ドイツ、中国の独企業買収を却下

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ドイツ政府が中国企業 煙台台海 (Yantai Taihai) 集団による独の精密機械メーカー Leifeld Metal Spinning の買収を却下することとなった。

Leifeld Metal Spinning は独西部アーレンに本社を置く 従業員は約200人の会社で、金属加工のための精密機械を製造する。同社の技術はNASAのロケットにも使われている。

この買収について審査していた独経済省が「安全保障を脅かす」と判断したという。

ドイツ政府が8月1日に正式決定すると報じられたが、この報道を受け、煙台台海は買収を取り消した。

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Leifeld Metal Spinning は、Integrally Stiffened Cylinder の開発メンバーとしてNASAから2017年のGroup Achievement Award を受けている。
他の開発メンバーは、Lockheed Martin、MT Aerospace、European Space Agency、German Aerospace Center、International Technologies で、機械メーカーはLeifeld Metal Spinning のみである。

開発したのは Integrally Stiffened Cylinder の製法で、溶接を削減することで、コストが大幅に低減される。
アルミ製の母材をローラーで伸ばしながら成形する。

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欧米諸国では最近、中国側による企業買収や投資で軍事や航空宇宙関連の技術が流出する可能性に懸念が強まっている。

2016年の美的集団によるドイツ最大の産業ロボットメーカーKUKAの買収は、独と米の政府が承認し、成立したが、先進技術が奪われる懸念高まった。

福建芯片投資基金によるドイツの半導体製造装置メーカーAixtron 買収については、ドイツ政府は一旦は承認したが、米国が問題にしたため、承認を取り消した。
米政府はAixtron の米国子会社について、米の安保の脅威の可能性があるとして買収を禁止、これを受け、
福建芯片は買収を諦めた。

EUの欧州委員会は2017年、国家安全保障の観点から海外企業による投資について審査を厳格化する計画を打ち出した。

ドイツはこれを支持しており、2017年に独が外国企業による買収規制を強化した。

(従来) EU域外の企業がドイツ企業の株式の25%超を取得する場合、それが公の秩序や国家の安全を脅かすものなら政府が阻止(主に防衛部門の取引)

(改正後)適用範囲は先端防衛技術産業に加え、電力、水道、病院、交通等の基幹インフラに携わる企業にまで拡大

ドイツのMinistry of Economic Affairs and Energyは本年4月26日、中国の安泰科技によるCOTESA GmbHの買収を承認した。法改正後の最初の承認となった。

COTESAは炭素繊維複合材料部品のメーカーで、顧客にはエアバスやボーイングが名前を連ねる。

今回は法改正後の最初の不承認である。

買収 被買収企業 買収企業 政府の対応 反応
KUKA
(ドイツ最大の産業ロボットメーカー)
美的集団
(家電メーカー)
独:2016/8不介入
  安全保障に危険及ぼさない
米:
2016/12/31承認
先進技術が奪われる懸念高まる。
以降、類似取引の調査の厳格化
Aixtron
(ドイツの
半導体製造装置メーカー、米に技術拠点)
福建芯片投資基金 独:2016/9承認
  2016/10 承認取消、審査再開
米:
2016/12 米子会社の買収禁止
 軍事利用可能技術で米の安保の脅威に
2016/12 福建芯片が買収取り止め(米拠点除外、独承認不明)
 2016/12/7 米政府、中国企業による独社の米子会社買収を禁止 

買収規制強化

COTESA GmbH
炭素繊維複合材料部品を供給
安泰科技
中国鋼研科技集団の子会社
独:2017/12 Ministry of Economic Affairs and Energyが介入、審査
→2018/4 承認
 2018/5/5 ドイツ政府、中国企業によるドイツの航空・自動車部品メーカー買収を承認
今回
Leifeld Metal Spinning 煙台市台海集団 独:不承認

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