本年度は減収で大幅減益となった。
翌2020年3月期は更に大幅減収、大幅減益となり、コア営業利益は本年度比で458億円の減益、2017年3月期比では845億円の減益となる。株主帰属損益はほぼゼロとなる。
減益の主たる原因はロイヤリティ収入の減である。技術ライセンス先が契約の有効性に疑義を持ち、仲裁にかけたもので、最終判断が出るまで、その部分の収益計上を取り止めた。
これまで、コア営業損益のほとんどがロイヤリティ収入で、しかもそのうちの半分以上が当該 1品目のものであった。その他の製品の販売ではトントンであることを意味する。
その収益計上をとりやめるため、一時的であっても、経営に大きな影響を与える。仮に仲裁で負けることとなると、致命的である。
ロイヤルティーに依存する事業戦略の見直しを迫られている。
単位:億円 (配当:円) |
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同社は決算発表で次の通り説明している。
当期の業績:
当期の連結業績は、米国での筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療剤「ラジカヴァ」の売上が大きく伸長したものの、ロイヤリティ収入等や国内医療用医薬品の減収の影響により、減収となった。
利益面については、研究開発費の増加により、減益となった。
次期予想:
国内医薬において、本年10月の消費増税に伴う連続薬価改定による減収を重点品の増販強化でカバーするものの、「ジレニアロイヤリティ」の仲裁手続きが継続することを見込んでおり、一部について売上収益の認識を行わないこと、さらに、米国ラジカヴァの待機患者の一巡による新規患者数の減少もあり、前期から大幅な減収を予想。
利益面では、上記の減収要因はあるものの、引き続き高水準の研究開発費を投じる予定であることから、大幅な減益となる。
下記2製品の影響が大きい。損益的には「ジレニア」の影響が全体の減益額に相当する。
1) 筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療剤「ラジカヴァ」:
同社は2017年5月、米国でALS治療薬「ラジカヴァ」の承認を取得した。
2018年3月期の売上高は123億円であったが、2019年3月期には270億円となり、147億円の増収となった。翌期は新規患者の減で、50億円減の220億円となる。
2) 多発性硬化症治療剤「ジレニア」:
田辺三菱製薬 の前身の吉富製薬が創製し、海外ではノバルティス(スイス)に導出したこの薬剤のロイヤリティ収入は、収益の柱となっている。
吉富製薬は、1997年9月に、Novartis Pharma AGとの間でライセンス契約を締結し、京都大学の藤多哲朗教授、台糖(現「三井製糖」)と吉富製薬の共同研究から見出された世界初のスフィンゴシン1-リン酸受容体調節薬「FTY720(一般名:フィンゴリモド塩酸塩)」に関する全世界における開発権(日本については共同開発権)および販売権をノバルティスに対し許諾した。
田辺三菱は、吉富製薬の本件契約上の地位を承継し、ロイヤリティの支払いを受けていた 。
2019年2月、ノバルティスから本件契約の規定の一部の有効性について疑義が提起され、2019年2月15日、国際商業会議所より、ノバルティスを申立人とする仲裁の申立てがあった旨の通知を受領した。
ノバルティスは、米国、EU等における製品の売上ベースのロイヤリティ支払い義務を定める本件契約の規定の一部は無効であり、ノバルティスにはロイヤリティの一部の支払義務がないことの確認を求めている。
田辺三菱は、本件契約の有効性を検討した結果、何ら問題はないという結論に至っている。
本仲裁は、ICCの仲裁規則に従い、英国ロンドンを仲裁地として行われる。
IFRSルールでは、収益認識基準の要件の一つ に「契約の当事者が契約を承認しており、それぞれの義務の履行を確約している」 があり、ノバルティスが契約の有効性について疑義を提起している部分がこれを満たさなくなったため 、売上収益から除外する。
各期の損益の内訳は下記の通り。(億円)
来期予想でジレニアのロイヤリティ額は不明だが、全体としてロイヤリティ収入の減額が売上高の減額とほぼ同じで、コア営業利益の減額ともほほ同じである。
2017/3 2018/3 2019/3 前期比 2020/3
予想前期比 売上高 4,239 4,339 4,248 -91 3,760 -488 国内 3,203 3,208 3,077 -131 3,083 6 海外 1,036 1,129 1,170 41 676 -494 (うちラジカヴァ) (123) (270) (147) (220) (-50) うちロイヤリティ 822 791 631 -160 192 -439 (うち ジレニア) (537) (577) (497) (-80) 非公表 (インヴォカナ ) (188) (139) (105) (-34) 非公表 売上総利益 2,595 2,641 2,441 -200 1,975 -466 研究開発費 647 790 865 75 855 -10 コア営業利益 945 785 558 -227 100 -458
もう一つのロイヤリティの「インヴォカナ」は、ヤンセンファーマシューティカルズに導出した2型糖尿病治療剤
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