英下院、3月29日に離脱協定案の三度目の採決

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英下院は3月29日、メイ首相がEUとまとめたBrexit協定案の三度目の採決を行う。(日本時間 23:30 頃)

可決されれば5月22日までの離脱延期が認められる。

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英国とEUは、アイルランド国境管理の復活を防ぐための「安全策」(Backstop) として、国境管理の回避策が見つかるまで英国全土を関税同盟に残す規定を盛り込んだが、英議会が「永久にEUルールに縛られ続ける」と猛反発し、下院は1月15日、離脱協定案を432対202の大差でこれを否決した。

メイ首相とユンケル欧州委員長は3月11日夜、仏東部ストラスブールで会談し、離脱協議の懸案だったアイルランド国境問題の見直しに向けた2つの共同文書で合意した。英国がEUのルールに縛られ続けないとする条項を1月に英議会が否決した離脱案に追加し、法的拘束力を持たせたのが特徴である。

下院は3月12日夜、英政府がEUとの間で前日にまとめた離脱条件の協定の承認採決を行い、賛成 242、反対 391の大差でこれを否決した。

下院は3月14日、議会が3月20日までに英国とEUがまとめた離脱案を承認した場合、6月30日までの一時的延長をEUに申し出るとの首相の提案を賛成413、反対202で可決した。

メイ首相は3月19日か20日に、これまで2度否決されているEU離脱協定を改めて採決にかけるとしてい た。

しかし、ぎりぎりの時点で John Bercow 下院議長が問題を指摘した。1604年に遡る慣例法で、同一会期中に、否決されたのと同じ議案、または実質的に同じ議案を提案できないというものである。

議長によると、1月15日の議案と3月12日の議案は十分に違いがあり、慣例法の違反にはならない。しかし、3月12日の議案と同じものを今回再提案することは出来ない。
どれだけ違えばよいかについては明らかにしていないが、「根本的に違っている("fundamentally different")」ことが必要としている。

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前回は離脱協定案と将来関係の枠組みに関する政治宣言概要(単一市場外で最大限に緊密な関係を築く方針など)をペアで付議したが、今回は協定案のみで、政治宣言は含まない。離脱の実現には、再度の議会採決が必要となる。英国の法令に基づくと、離脱協定と政治宣言の双方を議会が承認しない限り、批准手続きは完了しない。

分離して協定案のみを付議することについては、離脱案全体の同時承認を求める「2018年EU(離脱)法」に違反しているとの声が出たが、司法長官は合法としている。

John Bercow 下院議長は直前まで同じ案での再採決は認めないとしてきたが、今回の協定案のみの採決については、前回と十分に異なるとして認めた。

メイ首相は3月27日、与党保守党の会合で、離脱合意案が下院で承認されれば首相を辞任する意向を表明した。
合意案に反対する与党内の離脱強硬派に対し、自らの進退とひきかえに、賛成に回るよう要請。「捨て身の戦術」で合意案承認を狙った。

強硬離脱派の旗頭であるボリス・ジョンソン前外相が首相の辞意表明後、首相案支持にまわったとされるが、離脱強硬派を含む与党議員や、閣外協力で政権を支える北アイルランドの民主統一党議員は依然として反対している。民主統一党のスポークスマンは28日、政府の離脱協定案を29日の採決で党として支持しないと表明した。

今回の採決で承認される可能性は低い。

英紙Timesによると、EUは来月開く臨時首脳会議で、最長1年の離脱延期を受け入れるか、合意がないままEUを離脱するか二者択一を英国に迫る方針だという。

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