EU、デジタル課税合意見送り、仏英など独自課税へ 

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EUがGoogleなどIT分野の巨大企業を主な対象とする digital taxの合意を見送る見通しとなった。

3月末までに加盟国でつくる閣僚理事会での合意を目指していたが、足並みがそろわなかった。

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欧州委員会は昨年3月21日、デジタル分野における課税に関する指令案を発表した。

近年のデジタル経済の拡大は、EUの経済成長に大きく貢献したものの、関連企業の実効税率は、従来分野の企業の約半分程度だと指摘し、これらの企業の多くが多国籍企業であることや、EU域内に実体的な拠点を必要としないことによって、現行の税制で捕捉できないことが原因だとして、公平な税負担を実現する必要があると強調した。

アイルランドのApple子会社は欧州 (及び中東、アフリカ、インド)での販売利益を全てアイルランドに集めている。


EUは2016年8月30日、アイルランドが米国のAppleに対して税を優遇していたのは、EUの法律が禁止している不当な補助にあたるとして、最大で130億ユーロ(プラス金利)の追徴課税を行うよう命じた。

アイルランド政府は2018年9月18日、Appleが追徴課税131億ユーロに利息12億ユーロを加えた総額143億ユーロを払ったと発表した。但し、アイルランド政府はEU司法裁判所への不服申し立てを継続する考えを示しており、「仮払い」として受け取り、第三者が開いた「エスクロー勘定」で管理する。

2016/9/1  EU、アイルランド政府にApple への130億ユーロの追徴を命令

さらに、一部の加盟国が現段階で捕捉されていないデジタル分野での課税を検討し始めたことに対し、域内における制度の乱立を避け、デジタル経済の成長を妨げない公正かつ持続可能な課税に向けて、域内で統一的なアプローチを取る必要があるとの認識を示した。

域内に実体的な拠点がなく、インターネットを通じてサービスを提供する場合も企業の収益に対する課税を可能にする法案と、一部企業のデジタル分野での収益に対する暫定的な課税措置から成る。

1つ目は、実体的な拠点が存在しない場合も、次の条件のいずれかを満たす場合は、企業が域内に「有意なデジタルの存在」を有していると見なし、加盟国が国内で発生した利益を課税できるようにする。

  • ある加盟国でデジタルサービスから得られる年間の収益が700万ユーロを超えた場合
  • ある加盟国でデジタルサービスの利用者が年間10万人を超えた場合
  • 企業が他の事業者と年間3,000件を超えるデジタルサービスの契約を締結した場合

2つ目の提案は、現在捕捉されていないデジタル分野の収益に加盟国がすぐに課税できるように、暫定的な税(interim tax)を導入するもの。課税額は売上高をベースに算出される。

全世界での売上高が7億5千万ユーロ以上、かつEU域内の売上高が5千万ユーロ以上の企業のみをこの課税の対象とする。

課税対象の例:

  • ウェブ上の宣伝スペースの販売から得られる収益
  • ユーザー間の相互作用を可能とし、商品の販売やサービス提供を促進する、ウェブ上の仲介業務から得られる収益
  • ユーザーが提供した情報から生成されたデータの販売による収益

徴税はユーザーが所在する加盟国が行う。

現段階の税率は3%を想定しており、年間50億ユーロの税収増が見込まれるとしている。

この発表に合わせ、フランスとドイツ、イタリア、スペイン、英国の加盟5カ国は共同声明を発表した。

G20やOECDで合意が存在しない中では、EUレベルでの取り組みが必要だ。欧州委の提案を歓迎。これを契機にG20やOECDでの議論が活発化することに期待。

ムニューシン米財務長官は2018年3月16日、IT企業を対象にした課税強化策について「デジタル企業のみを対象にする提案は、どこの国からの提案であっても断固反対する」との声明を発表した。

「デジタル企業は米国の雇用創出や経済成長に大きく貢献している。新たに余分な税負担を課すことは成長を妨げ、最終的に労働者や消費者の損害となる」と強調した。

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その後、EUでは暫定的な税の適用について、議論を進めてきたが、税制の変更には全会一致の承認が必要となる。

