韓国首相、最低賃金引き上げの副作用に謝罪

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韓国の李首相は3月21日、国会での代表質問で、最低賃金引き上げによる副作用について、「痛切な思いで大変申し訳ない」と発言した。

「最低賃金の急激な引き上げで低所得層が雇用を失った」と指摘する議員の質問に対し、李首相は「最低賃金引き上げで給与労働者間の賃金格差が緩和し、低賃金労働者も減少した」とする一方で、「最低賃金も支払うことが難しい小規模事業者には経営負担を強い、働き口まで失った方々がいる点をよく理解している」とも語った。 「マクロ指標の影で苦痛を味わう国民の困難を政府が無視してはならない。深い責任を感じ、とても胸が痛い。申し訳ない」と陳謝した。


韓国統計庁が2月13日に発表した1月の失業率(季節調整済み)は4.4%となり、昨年12月の3.8%から上昇し、 経済が世界的な金融危機の影響を受けていた2010年1月に記録した4.7%以来の高さとなった。

最低賃金が上昇しており、賃金が低い業種はより敬遠されつつある。

製造業の1月の雇用者数は前年同月から17万人減と最も減少幅が大きかった。建設業は1万9000人減、小売業は6万7000人減となった。

アナリストは「貿易摩擦は韓国製造業にまだ波及しておらず、最近の雇用減は国内のリストラ問題や最低賃金の引き上げが自営業者に及ぼす悪影響を反映している面が大きい」と分析 している。



国が定める最低賃金は、
昨年が16.4%の引き上げ、今年も10.9%引き上げと、2年間で合計29%上昇しており、 今年1月の引き上げで時給8350ウォン(7.46ドル)となった。

韓国の最低賃金は全国全産業一律。

8350ウォンで825円相当だが、日本には無い週休手当という法律で決まった制度があり、週に15時間以上働くと1日分の賃金が余分にもらえる。
1日8時間(週に40時間)で計算すると週休手当(8時間分)が加われば990円相当になり、東京の最低賃金985円より高い。

東北や四国、九州などの760円余、日本の全国加重平均874円と比べると、韓国の最低賃金は非常に高い。

米国の連邦レベルの最低賃金は2009年7月以降 $7.25で、韓国はこれより高い。(2019年1月に17州で最低賃金改定があり、全米で29州が連邦レベルを上回る)
一方、1人当たりGDPでみると、韓国は米国のほぼ半分しかない。

文在寅大統領が選挙公約で時間当り最低賃金1万ウォン(約千円相当)を掲げたのが発端で、大統領選の公約実現に突っ走った。

文政府は2020年までに1万ウォンを公約し、2018年を7481ウォン、2019年に8649ウォンの計画を発表している。

韓国の最低賃金法では、雇用労働部長官の要請に基づき最低賃金委員会が最低賃金案を審議・議決し、労使団体による異議申し立て期間を経て、雇用労働部長官が毎年8月5日までに最低賃金を定めることとされている。

2018年1月1日から適用する最低賃金は、2017年の6,470ウォンから16.4%引き上げられて、7,530ウォンとすることが決まった。

最低賃金委員会は2018年7月14日、2019年に適用される最低賃金を820ウォン(10.9%)引き上げ、8,350ウォン(政府計画には未達)とすることを決議した。雇用労働部長官は8月3日、最低賃金委員会の決定どおり2019年の最低賃金を定めることを告示した。

これについて、IMFやOECDから「速すぎる」と諌める声が出た。

経済協力開発機構(OECD)は急激な最低賃金引き上げほどの生産性の向上が伴わなければ韓国の国家競争力が弱まる可能性があると懸念した。

OECDは2018年5月30日に発表した「世界経済見通し報告書」で、「最低賃金引き上げで民間消費振興が期待される」としながらも、「生産性向上が伴わなければ雇用が鈍化し競争力が弱まる可能性がある」と分析した。OECDは生産可能人口が減少し法定労働時間が短縮されるだけに労働生産性向上が重要だと判断した。


IMFアジア太平洋局の課長は2018年7月のセミナーで、2019年の韓国の最低賃金10.9%引き上げ決定を念頭に、「特定ポイントを超えれば韓国経済のファンダメンタルズに損傷を負わせかねない。とても慎重にアプローチする必要がある」と明らかにした。

課長は韓国政府が最低賃金引き上げ政策を展開する際に「フランスの事例を参考にしなければならない」と助言した。フランスは2005年に最低賃金が中位賃金の60%に到達した後、副作用が出たことで引き上げ速度を大幅に遅らせた。

課長はまた、最低賃金引き上げにともなうインフレ発生の可能性に言及し、場合によって通貨政策余力を弱めかねないという点も指摘した。

席上、OECDの韓国経済担当官も、最低賃金引き上げが特にサービス分野で雇用を弱め、インフレを発生させる原因となる恐れがある点を指摘した。 「最低賃金引き上げ幅は地域別で受容できる水準が違う。ソウルの明洞と全羅南道は同じになれない」と話した。

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