米、カナダ・メキシコへの鉄鋼・アルミ関税を撤廃

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米国は5月17日、カナダ、メキシコとの間で、安全保障を理由とした鉄鋼・アルミニウム製品への追加関税措置を停止することで合意した。
カナダ、メキシコも、米農産物などにかけてきた報復関税を取りやめることで合意した。

米国とカナダ・メキシコ両国のそれぞれの共同声明の内容は次の通り。

Joint Statement by the United States and Canada on Section 232 Duties on Steel and Aluminum
Joint Statement by the United States and Mexico on Section 232 Duties on Steel and Aluminum

1. 米国と両国は2日以内に、両国からの鉄鉱・アルミ製品への米国のSection 232 に基づく関税と、それに対する両国の報復関税を撤廃する。


2. 米国と両国はSection 232 actionに関するWTOへの相互の提訴を取り下げる。

3. 互いに次の措置をとる。

不当な補助金のついた and/or ダンピング価格での鉄鋼・アルミ製品の輸入の防止
米国と両国以外で生産された鉄鋼・アルミ製品の相手国への輸送の防止

4. 米国と両国は鉄鋼・アルミ製品の貿易を監視する手続きを決める。

5. 鉄鋼・アルミ製品の輸入が過去の数量を著しく超えた場合、協議を要請し、協議の後に輸入国は鉄鋼には25%、アルミ製品には10%の超過関税を課すことができる。その場合、輸出国はその分野(アルミとアルミを含む製品又は鉄鋼)においてのみ報復できる。

6. (メキシコとの共同声明では下記を追加している。)

鉄鋼輸入の超過を考える場合、米国はメキシコから追加のビレット225千トンを認め、メキシコは米国から追加の冷間圧延板200千トンを認める。


トランプ大統領は、「カナダとメキシコとの間で合意した。関税をかけられずに米国から輸出できるようになる」と述べた。

米政権は5月17日に安全保障を理由とした輸入車への追加関税についても180日間延期すると決めた。米中通商紛争が激化するなか、USTRなどが対中交渉に注力できる環境を整える。

日本やEUなどについては追加関税を継続する。

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トランプ米大統領は2018年3月1日、鉄鋼とアルミニウムの輸入増が安全保障上の脅威になっているとして輸入制限を発動する方針を表明した。

2018/3/9 トランプ大統領、鉄鋼・アルミの輸入制限発動を命令

鉄鋼やアルミニウムの輸入制限は米東部時間2018年3月23日午前0時1分に発動された。同時刻以降に米国に輸入された製品から追加関税を徴収する。

ホワイトハウスはカナダ、ブラジル、メキシコ、EU、オーストラリア、アルゼンチン、韓国への関税を5月1日まで猶予する方針を示した。完全に除外するかどうかは各国と貿易問題などを交渉して決める。

日本は除外対象にならなかった。

2018/3/26 米国、鉄鋼とアルミの輸入制限を発動

トランプ大統領は、猶予期限切れ直前の4月30日、カナダ、メキシコ、EUへの関税の猶予を更に1カ月延長すると発表した。その間に譲歩を迫る。
カナダ・メキシコとはNAFTAの再交渉中。EUは「断固とした対応をとる」としており、難航する見通し。

ホワイトハウスによると、ブラジル、アルゼンチン、オーストラリアについてはほぼ合意に達しており、30日以内に詳細を詰める。
3か国は米国にとって貿易黒字国で、米国への鉄鋼・アルミ流入抑制対策で協力する。

韓国については、3月に米韓FTAの改正・延長交渉で合意した。鉄鋼に関しては25%の追加関税を免除する代わりに、韓国は米国向け輸出数量を減らす。

2018/3/26 韓米FTA改正交渉妥結、鉄鋼の追加関税免除

EUの欧州委員会は2018年6月6日、対抗措置として、米国からの輸入品に報復関税を課す方針を正式決定した。

2018/6/7 EU、米国の鉄鋼・アルミニウム輸入制限への報復関税、7月発動へ

カナダ政府は2018年6月29日、米国が課した鉄鋼とアルミニウムの関税に対し、7月1日に報復関税を発動すると発表した。
鉄鋼やアルミ、食品など166億カナダドル相当の製品を対象に10~25%の追加関税を課す。

2018/6/23 米国の鉄鋼・アルミ関税問題のその後 

本件についてはトランプ大統領の強硬策に米国内でも反対が広がった。

2018/6/29 米輸入鉄鋼協会、鉄鋼関税を「違憲」と提訴、米自動車業界も自動車の追加関税に反対


トランプ米政権は2018年9月30日、北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しでカナダと合意したと発表した。メキシコとの間では、8月27日に基本方針に関する暫定合意が成立している

NAFTA(North American Free Trade Agreement)の名称を「USMCA(the United States-Mexico-Canada Agreement=米国・メキシコ・カナダ協定)」に変更する。

米国が求める乳製品の市場開放でカナダが一定の譲歩を示した。米国が撤廃を求めてきたNAFTA 19条の紛争解決メカニズムは、新協定ではそのまま残される。

協定は16年間有効で、発効後、原則6年ごとに再評価し、各国が次の16年間の更新意思を示さないと失効する「サンセット条項」も盛り込んだ。

2018/10/4 NAFTA、3カ国協定を維持、USMCAに改称

米国、メキシコ、カナダの3か国首脳は2018年11月30日、「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」に署名した。

しかし、各国の批准手続きが難航し、年内の成立が困難になりつつあった。米国は2020年に大統領選を控え、カナダも2019年10月に総選挙が予定されており、協定は批准の大幅な遅れで選挙の争点に浮上し、政治に翻弄されることになるのではとみられた。

カナダのフリーランド外相は5月15日、米国が鉄鋼とアルミニウムに対する関税措置を維持している限り、米・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の批准には大きな問題があるとの認識を示した。

今回、米国が鉄鋼・アルミの追加関税措置を停止することで前進した。

今後は3カ国の議会が新協定を批准できるかに焦点が移る。米議会は下院で過半数を握る野党・民主党が労働者や環境の保護を強めるよう修正を働きかけており、与野党が妥協点を探る必要がある。

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