台湾の住民投票、原発停止など リベラル路線に「No!」

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同日実施された住民投票でも、脱原発政策や民法で同性婚を認めることなど、蔡政権下で進みつつあったリベラル路線に「ノー」が突き付けられた。

住民投票の主な結果:

賛成 反対
福島など5県産の食品禁輸の継続
2025年までに原発停止の法律条文廃止
同成婚 民法婚姻規定は男女の婚姻に限る
民法で同性の婚姻を保証
小中学校での
同性愛教育
実施すべきでない。
実施 (性教育も)
台湾名義での東京五輪参加申請


1) 福島など5県産の食品禁輸

台湾は福島原発事故の直後から福島、茨城、栃木、群馬、千葉の5県からの食品の輸入を禁止し、2015年5月15日以降はこれに加え、日本から出荷される全ての食品に都道府県別の産地証明を義務づけた。

福島も含め日本の農産物は厳格な検査を経ており、放射性物質は今はほとんど検出されない。 日本政府は科学的な根拠に基づき安全性が担保されていると説明し、輸入解禁を強く求めてきた。

民進党の蔡政権は輸入解禁を前向きに検討してきたが、最大野党・国民党が食品問題に敏感な市民の不安をあおり、反対運動を展開し、住民投票を請求した。

国民党は8月27日、解禁の賛否を問う住民投票に向けて約47万人の署名を集めたと発表した。国民党は5県産の農産物を「核食」(「原発事故で汚染された食品」)と呼んで市民の不安をあおり、政権の攻撃材料に した。

2年間は投票結果と異なる政策を実施してはならないと定められており、台湾は今後2年間は5県産食品の輸入を解禁できない。

2) 原発停止

台湾の蔡英文政権は40年稼働期間の延長をせず、「2025年に原発ゼロ」にすることを決めた。

2017年1月11日、電気事業法改正案が立法院(国会)で可決され、成立した。 「2025年までに原発の運転を全て停止する」とし、太陽光と風力発電を中心に再生エネの割合を20%まで高めることを目標とする 。石炭は30%、天然ガスは50%としている。

台湾には4原発・8基があり、うち第四原発は完成後も住民の反対で稼動していない。
第一、第二原発は人口密集地の台湾北部にあり、台北中心部から23~28kmの距離にある。

第四原発は今後も稼動せず、残り6基についても40年稼動期間の延長をせず、期間満了で停止する。このため、2025年5月に原発ゼロとなる。

出力(net) 発電開始 40年 現状
第一原発
(金山発電所)
1号 BWR 604MW 1978/12 2018/12 停止中 2014/12の定期検査で不具合発覚
2号 BWR 604MW 1979/7 2019/7 稼動中
第二原発
(国聖発電所)
1号 BWR 948 MW 1981/12 2021/12 稼動中
2号 BWR 948 MW 1983/3 2023/3 停止中
第三原発
(馬鞍山発電所)
1号 PWR 919 MW 1984/7 2024/7 停止中 定期検査
2号 PWR 922 MW 1985/5 2025/5 稼動中
第四原発
(龍門発電所)
1号 ABWR 1300 MW

住民反対で未稼働

2号 ABWR 1300 MW

2016/10/26 台湾が原発全廃へ 

今回、原発停止に反対する市民団体が住民投票を請求した。「2025年までに原発の運転を全て停止する」と定めた条文削除を問う住民投票では、削除賛成が約589万票、反対が約401万票だった。
賛成多数で条文は12月初旬にも失効する見通し。今後、40年期間の延長が争点となる。建設が凍結された第4原発について議論が再燃する可能性もある。

3)同成婚

2017年5月、台湾の憲法裁判所に当たる司法院大法官会議が、同性婚を認めていない現行民法は「違憲」に当たるとの判断を示し、2年以内の法改正か関連法制定を求めた。蔡 総統は同性婚を支持すると表明している。

関連する住民投票はいずれも同性婚反対派の望む結果になった。裁判所の違憲判断は効力を失わないため、蔡政権は特別法制定による同性婚合法化を目指すとみられる。

住民投票では、小中学校で既に導入されている同性愛教育にも否定的意見が多数を占めた。

4) 五輪

2020年の東京五輪に従来の「Chinese Taipei:中華台北」ではなく「台湾」名義で出場申請することへの賛否を問う住民投票は、反対多数だった。

国際オリンピック委員会(IOC)が五輪憲章違反を理由に、住民投票の結果次第で台湾の出場資格停止に踏み切る姿勢を示していた。



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