米商務省は3月4日、レアメタルのチタンの中間製品スポンジチタンについて、通商拡大法232条に基づく調査を始めると発表した。米国メーカーのTitanium Metals Corpが2018年9月に要請したもの。
米国の唯一のメーカーのTitanium Metals Corporation(通称は商標でもあるTIMET )は1950年設立のチタンメーカーで、ネバダ州Hendersonでスポンジチタンを生産している。
2012年11月にWarren BuffettのBerkshire Hathaway Incが保有する Precision Castparts Corp. に買収された。
輸入増が安全保障上の脅威になっていないか判断し、必要であれば追加関税の発動などを検討する。
Ross長官は、「スポンジチタンは、ヘリコプターのローター、戦車の装甲、戦闘機の機体やエンジンなど防衛で広く使われている。完全でフェアで透明性のある調査を行い、(追加関税などの是非を)大統領に報告する」と述べた。
スポンジチタンの米国の消費の60%以上が輸入品で、米国では1カ所のみで生産している。スポンジチタンは変質するため長期の保管が困難で、最も重要な軍事・航空宇宙の用途には適していないとしている。
Titanium Metals Corpは2017年にも、日本とカザフスタンからのスポンジチタンの反ダンピングの調査を申請している。カザフスタンのメーカーには42%、日本のメーカーには67~95%のダンピング課税を要請した。
商務省のデータでは、2016年の輸入額は日本からが144.8百万ドルであった。 (2017年の日本からの輸入は約180百万ドル)。
これに基づき商務省が2017年9月に反ダンピングに加え、反補助金の調査を開始したが、米国ITCは10月8日、予備調査に基づき被害が無いとして調査を打ち切った。こんなに早い段階でITCが調査を打ち切るのは珍しいとされた。米国では、商務省がダンピングの有無、ITCが被害の有無を審査する。
ITCの決定は、商務省にとってショックであったが、今回改めて通商拡大法232条に基づく調査を行う。トランプ政権は、通商拡大法232条に基づいて、これまでに各国から輸入されている鉄鋼やアルミニウムに高い関税を上乗せしている。
2018/3/3 トランプ大統領、鉄鋼とアルミに追加関税、日本も対象
スポンジチタンの主要生産国は、日本、アメリカ、ロシア、カザフスタン、ウクライナ、中国の6カ国。日本では東邦チタニウムと大阪チタニウムテクノロジーズが生産している。
スポンジチタンは多孔質の中間原料で、管や板の形に加工してプラントの熱交換器などの素材になる。
東邦チタニウムの製造工程は以下の通り。
(1)塩素化:チタン鉱石(ルチル)の中の酸化チタンを塩素ガスと反応させて四塩化チタン(TiCl4)を製造。
(2)蒸留:四塩化チタンを蒸留により精製
ガス状の四塩化チタンを冷却して液状にした後、高温で酸素と反応させ、塩素ガスを分離すると酸化チタンとなる。
(3)還元・分離:精製された四塩化チタンに溶融金属マグネシウムを反応させ,多孔質で塊状のスポンジチタンを製造。
酸化チタンの製法には上記の塩素法のほかに、硫酸法がある。欧米では塩素法、日本では硫酸法が主流である。
なお、東邦チタニウムは、サウジに Cristal(The National Titanium Dioxide)とその親会社のTasnee(The National Industrialization Company)とのJVでスポンジチタンを製造している。
この工場で、これまで日本のスポンジチタン製造において使用されていなかったチタンスラグ由来の四塩化チタンを原料とする。2014/1/27 東邦チタニウム、サウジでスポンジチタンの製造販売JV
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