EUのデジタル課税案には、低税率で米IT大手などを誘致してきたアイルランドなどが導入に猛反発し、また米国からの「報復」を警戒するドイツなども、国際的な課税ルール見直しの議論を見極めるべきだと早期導入に慎重な姿勢を崩さず、調整が難航した。

このため、2018年12月には推進派の仏がドイツと連携し、課税対象を絞る妥協案を提示した。

新提案では税率は3%を維持する一方で、課税の対象を広告の売り上げに絞り、データの売り上げなどは除外する。
2021年までに国際的な解決策が得られなかった場合にのみ発効する。

合意の時期も2018年末から2019年3月末まで先延ばしして決着を呼び掛けた。

しかし、アイルランド、スウェーデン、デンマーク、フィンランドが反対した。

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合意が困難となったことでフランスは単独での課税にカジを切り、3月6日に関連法案を閣議決定した。

世界で7億5千万ユーロ、仏国内で2500万ユーロ以上の売上高を持つIT企業を対象にネット上のビジネスの売上高に3%を課税する。

ネット上の広告、個人情報の売買、仲介の3つに対して2019年1月に遡及して課税する。

Google 等の検索大手のほか、Amazon などプラットフォーム提供企業も含む見通しで、仏経財省によると、30社あまりが対象となり、4億ユーロ程度の税収を見込む。

ルメール経済・財務相は同日、「欧州には21世紀の税制を定義する勇気がなかった。残念だ」と述べた。

反政権運動「黄色いベスト」のデモを収めるために打ち出した生活支援策で約100億ユーロの政府負担が発生するなか、税収を少しでも増やす狙いもある。

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英国のハモンド財務相は2018年10月29日、大手IT企業を対象とする新たなデジタル税制を2020年4月から導入すると公表した。

IT企業が英国のユーザーから稼いだ収入に2%の税率を課す。

世界の売上高が年間5億ポンド(約720億円)以上の事業部門が新税の対象になる。新税導入により年4億ポンド(約570億円)の税収を確保する。

ハモンド財務相は「オンラインでの買い物への新税ではなく、もうけのある企業に税を払ってもらう」と強調 した。英財務省関係者は「ベンチャーや起業家への投資を妨げる目的ではない。そのために対象企業の売上高に下限を設けた」と説明した。

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スペイン政府は2019年1月18日、大手IT企業のデジタル事業売上高に3%課税する法案を承認した。年間12億ユーロの税収を見込む。

年間売上高が世界で7億ユーロ超、スペインで300万ユーロ以上の企業が対象。

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経済協力開発機構(OECD)は2019年2月13日、IT大手へのデジタル課税などについて、論点を整理した文書を公表した。

2019年6月に福岡で開く20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で議論を報告する。議長国である日本には、合意に向けた調整役としての役割が求められる。

概要:

課題1.恒久的施設(PE)を持つことを前提にした現在の税制では、拠点を持たずに活動できるIT大手に課税しにくくなっていること

対策案 新たに基準を設け、物理的拠点がなくても課税できるようにする。

1. 検索エンジンなど電子ビジネスへの「ユーザーの参加」に応じ、そこで得られた利益に対する課税権を配分する。
  利用者(量)が多い国ほど多くの税金を課すことができる仕組みで、英国が提案している。

2. 顧客基盤などの無形資産(「マーケティング無形資産」)に応じて課税権を配分する米国案

3. 一定の売上高や従業員がいる国を「重要な経済拠点」と認定し、PEの概念を広げて課税を強化。インドなど新興国が支持

課題2. 税率の低い国に拠点を集めることで、税金逃れをすることへの対策

対策案 法人税率の最低水準を設ける。

高税率の国にある親会社が、水準を下回る低税率の国の子会社に利益を移した場合、高税率の国が子会社の所得を親会社に合算して課税できる仕組みなど

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