新生東芝メモリとNAND型フラッシュメモリー業界、紫光集団の進出

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東芝は6月1日、Bain Capitalがこの目的のために設立し、参加各社が出資する ㈱Pangeaへの東芝メモリの譲渡が完了したと発表した。

中国の独占禁止法当局が売却案を承認したことが5月17日に分かった。既に日米欧など他の全ての国の独禁法当局の承認は得ている。

譲渡価格は契約で決められた調整を加え、2兆3億円となった。

東芝メモリ株式譲渡とともに、東芝は譲受会社のPangeaに合計3,505億円を再出資し、Pangeaの議決権のある普通株式を約1,096億円分(約40.2%)、転換権付き優先株式を約2,409億 円分(総数の約40.8%)取得し、約40.2%の議決権を取得した。

Pangeaの出資は、BainやSK Hynix とともにApple等の需要家も加わり、1兆4千億円となるが、議決権は、東芝とHOYAの日本勢が50.1%、Bainが49.9%となる。

2017/9/30 東芝メモリの株式譲渡契約締結


現在のNAND型フラッシュメモリーの世界シェアは、韓国のSamsungが38.3%でトップ、これを東芝(16.1%)と東芝が提携するWestern Digital (15.8%)が追う形となっているが、Samsungは膨大な投資を続けており、差が広がる方向である。

ここにきて、中国の紫光集団の子会社が年内に生産を開始する。

中国の国策半導体メーカー、紫光集団(Tsinghua Unigroup)の子会社の長江存儲科技(Yangtze Memory Technology Corp:YMTC)が総額3兆円を投じる湖北省武漢市のNAND型フラッシュメモリー工場が年内に稼働する。

紫光集団は清華大学が経営する半導体関連企業グループで、株式の51%を清華大学傘下の清華控股有限公司、49%を民間企業である健坤集団が保有する。

当初は、半導体チップの開発に専念するファブレス(工場無し)の経営形態をとり、主にスマホ用のシステムLSI(大規模集積回路)を手がけてきた。

2009年に破綻したドイツの半導体大手 Qimonda AG の西安工場を継承し、西安紫光国芯半導体とした。

2015年7月、紫光集団は、Micron Technology に230億ドルでの買収を持ちかけたが、拒否された。

2015年9月、紫光集団は、傘下の紫光 (Unisplendour) を通してWestern Digitalの株式の15%を37.8億ドルで買収することを決めたが、2016年2月、「米当局が調査に入ることを決めたため」断念した。

2016年1月、台湾の半導体封止・検査大手、南茂科技に25%の出資(約425億円)を決めた。しかし、台湾独立を志向する民主進歩党(民進党)の蔡英文政権が発足し、中台間の投資を巡る当局の審査が厳しくなったため、断念した。

合わせて台湾の半導体封止・検査大手の矽品精密工業(Siliconware Precision Industries)に25%の出資(約1900億円)を提案したが、審査で難航し、その後、矽品精密は同業の日月光半導体製造(ASE)と合併した。中国商務部は2017年11月に条件付きでこれを承認している。

2016年に国有半導体メーカ―の武漢新芯集成電路製造(Wuhan Xinxin Semiconductor Manufacturing Corp.:XMC) の株式の過半を取得し、自社の半導体メモリ製造部門と統合し、長江存儲科技(YMTC)を設立した。

XMCはSpansionからNOR型フラッシュメモリの受託製造を行っていたが、Spansionからライセンスを受け、3次元NANDに進出した。

第1棟の生産能力は東芝とWestern Digital が共同投資する世界最大のメモリー工場である東芝メモリ四日市工場の半分程度と されるが、今後10年で1千億ドルを投資する方針である。同規模の建屋を2棟建設し、10年後には四日市工場の1.5倍に相当するシリコンウエハー月産100万枚規模に生産能力を増やす。 武漢の次に江蘇省南京市にも同規模の工場を建設する計画を持つ。

なお、下図の通り、MicronとIntelが2019年に合弁を解消することを発表しているが、台湾の調査会社が本年3月に、Intelが紫光集団とNANDの供給・販売について協議中と報じた。


競争で価格も下がりつつあり、これまでのような利益は望めない。新しい東芝メモリが、Samsungや紫光集団に対抗して、大投資を継続できるであろうか。

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NAND型フラッシュメモリーの開発の経緯は次の通りとされる。(Wedge Report June 2017)

富士通が開発したNORフラッシュメモリを基に、SamsungがNAND型を開発した。

①富士通が、ソフトウエアを格納用にNORフラッシュメモリを開発した。

NAND型フラッシュメモリとは異なり、データの読み出しにおいて、RAM(Random access memory)と同様にアドレス指定によるアクセスができ、コードをRAMにコピーすることなく直接実行することが可能。

②富士通と米AMDの合弁会社Spansion LLCが新型のNORを開発し、これを武漢新芯集成電路製造(XMC)に生産委託していた。

Spansion はその後、メモリの単価の下落に打ち勝てず、2009年3月にChapter 11を申請した。

2010年5月にChapter 11 から脱却、2015年3月に米半導体メモリー大手、Cypress Semiconductorが40億ドル相当の株式交換によって吸収合併した。

Spansion のNORフラッシュメモリの技術をSamsung がNANDに転用した。技術を盗まれたSpansionはSamsung を訴えた。
 Samsung は敗訴し、2009年に
Spansionに対して和解金7000万ドル(約66億円・当時) を支払うとともに、クロスライセンス契約を締結した。

④Samsung は、SpansionのNORの技術を用いて3次元NANDを開発し、2016年から中国の西安工場で最先端3次元NANDの量産を開始した。

⑤東芝は、3次元NANDの開発に苦しみ、Samsung の技術を模倣して、3次元NANDの量産を開始した。
  正確には、東芝はSamsungの技術を模倣したSK Hynix の技術を模倣した。

⑥2016年3月、XMCが3次元NANDに参入することを発表した。XMCは、Samsungとクロスライセンスを締結している
Spansion (Cypress Semiconductor) から技術を有償で入手した。

 これが現在の長江存儲科技(YMTC) の計画につながる。


以上とその他情報を合わせると、現在のNAND業界の経緯は下図の通りとなる。

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