するのが条件。資金はギリシャ政府のグロス借入所要額の削減に充てられる。

ユーログループは2032年、グロス借入所要額を上限以内に納めるために追加的な債務軽減策が必要かどうかを検証し、必要であれば適切な措置をとる。

ギリシャが想定外の厳しい経済シナリオに見舞われた場合、ユーログループは合意したグロス借入所要額の基準値を達成できるよう、利払いについてさらに調整を行うことができる。

欧州委員会、ECB、IMF、EFSFが四半期毎にギリシャの経済動向を監査する。

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ギリシャ債務問題の経緯

2009/10 ギリシャの財政赤字粉飾が表面化
2010/5 ギリシャに対する支援策(2010~2012年で1,100億ユーロの協調融資)
欧州金融安定化メカニズム(European Stabilization Mechanism)創設
 EFSF 最大4400億ユーロ
 IMF 2500億ユーロ
 欧州委員会が発行する債券 600億ユーロ
 最大合計 7500億ユーロ


  2010/5/10  統一通貨ユーロの危機

2010/11 アイルランド支援(850億ユーロ)
2011/5 ポルトガル支援(780億ユーロ)
2011/6 EFSF拡充決定(2011/10 最後のスロバキアが一旦反対した後、賛成し、成立)
2011/7 ギリシャ向け第二次金融支援
 公的支援 1090億ユーロ、民間金融機関による支援 370億ユーロ(21%の損失負担)
2011/10 欧州債務危機克服に向けた「包括戦略」で合意。

ギリシャ問題については

民間銀行によるギリシャ債務の損失負担は7月時点の21%から50%に アップ
・ギリシャ債務残高は2020年にGDP比120%に削減へ
・ギリシャの財務状況を常時監視
・ギリシャに下記の改革を求める。
 ・女性年金支給開始 60歳→65歳
 ・一定額以上の受給者への支給額減額
 ・公務員3万人の削減、給与カットも
 ・民間企業の賃下げのための規制緩和
 ・保有不動産からの利益に対する課税の導入
 ・付加価値税 21%→23%(実施済み)
 ・ガス(DEPA)、通信(OTE)など国営企業の民営化
 ・公共事業の凍結、削減(2011年度は前年比3.3%減)
 ・軍事費の大幅削減

2011/11 ギリシャ首相は、国民の反対を受け、一度は国民投票実施の意向。
EUとの協議の後、首相は11月3日、緊急閣議を開き、国民投票を撤回

G20首脳会議は11月4日、首脳宣言を採択。
・EUが合意したギリシャの債務削減などの包括対策の速やかな実施を要請

2011/11/7 EU 金融危機

2012/2 EU・IMF、第2次支援

EUがギリシャに課した3条件をようやく達成
1)「財政緊縮関連法案の議会承認」

2)「財政緊縮策実行の誓約書」
3)「歳出削減策の具体化」(これが難航した。)

   

ギリシャ支援を巡る合意内容の骨子は以下の通り。

 ・EUとIMFが1300億ユーロ(約13兆6500億円)を支援
 ・民間債権者が保有するギリシャ国債の元本削減率を50%から53.5%に引き上げ
 ・ECBとユーロ圏各国の中央銀行が支援に参加
 ・ギリシャの対GDP債務比率を現状の160%から2020年に120.5%に
 ・ギリシャをEUの監視下に置き、財政緊縮策を確実に履行させる

2012/2/23 ギリシャ第二次支援決定  

2012/6 総選挙で数々の緊縮策を打ち出してきた連立与党が敗れる。

2012/6/26  ギリシャ、連立政権発足

ギリシャ支援凍結

2012/11 EUとIMF、融資再開で合意

2012/11/29 ユーロ圏、ギリシャへの融資再開へ

2015/1 ギリシャ総選挙で、反緊縮派の急進左派連合(SYRIZA)が勝利
2015/2 欧州中央銀行(ECB)、ギリシャ国債に対する適格担保ルールの適用除外を停止

2015/2/9 ギリシャ問題

2015/6 ギリシャ、IMFへの債務返済を先送り

EU、金融支援の条件となる改革案で合意できず。

2015/6/20 ギリシャ支援合意できず 
2015/7/13 ギリシャ対策 難航

2015/7/1 
ギリシャ支援が失効 

2015/7 7月5日の国民投票で、反対派の勝利
2015/7/6 ギリシャ国民投票、EUの財政緊縮策に反対

ギリシャ議会、新たな金融支援の条件としてEUから求められた財政改革案を承認

ユーロ圏首脳会議、ギリシャ金融支援で合意(最大860億ユーロの支援)

2015/7/14 ユーロ圏首脳会議、ギリシャ金融支援で合意 

2015/7/16 ギリシャ、財政改革法案可決後も綱渡り

ギリシャ、中国等への接近

2015/7/15 ギリシャへの中国、ロシアの接近

2016/4/12 ギリシャ、最大のピレウス港を中国に売却

2015/9 2015/9/24 ギリシャ総選挙でチプラス首相信任 

2015年8月の最大860億ユーロの支援合意で、合計214億ユーロの融資を実行したが、その後はギリシャ政府の財政再建努力を見極めるため、融資を中断

2016/5 ギリシャ国会、EUによる金融支援継続の前提となる財政改革法案を可決

ユーロ圏とIMF、ギリシャ支援協議で合意

2016/5/31 ギリシャ追加支援決定 

103億ユーロの融資を実施したが、約束していた増税や年金の削減など構造改革が進んでいないとして、これを最後に融資を中断

2017/5 ギリシャ、年金削減や増税策などの財政構造改革法成立
2017/6 ユーロ圏財務相会合で、中断していたギリシャへの支援融資を再開することで合意

2017/6/19 ユーロ圏財務相会合、ギリシャ融資再開で合意

2018/6 ギリシャ議会、ユーロ圏からの追加融資を受け取るために必要な財政構造改革法案を可決

欧州安定メカニズム(ESM)、ギリシャに対し10億ユーロの追加融資を正式決定
2015年夏に合意の第3次金融支援(3年間で最大860億ユーロ)融資額の累計は469億ユーロに。

今回 ユーロ圏財務相会合、ギリシャの債務軽減策などで合意

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