広島高裁異議審、伊方原発3号機の運転再開を認める

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四国電力伊方原発3号機の運転差し止めを命じた2017年12月の広島高裁仮処分決定を巡る異議審で、同高裁は9月25日、四国電力が申し立てた異議を認め、仮処分決定を取り消した。

差し止めの理由とした阿蘇カルデラの破局的噴火について社会通念上、想定する必要がなく、立地は不適でないと判断した。決定を受け、四電は10月27日に3号機を再稼働させ る予定。

住民側は他の訴訟への影響などを考慮し、最高裁への特別抗告はしない方針。

伊方3号機については、9月28日に大分地裁が決定を出すほか、高松高裁や山口地裁岩国支部でも係争中。

付記

大分地裁は9月28日、住民側の申し立てを却下する決定をした。

住民側は原発事故が起きれば危険が及ぶと主張。阿蘇カルデラが破局的噴火をした場合の危険性などを訴えていた。

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伊方原発3号機について、広島高等裁判所は2017年12月13日、運転の停止を命じる仮処分の決定をした。
運転停止の期間については、広島地方裁判所で並行して進められている裁判で異なる結論が出る可能性があるとして、2018年9月30日までとした。

「熊本県の阿蘇山で、巨大噴火が起きて原発に影響が出る可能性が小さいとは言えず、新しい規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断は、不合理だ」と指摘した。

伊方原発3号機は、2016年8月に再稼働を行ったが、2017年10月3日から定期検査のため運転を停止中で、決定が覆されない限り続くため、定期検査が終了する2018年2月以降も運転できない状態が続く。

なお、野々上裁判長は2017年12月末で定年退官のため、今後は別の裁判官が扱うこととなる。

問題となったのは、日本では1万年一度程度とされる「破局的噴火」の影響である。

破局噴火とは、地下のマグマが一気に地上に噴出する壊滅的な噴火形式で、しばしば地球規模の環境変化や大量絶滅の原因となる。大規模なカルデラの形成を伴うことからカルデラ噴火と呼ぶ場合もある。

阿蘇山では分かっているだけでも過去4回大きな噴火を起こし、約9万年前に起きた噴火は最大級の「破局噴火」であった。

2017年12月13日の仮処分では、四国電力が想定する地震の最大の揺れや周辺の火山の噴火の危険性をどのように評価するかなどが争われた。

原子力規制委員会が2013年に作成した「火山影響評価ガイド」 ではまず、原発の運用期間とされる約40年間に噴火するかどうかや、その規模を推定する必要がある。推定できない場合は、過去最大の噴火規模を想定する手順になっており、判決はこれを厳格に適用し、約9万年前という大昔の破局的噴火が審理の対象になった。

裁判長は、熊本県にある阿蘇山が噴火しても火砕流が原発に到達しないと主張する四国電力の根拠となった噴火のシミュレーションについて、「過去に阿蘇山で実際に起きた火砕流とは異なる前提で行われており、原発に火砕流が到達していないと判断することはできないため、原発の立地は不適切だ」などと指摘した。

そのうえで、「阿蘇山の地下にはマグマだまりが存在し、原発の運用期間中に、巨大噴火が起きて原発に影響を及ぼす可能性が小さいとはいえない。巨大噴火が起きた場合、四国電力が想定した火山灰などの量は少なすぎる」と述べた。

そして、「火山の危険性について、伊方原発が新しい規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断は不合理で、住民の生命、身体に対する具体的な危険が存在する」として、運転の停止を命じた。

2017/12/15 広島高裁 

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今回の広島高裁の三木裁判長は、差し止めの仮処分決定が重視した原子力規制委員会の手引書「火山影響評価ガイド」について「噴火の時期や程度が相当程度の正確さで予測できるとしていることを前提としており不合理」と批判 した。火山の噴火リスクについても「わが国の社会が自然災害に対する危険をどの程度まで容認するかという社会通念を基準として判断せざるを得ない」とした。

