会計検査院、石油天然ガス・金属鉱物資源機構のカナダのシェール開発支援を問題視

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会計検査院は7月27日、会計検査院法第30条の2に基づく国会及び内閣への「石油・天然ガスの探鉱等に係るリスクマネーの供給について」と題する随時報告を行った。

石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は、石油・天然ガスの探鉱等に係るリスクマネーの供給に係る業務として、我が国企業の出資先である石油・天然ガスの探鉱等を行う開発会社に対して原則50%以内で出資を行うとともに、開発会社が開発等のために市中から調達する資金について債務保証を行っている。

今回、リスクマネーの供給に係る予算の執行等、リスクマネーの供給を受けた自主開発権益の状況等について検査を実施し、その状況を取りまとめた。

このなかで、液化設備がないガス田に関する権益を取り上げている。

開発した天然ガスを日本に輸入するには、液化してLNGにした上で我が国に持ち込む必要があるが、天然ガスの権益に係るプロジェクト3件(出資額計802億円、債務保証実行額計1476億円)について、2件がLNG計画を取り止め、1件が遅延していることが分かった。このため、現時点では、緊急時も含めて当該天然ガスを直接我が国に持ち込むことができない状況となっている。

企業の場合は、仮にLNG計画が中止になっても、天然ガスを現地のパイプラインで輸送し、販売すればよいが、石油天然ガス・金属鉱物資源機構の出資や保証は、石油・天然ガスの自主開発比率引き上げが目的である。

このため、緊急時に我が国に持ち込むためには、スワップを円滑に行うことができるようにすることが必要としている。

東京ガスは、英エネルギー大手 Centrica のトレーディング事業会社であるCentrica LNG社と、「相互協力に関する協定」を締結したと発表した。第一歩として、LNGのスワップを行い、「LNGの輸送効率向上を通じたコスト削減を目指す枠組み」の実現を目指すことに合意した。

東京ガスが米国産LNGを欧州に供給する一方、Centrica はこれまで英国に輸送していたマレーシアのLNGを日本に供給する。

2016/11/22 東京ガス、英のCentrica とLNGをスワップ

上の例は、それぞれの輸送コストを大幅に削減できるが、このようなケースは少ない。

問題の3件はいずれもカナダの西海岸の天然ガス計画である。このガスとのスワップで(コスト差を負担するとしても)LNGを供給してくれる相手が見つかるであろうか?

スワップも出来ない場合、出資や保証を引き上げることを求めるのだろうか?


問題とされた計画は次の通り。

1) INPEX Gas British Columbia Ltd. (2012年度出資 399億9999万余円)

国際石油開発帝石(INPEX)は2011年11月29日、日揮と共同でカナダの石油・天然ガス開発会社NexenがカナダのBritish Columbia州北東部のHorn River、CordovaおよびLiardの各地域に保有するシェールガス鉱区に40%の権益を取得することで合意したと発表した。

その後、JOGMECが参加を決めた。

3社は2013年11月、BC州西部の太平洋岸Grassy Pointにおいて、シェールガスプロジェクトから産出されたガスを原料とした陸上ガス液化プラント(LNGプラント)建設の可能性を検討する調査権をBC州政府より取得した。(その後、LNG計画取り止め)

権益保有比率

Nexen Inc. 60% (オペレーター)
INPEX Gas British Columbia 40% 国際石油開発帝石:45%
日揮子会社:10%
JOGMEC:45%

2) JAPEX Montney (2013年出資 401億9999万余円、2014年債務保証実行額320億3238万余円)

石油資源開発は2013年3月4日、マレーシアの国営石油会社 Petronasとの間で、Petronasが推進するカナダBritish Columbia 州でのシェールガス開発・生産プロジェクトおよび同州西海岸で検討中のLNGプロジェクトに参画することで基本合意したと発表した。

同州 North Montney地域におけるシェールガス鉱区の10%権益を取得するとともに、同州西海岸におけるPacific Northwest LNG Project(生産量1,200万トン/年)の10%権益と同権益比率相当のLNG(120万トン/年)を引き取る権利を併せて取得する。
LNG計画は、Petronasが計画したもので、Prince Rupert 市のLelu島で年1,200万トンプラントを建設する。上記の鉱区からガスパイプラインで結ぶ。

その後、JOGMECが出資と保証を行った。

権益保有比率

Progress Energy Canada
(Petronas子会社)
62% (オペレーター)
Sinopec Huadian Montney 15%
JAPEX Montney 10% 石油資源開発 45%+1株
JOGMEC 45%-1株
MGC Montney(三菱瓦斯化学)10%
INDOIL MONTNEY 10%
Petroleum BRUNEI Montney 3%

石油資源開発(JAPEX)は2017/7月26日、子会社の JAPEX Montney Ltd.を通じてカナダのブリティッシュ・コロンビア州で検討を進めていたPacific Northwest LNGプロジェクトについて、事業会社のPacific NorthWest LNGが7月25日に事業化を進めないことを決定しと発表した。

本プロジェクトへの参画を決定した時点に比べて、LNGを取り巻く環境は大きく変化しており、現時点でPNW事業を進めないことは合理性があると考えとしている。

2017/8/2 石油資源開発が参加のカナダブリティッシュ・コロンビア州におけるLNGプロジェクト 取りやめ

3) Cutbank Dawson Gas Resources (2012年度債務保証実行額1155億2063万余円)

カナダの天然ガス最大手のEncana Corporationは2012年2月17日、British ColumbiaCutbank Ridgeの未開発の土地でのシェールガス開発で三菱商事と提携したと発表した。

Cutbank Ridge Partnershipが保有する天然ガス資産の合計可採埋蔵量は、35兆立方フィート(約7.2億トン)以上と推定され、日本の天然ガス年間需要の約9年分に相当する膨大な量が見込まれている。

今後5年間でPartnershipとして総事業費約60億カナダドル以上を投じ、累計約600本以上の生産井を掘削して開発を進める。
生産期間は50年以上で、今後10年の間に日量約30億立方フィート(約2,250万トン/年)の生産を目指す。

カナダで生産した天然ガスを原料に、液化天然ガス(LNG)として輸出する可能性についても検討を進めている。(しかし、現在も進展していない。)

2012/2/21 三菱商事がカナダのシェールガス開発に参加 

三菱商事は新たに子会社Cutbank Dawson Gas Resources を設立し、29億カナダドルを投じて40%の権益を取得し、Cutbank Ridge 埋蔵エリア(Play)の409千エーカーのMontney層天然ガスランドの開発を行う

契約ではEncanaはCutbank Ridge Partnershipの60%、三菱商事は40%の権益を持つ。

その後、JOGMECがCutbank Dawson Gas Resourcesに26.26%出資し、合わせて上記の保証を行ったが、2016年5月に三菱商事の要請を受け、出資を解消した。このため、現在は保証のみ。

権益保有比率

Encana Corporation 60%
Cutbank Dawson Gas Resources 40% JOGMEC 26.26%→2016/5 売却
三菱商事 73.74%→ 100%

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