日本・EU EPA 調印

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EUの欧州委員会は7月6日、日本との経済連携協定(EPA)を7月11日に署名することを正式決定した。全28加盟国(離脱予定の英国を含む)が賛成した。

11日にブリュッセルのEU本部で、安倍晋三首相も出席して署名式典を開く。
との予定であったが、首相は7月9日、大雨被害で外遊を取り止めた。

EPAの署名も延期する。安倍首相がユンケル欧州委員長と電話で協議し、7月17日に東京で開催する方向になった。

調印後はそれぞれの議会での批准手続きに入り、2019年3月29日の英国のEU離脱より前の発効を目指す。

付記

安倍首相とEUのトゥスク大統領とユンケル欧州委員長は7月17日、首相官邸で日本とEUの経済連携協定に署名した。日本政府は秋にも予定する臨時国会での承認手続きの完了を目指す。

付記 参院は12月8日、賛成多数で承認した。EUは12月12日に採決し、承認した。この結果、2019年2月1日(双方が国内手続きを終えた翌々月の1日)に発効する。


日本とEUの世界における地位は次の通り。

日本とEUは2013年3月にEPAの交渉を開始した。

2016年にかなりの部分で合意し、安倍晋三首相は12月9日の参議院のTPP 特別委員会で、「2016年中の大枠合意の実現を目指して精力的に交渉を進める」と述べ、意欲を示した。

しかし、交渉のため来日していたEUの首席交渉官は12月17日、「いくつかの論点で思っていた以上に妥協が難しい状況だ」と述べ、双方の溝が埋まらないまま終了したことを明らかにした。

交渉では日本はEUに、自動車に10%、テレビに14%かかる関税の即時撤廃を要求、EUはチーズや豚肉、ワインなどの関税引き下げを求めていたが、難航した。

EU側は、日本製の自動車を巡っては「関税撤廃の準備はある」としたが、日本がEU産農産品の関税を撤廃することと「バランスが重要だ」と述べた。
EUが日本に輸入自由化を求める豚肉に関しては今回の交渉で「大きな進展があった」と表明しているが、チーズについては「より問題が複雑だ」として決着が難しい段階にあると示唆した。

2016/12/19 日欧 EPA、年内合意困難に

なお、韓国とEUは、それに先立つ6年前の2010年10月6日、自由貿易協定(FTA)の締結で正式署名、2011年7月1日に発効している。

双方は、相手地域で生産した自動車・冷蔵庫・カラーTVなど工業品に対しFTA発効5年以内に全関税を撤廃することで合意した。
EUの関税は、自動車で10%、テレビで14%と高率で、関税撤廃による韓国企業の輸出拡大が予想される。

工業製品関税については、原則 5年間で関税を完全撤廃。
  自動車部品は協定発効と同時に関税を撤廃、
  中大型乗用車は3年、小型自動車は5年内に撤廃
韓国は例外として40余りのセンシティブ品目について7年内の関税撤廃。
 (関税率が16%のその他機械類、純毛織物など)

見返りとして、農業品などの関税撤廃についても大部分は合意した。
韓国政府は、期間10年、総額270億ドルの国内農家向け支援策をまとめた。

EU産ワインは、直ちに撤廃
EU産豚肉に対する関税は、冷蔵肉全体とバラ肉冷凍肉は10年以内に、その他の部位の冷凍肉は5年以内に撤廃。

但し、韓国のコメ市場は開放しない。トウガラシ、ニンニク、タマネギも「主要調味料」として関税を据え置く。

2010/10/12  韓国とEU、自由貿易協定締結


その後、日本とEUは精力的に交渉を続け、2017年7月に大枠で合意した。

問題となっていたカマンベールなどの欧州産ソフト系チーズについては関税割当てとする。初年度2万トンから始めて16年目に3万1千トンまで増やす。枠内の税率は段階的に下げ、16年目に無税とする。

欧州産ワインの関税は即時撤廃。パスタやチョコレートも段階的に無税にする。

日本から欧州への輸出では、EU側が日本の乗用車にかける10%の関税を7年かけて引き下げ、8年目に撤廃する。自動車部品の92.1%(貿易額ベース)は即時撤廃する。

このほか日本酒や日本産ワイン・ウイスキー、牛肉などの関税は即時撤廃。知的財産の保護や電子商取引、農業協力なども明記した。

大枠合意では詰めきれなかった投資家と国家の紛争解決制度などの分野の協議を進め、年内に最終合意する予定とした。

投資紛争の解決制度についての双方の考え方は次の通り。

日本:TPP交渉と同じく、不当な扱いを受けた企業が進出先の政府を訴えることができる「ISDS」での対応を求める。
EUは:ISDSでは大企業による国家のルールへの干渉が防げないと懸念し、政府側が裁判官を選任する常設の「投資裁判所」制度を提案

2017年12月8日、交渉が妥結した。投資紛争の解決制度を除いた関税・ルール各分野で合意し、同日夜に安倍晋三首相とユンケル欧州委員長が電話協議で確認した。

その後、2018年3月に非公式の首席交渉官会合で投資紛争の解決制度について切り離し、まず関税・ルール分野の発効を優先する方向性を確認した。


EPA協定の概要は次の通り。

詳細は、Fact Sheet https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000270758.pdf

日本産品のEU市場へのアクセス EU産品の日本市場へのアクセス
撤廃率
(品目数)
EU側撤廃率:約99% 日本側撤廃率:約94%   
農林水産品:約82%
工業品等:100%

工業製品

100%の関税撤廃を達成

乗用車(現行税率10%):8年目に撤廃

自動車部品:貿易額で9割以上が即時撤廃

化学工業製品、繊維・繊維製品等:即時撤廃。

皮革・履物(現行税率最高30%):11年目又は16年目に撤廃

農林水産品等 牛肉,茶,水産物等の輸出重点品目を含め,ほぼ全ての品目で関税撤廃(ほとんどが即時撤廃)

酒類:日本ワインの輸入規制(醸造方法・輸出証明)を撤廃。

農産品や酒類(日本酒等)に関する地理的表示(GI)の保護を確保

コメは関税削減・撤廃等の対象から除外。

麦・乳製品の国家貿易制度,糖価調整制度,豚肉の差額関税制度は維持。
関税割当てやセーフガード等の有効な措置を確保。

ソフト系チーズは関税割当てとし,枠数量は国産の生産拡大と両立可能な範囲に留めた。
牛肉は15年の関税削減期間とセーフガードを確保

  

日本とEUの貿易関係は次の通り。

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