「破局的噴火」について、「発生頻度は著しく小さく、国が具体的対策を策定しようという動きも認められない。国民の大多数はそのことを格別に問題にしていない」と指摘。「破局的噴火が伊方原発の運用期間中に発生する可能性が相応の根拠をもって示されているとは認められない」とした。

仮処分 今回
火山影響評価ガイド ガイドに基づき、阿蘇の過去最大噴火(約9万年前)を想定。 ガイドは噴火の正確な予測 を前提としているが、実際には正確な予想不能で、ガイドそのものが不合理。
火山の危険性 火砕流が原発敷地に達した可能性が小さいと言えず立地は不適 原発運転中に阿蘇で破局的噴火が起きる根拠が示されておらず、立地不適でない。
噴火の影響 降下火砕物の厚さや大気中濃度の想定が不適 降下火砕物の想定は合理的
社会通念の捉え方 社会通念を踏まえても、科学的知見に基づくガイドの限定解釈は許されない 国は破局的噴火の対策を作らず、国民の大多数も問題にしていない。
安全性に欠けないとするのが現時点の社会通念
想定する地震や津波など火山以外の危険性 新規制基準、規制委の適合判断とも合理的 同左

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2017年12月の広島高裁仮処分決定の際に、安井至氏の「市民のための環境学ガイド」は「 原発とカルデラ噴火のリスク」(2017/12/23) で、巽好幸氏の「富士山大噴火と阿蘇山大爆発」を紹介している。

巽先生の予測によれば、阿蘇カルデラなどの7大カルデラの一つが、今後100年間で巨大カルデラ噴火を起こす確率は約1%であるとのこと。もし起きてしまえば、最悪の場合、火砕流による死亡者700万人に加え、その後の食糧不足によって、1億人の命が失われるとのことである。火山灰が10cm 積もるだけで、農地は完全 に失われ、その復活には1000年程度の年月が必要となる、とのこと。

阿蘇でおきるカルデラ爆発だと、火砕流は時速100kmで伝達するので、カルデラ爆発の2時間以内に700万人が死亡すると考えられている。巨大な火砕流が発生すれば、その地域は数 百年間復活できないと考えられるが、実は、それ以外にも、火山灰が西風にのって日本全国を覆う可能性が高い。火山灰が10cm 覆うだけで、農業は一切行うことができない。国内の食糧生産は ゼロになる。そのため、最悪1億人が命を落とすというのが、巽先生のシナリオのようだ。

阿蘇カルデラ爆発が起きたときに、何が起きるか、恐らく裁判長は知っていたと思われる。しかし、それを述べてしまったら、伊方原発の存在に、全く迫力が無くなってしまう。恐らく、カルデラ爆発の被害は、意図的に無視したのだと考えられる。

下図の通り、この破局的噴火で火砕流は伊方原発に到達している。同時に九州ほぼ全土に到達しているため、全滅である。また日本のほぼ全土に15cmの火山灰で覆われ、農地が完全に失われる。

要するに日本全滅であり、伊方原発が稼働していようが、休止していようが、全く関係ない。国としても、破局的噴火の対策を作ることはできない。

今回の判決は、破局的噴火だけを判断の対象としており、この限りにおいては、今回の判決が常識的である。

なお、阿蘇には巨大噴火の兆候はないが、可能性のあるものが一つ存在している。

神戸大学海洋底探査センターは2016年から3回にわたって、大学の付属練習船「深江丸」で九州南方の海底に広がるくぼみ「鬼界カルデラ」の調査を行った。

最近の論文によると、海底からの高さが600メートルにもなる世界最大級の「溶岩ドーム」が、カルデラの内側で確認されたこの溶岩ドームは、カルデラができた後に、新しいマグマの活動によってつくられたと推定できるという。

巽教授によると、次の巨大カルデラ噴火の準備過程に入ったと言える。 今この鬼界カルデラで、7300年前と同規模の超巨大噴火が起きれば、九州南部は高温の火砕流で覆い尽くされ、関西でも20cm、首都圏でも数cmの火山灰が降り注ぐという。

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