独与党、バイエルン州で大敗 メルケル政権に打撃

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ドイツで10月14日に実施された保守の牙城のバイエルン州(英語ではBavaria州)の議会選挙で、メルケル政権を支える保守与党、キリスト教社会同盟(CSU)が歴史的な大敗を喫した。

CSUの得票率は前回2013年の47.7%から37.7%に下がり、68年ぶりの低さとなった。連邦議会下院で連立を組むドイツ社会民主党も惨敗し、両党を合わせても過半数を下回る。

逆に緑の党と、極右政党ドイツのための選択肢(AfD)が大躍進した。

難民問題が票を左右した。

下院 (2018/3連立)

バイエルン州議会

今回 従来 差異
キリスト教民主同盟 (CDU) キリスト教
民主・社会同盟
(CDU/CSU)
246 連立
与党
399
キリスト教社会同盟 (CSU) 37.2% 47.7% -10.5%
ドイツ社会民主党(SPD) 153 9.7% 20.6% -10.9%
緑の党 67  

野党

 
310 17.5% 8.6% +8.9%
自由民主党(FDP) 80 5.1% 3.3% +1.8%
ドイツのための選択肢(AfD) 92 10.2% 0 +10.2%
左派党(The Left) 69 3.2% 2.1% +1.1%
無所属 2
Free Voters of Bavaria 11.6% 9.0% +2.6%
その他 5.5% 8.7% -3.2%
合計 709 100% 100% -

メルケル首相はキリスト教民主同盟 (CDU) の党首で、バイエルン州のみを地盤とするキリスト教社会同盟 (CSU) と連携している。

2017年9月24日の連邦議会(下院)選挙で、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)は709議席のうち246議席しか確保できなかった。

このため、自由民主党(FDP)や緑の党と連立協議を進めたが、決裂し、2018年2月に第2党の社会民主党(SPD)との大連立交渉がようやく合意した。

2018/3/17 メルケル首相 再選 

しかし、この連立内閣は肝心のCDU(全国組織)とCSU(バイエルン州のみ)の間で問題を抱えている。

バイエルン州は難民がドイツに入る際の入り口に位置し、100万人を超える難民を受け入れたメルケル政権への批判が根強い。

反難民の極右の台頭に対抗するため、CSUは難民抑制にかじを切った。

キリスト教社会同盟(CSU)の党首である Seehofer内相が、寛容な難民政策が「欧州を分断させた」と糾弾し、他のEU諸国で難民登録済みの場合はドイツへの入国を許さず、元登録国に送還する措置の即時導入を要求し た。

Merkel 首相は7月2日夜、対立していた Seehofer 内相と会談し、新たな難民対策で合意した。Seehofer 内相は先に表明していた辞意を撤回、連立政権崩壊の危機はひとまず回避された。
Merkel 首相はSeehofer 内相が主張する国境での入国拒否を認めなかったが、ドイツに向かう難民の「玄関口」にあたるオーストリアとの国境に管理施設 (transit centres)を設け、他のEU加盟国で難民申請登録した人々はその国へ送り返すことで合意した。送還は2カ国間協定を結んで行う。

一方で、Merkel首相が難民送還に動いたことで、右傾化を嫌う穏健な支持層の離反を招いた。

ドイツの民間難民支援団体は難民管理施設を「絶望的な収容施設」と指摘、「政府首脳たちには、追われた人々への同情がない」と厳しく批判 した。

2018/7/2 EU首脳会議、移民問題で不十分な合意、ドイツ内相が辞任示唆 付記


今回のバイエルン州の選挙結果はこれを反映している。

メルケル政権の難民受け入れへの不満から、右寄りの支持層が極右政党ドイツのための選択肢(AfD)に流れた。

慌てたCSUは反難民に転じたが、今度は右傾化を警戒する穏健派が緑の党に流れた。

結局、左右両翼の支持を失うこととなった。


10月28日にはヘッセン州議会選挙がある。ここでCDUが敗北すれば、メルケル氏の党首としての立場がおかしくなる。


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