Saudi Aramco の財務分析

| コメント(0)

Saudi Aramcoは3月27日、SABICの株式の70%を政府系ファンドのPublic Investment Fund (PIF) から691億ドルで買い取ることで正式に合意したと発表した。

Aramcoは買収資金を自ら調達し、PIFに691億ドルを支払う。

2019/3/30 Saudi Aramco、SABIC株式の70%を取得 

ーーー

Aramcoは30年の長期を含む初のドル建て債を100億ドル規模で発行する。JPMorgan Chase とMorgan Stanleyの米投資銀行2社が主幹事を務める。

Aramco は初の債券発行を控え、投資家向けに業績を公表した

Bloomberg などによると、概要は次の通り。

1) 財務数値 単位:億ドル (億単位 四捨五入)

2016 2017 2018
売上高 1,350 2,630 3,560
EBITDA 940 1,650 2,240
法人税 380 790 1,020
純利益 130 760 1,110
営業Cash flow 290 890 1,210
Free Cash flow 20 560 860
配当 - 500 520



2) 2018年の純利益は、Apple とGoogle とExxonMobil の合計に等しい。


3) しかし、採掘費は安いが、税金が非常に高く、バレル当たりのCash flowは中位である。

サウジは国の運営資金をSaudi Aramco に頼っており、所得税は50%で、ロイヤリティは収入の20%から始まり、最高 50% にまでなる。


4) サウジの実力者であるムハンマド皇太子はSaudi Aramcoの企業価値について2兆ドルを上回ると指摘している。市場ではサウジ側のSaudi Aramco評価が過大だとの見方も出ている。

Bloombergは、2018年に同社が520億ドルもの配当をさせられていることから、1兆2千億ドル程度ではないかとしている。


5) 借入に問題なし

米格付け会社Moody's は4月1日、Saudi Aramcoの格付けを「A1」とし、「トリプルA」のExxonMobilと差を付けた。「Saudi Aramcoは生産規模の大きさや豊富な化石燃料資源などトリプルAに値する性質を多く持つ」と指摘する一方、「政府との密接なつながり」が評価を下げたと説明した。

しかし、Saudi Aramco の負債は少ない。


6) 問題は Saudi Aramco には多くのリスクがあること。

同社は以下のリスクがあることを明らかにしている。

・ 同社の設備へのミサイル攻撃
・ 米国がOPECを独禁法違反とする恐れ
・ 気候変動問題 (
ニューヨーク市が、ExxonMobil やBPなどの国際石油会社に対し「気候変動の原因を招いた」として提訴)
・ サウジリアルと米ドルとの連動(固定相場制)がなくなる可能性
・ サイバー攻撃 (2012年に被害を受け、一部の作業をマニュアルに変えざるを得なかった事実がある。)
・ 石油価格下落 2016年にBrent原油が45ドルまで下がり、OPECが減産した際、同社は損益トントンとなった。
  (年間の純利益は130億ドルまで下がり、free cash flowはたった20億ドルであった。)

このほか、米同時テロに関与した疑いがある外国政府に、遺族らが損害賠償を請求する訴えを起こすことができる「テロ支援者制裁法(JASTA)」が成立している。



コメントする

月別 アーカイブ