第一三共、マレーシアの民間医療企業IHH Healthcareによるインドの同業買収に差し止め請求

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マレーシアの民間医療企業IHH Healthcareがインドの同業のFortis Healthcare の買収を進めているが、これについて、第一三共がデリー高等裁判所に差し止めを求める訴えを起こした。

第一三共は、元のRanbaxy Laboratoriesの株主であるMalvinder Singh 、Shivinder Singh 兄弟に損害賠償金350億ルピー(550百万ドル)の債権を持つが、兄弟はこれを支払っていない。
兄弟は昨年、裁判所に対し、200億ルピー相当のFortis Healthcare の株を持っており、支払いに問題はないと証言している。

第一三共としては、損害賠償金の支払いの前にFortis Healthcare の株式を売却されては困るため、買収そのものの差し止めを求めたもの。

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IHH Healthcare Berhad は、マレーシアに本部を置くアジア最大の民間医療企業で、アジア、中東欧・中東・北アフリカ地域での病院経営、運営受託、及び医科系教育機関経営等のヘルスケア関連事業を行っている。シンガポール、ブルネイ、中国、香港、マケドニア、マレーシア、インド、イラク、トルコ、ベトナム、UAEにおいて民間病院を運営し、25,000以上を雇用している。

当初はマレーシアの政府系投資会社のKhazanah Nasional Berhad が全額出資していたが、三井物産が2011年に総額924億円を投じ、30%を取得した。

その後、上場し、2016年9月時点では三井物産は20.1%を出資していたが、9月27日 に一部をCiti Group に売却、現在の出資は18.1%となっている。

付記

三井物産は11月29日、IHH Healthcare Berhad の株式16%を取得する契約を締結したと発表した。これにより32.9%保有の筆頭株主となる。


インドのFortis Healthcareは、第一三共が2008年に買収した製薬大手
Ranbaxy Laboratoriesの創業者一族であるMalvinder Singh 、Shivinder Singh 兄弟が経営している(していた?)インド国内最大手の医療チェーンである。

2001年にデリーで創業し、インドのほかシンガポール、ドバイ、モーリシャス、スリランカで運営する医療施設は65施設にのぼり、ベッド数は10,000床を超える。今後は人口50万人規模の地方都市を中心に低価格の医療を提供する25の医療施設を新たに建設するとしている。

インドのManipal Health Enterprisesが米国の投資会社TPG Capital の支援を受け、Fortis Healthcareの買収を提案、両社を統合する考えを示した。

これに対抗し、Fortis Healthcareの取締役会はIHH Healthcareを選んだ。

IHH Healthcareはまず、7月13日に株式の31.1%の買収を行い、これを基に追加26%分の公開買付を9月7日から9月24日まで行い、合計57.1%を取得する。
更に、
Fortis Healthcareの上場子会社である Fortis Malar Hospitalの株式26%の公開買付も行う。

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第一三共は2016年5月6日、2008年にRanbaxy Laboratoriesの株式を第一三共に譲渡した元株主Malvinder Singh 、Shivinder Singh 兄弟を相手としたシンガポールでの国際商業会議所国際仲裁裁判所の仲裁判断を発表した。

4月29日付の仲裁判断は下記の通り。

元株主は第一三共に下記の金額を支払う。

損害賠償金 25,627.8 百万インドルピー 41,004百万円
損害遅延金 8,510.7百万インドルピー 13,617百万円
弁護士費用 14,549.7千米ドル 1,557百万円
仲裁費用 599.3千米ドル 64百万円
合計 56,242百万円

しかし、Malvinder Singh 、Shivinder Singh 兄弟が支払わないため、第一三共は訴訟に持ち込んだ。

Delhi High Courtは2018年1月31日、兄弟に35 billion rupees ($550 million) の支払いを命じた。

2016/5/10 第一三共、Ranbaxy Laboratories の元株主を相手とする仲裁裁判所の判断を発表 

上述の通り、 兄弟は裁判所に対し、200億ルピー相当のFortis Healthcare の株を持っており、支払いに問題はないと証言している。

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デリー高等裁判所は8月1日、兄弟に出頭を命じた。賠償金の支払いは問題ないとした兄弟の証言を確認するのが目的。

裁判官は兄弟の弁護士に対し、賠償金を支払う金がなければ、破産となり、牢獄に行くことになると伝えた。

実際には、兄弟の持ち株はもっと少ないとの話や、これまで明らかにしていない不動産をこっそり売却しようとしているなどの噂があり、裁判官は兄弟に不信感を抱いている。

Fortis Healthcareは、現在は兄弟とは何の関係もないとしている。

現在のところ、第一三共が求めた買収の差し止めについては命令がでておらず、Fortis Healthcareは8月13日の臨時株主総会に公開買付の件を諮る。

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