独Merck、米半導体材料メーカーのVersum Material を買収

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独Merckは4月12日、米半導体材料メーカーのVersum Material を買収する契約を締結したと発表した。

1株53ドルの現金払いで、負債込みの買収額は約58億ユーロ(65億米ドル)。

Versum は半導体の製造過程で使う高純度材料の大手で、Merckも半導体や液晶向けの高純度材料を手がけており、買収でカバーできる工程を広げる。

買収完了の3年後から年間7500万ユーロの統合効果を見込む。

Versum は1月に米Entegrisと経営統合することで合意していたが、Merckはこれを上回る条件を示し、Versum を翻意させることに成功した。

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米国の特殊化学品のEntegris は2019年1月28日、Versum Material を買収することで合意したと発表した。

Entegrisは半導体およびその他ハイテク産業の最先端の製造プロセスに対し、歩留まりを向上させる材料やソリューションを提供している世界有数のサプライヤーで、米国、マレーシア、シンガポール、台湾、中国、韓国、日本、イスラエル、ドイツ、フランスの世界各国に製造工場、サービスセンター、研究施設などの基幹施設を持つ。

Versum 株主は1株当たり、Entegrisの株式を1.120株受領する。計算では総額 38.3億ドルとなる。合併後のEntegrisは旧株主が52.5%、Versum株主が47.5%を所有する対等合併となる。

これに対し、Merckは2月27日、Versumに買収提案を行った。1株当たり48ドルで、債務を除く総額は52億ドルと、Entegrisとの合意額を大きく上回る。

Merckはその後、買収額を更に引き上げ、1株53ドルとした。

VersumはEntegrisに対し、対抗案の提示を求めたが、Entegrisは見直す計画は無いとし、Merckによる買収が決まった。

VersumはEntegrisに違約金を支払う。

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Versum Materials 米国の半導体材料メーカーで、2016年10月1日に分離するまでは、Air Products & Chemicals の一部門として30年以上にわたり営業していた。

材料と送達系システムの2部門から構成され、エレクトロニクスや半導体、フラットパネル・ディスプレイの市場向けに特殊材料を供給し、材料やガスの送達と流通システムを提供する。

「半導体業界に革命をもたらす次世代のCMPスラリー、超薄誘電/金属フィルム前駆体、調製洗浄剤およびエッチング用製品、デリバリー装置を供給する世界一流企業の一角を占めている」としている。

2018年の売上高は1,372百万ドルで、内訳は下記の通り。

Merck の事業は3部門に分かれ、2018年の売上高及び扱い製品は次の通り。

売上高
百万ユーロ

Healthcare 6,246

がん、腫瘍免疫および不妊治療領域を重点領域に、世界の先進的な医薬品や医療機器

Life Science 6,185

バイオサイエンス基礎研究から創薬、医薬品製造まで
研究室の純水・超純水装置システムや、薬剤を製造するための遺伝子編集ツール、抗体、細胞株、エンドツーエンドのシステムなど

Performance Materials 2,406

液晶やOLEDなどの「ディスプレイ用材料」、
さまざまな製品に彩りを与える「パール顔料」や化粧品用原料、
エレクトロニクス業界に貢献する半導体製造用の特殊化学品、
次世代エネルギー分野を支える「新規材料」のグローバルサプライヤー

Total 14,836

Performance Materials 部門は最も小さい。半導体関連製品も多く、Versum買収で強化を図る。

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Merck KGaA の起源は1668年にフランクフルトの南のDarmstadtFriedrich Jacob Merckがエンゼル薬局を創業したことに始まる。

1891年、Merck 一族のGeorge Merckが米国に子会社 Merck & Co.を設立した。
この会社は第一次世界大戦で敵国企業の子会社として米国政府に接収され、1917年に独立した。接収後は両社は別会社である。

2006/3/23 2つのMerck社

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