フィアット、ルノーに経営統合提案

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Fiat Chrysler Automobiles (FCA) は5月27日、Renaultに経営統合を提案したと発表した。

統合比率は1対1と対等とし、統合による工場閉鎖は行わない。

付記 

FCAは6月6日、ルノーとの経営統合提案を撤回した 。5日夜にルノーの取締役会で承認が得られなかったことを受け、ルノーに通知した。
ルノーの筆頭株主である仏政府の介入により、望んでいた条件での統合は難しいと判断した。

発表:It has become clear that the political conditions in France do not currently exist for such a combination to proceed successfully.

オランダの持株会社(統合会社)の傘下にRenaultとFCAを置く。両社の株主には統合会社の株式が配分される。
統合会社の取締役は計11人で、FCAとルノーから各4人、日産から1人を出す形になる。

統合会社はイタリアやニューヨークの株式市場などに上場する。

以下の点が伝えられている。

フランス政府は現在、ルノー株15%を保有する筆頭株主で、フランスには同国企業の株式を2年以上持つ株主に2倍の議決権を与える「フロランジュ法」があるが、オランダに本社を置く統合会社の株式については同法は適用されない。

日産が現在ルノー株15%を保有しているが、統合が実現した場合の日産の持ち分は7.5%になる。

ルノーは現在、日産株の約43%を保有して議決権を持っているため、日産が保有する15%のルノー株には議決権がないが、統合後の新会社では議決権が復活することになる。
(フランス
会社法では、40%以上の出資を受ける企業は出資元の議決権を持てないが、オランダ法にはこの規定はない。)


仏ルノーは5月29日、日産自動車、三菱自動車とトップ会談を開き、統合協議を進めることに賛同を求めた。
日産は「反対ではない」としながらも、日産としてのスタンスを固めるには「まだつめなければならないことが多い」と述べた。

関係者によると、FCAのエルカン会長が日産自動車の西川社長兼最CEO、三菱自動車の益子会長兼CEOに、仏ルノーとの経営統合について直接会って説明したいとの書簡を送った。


年間販売台数は、合計870万台になる。ルノーと連合を組む日産と三菱を加えると、年間販売は約1500万台となり、独フォルクスワーゲンやトヨタ自動車の約1千万台を大きく引き離し世界トップとなる。

統合が実現すれば、両社は電気自動車技術や、インターネットとつながるコネクテッドカーなど複数分野で協業を模索する。

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Fiat Chryslerと、Renaultの歴史は次の通り。

1)Fiat Chryslerは2014年10月12日に、FiatとChrysler が合併して設立された。Fiat 創業者のAgnelli の投資会社が、株式の約3割(議決権ベースで4割以上)を保有する。

1-a) Fiat

1899年にトリノで創業

1960s~1980sに相次ぎ買収を行った。Autobianchi 、Ferrari 、Abarth、Lancia、Alfa Romeoなど。

石油ショックや、その前後の左翼勢力による慢性的な労働争議により経営が不安定化

2000年にGMと提携するが、2005年にGMが一方的に解消、違約金15.5億ドルを受け取る。

2005年頃から業績回復

2009年にChryslerに20%出資(将来的に35%まで引き上げること、米政府の公的資金完済後には最大51%を取得して子会社化できる条項あり)。

その後、持株比率を58.5%に引き上げ、2014年1月に残りのUAWの持株41.5%を買い取り、Chryslerを完全子会社化し、2014年10月に統合

1-b) Chrysler

1925年にWalter ChryslerがChrysler Corporation設立、その後、Big Threeの一つに成長。

1970年代後半には深刻な経営危機、1978年に元Ford Morter社長のLee Iacoccaが社長就任

1985年 三菱自動車と提携し、Diamond Star Mortorsを設立、1988年 イリノイ州新工場で共同生産開始。

その後、1993年に三菱自動車がDiamond Star Mortorsを買い取り、以降は三菱自動車の北米事業部門となる。

1987年、ルノー傘下のAmerican Motorsを買収 (Jeep Cherokeeがヒット)

1998年に、Daimler-Benz AGと合併し、Daimler-Chryslerとなる。事実上Daimler-Benzによる買収

2007年5月、Daimler-Benzとの競業体制解消
 Chrysler部門は「Chrysler LLC」とし、株の80.1%をCerberus Capital Management, L.P.が買収
 Daimler-BenzはDaimlerに改称

2009年4月にDaimlerは残り株式をCernerusに売却

2009年4月30日、Chapter 11 の適用申請

Cerberus の持株は事実上失効
新たに、UAWが55%、Fiatが20%、米国政府が8%、カナダ政府が2% 出資。

同年6月10日法的手続きが完了

2014年1月、Fiatは株式保有率を58.5%にまで引き上げていたが、UAWの医療保険基金が持つ残り41.5%を買い取り、Chryslerを完全子会社化すると発表。

2014年10月12日に統合

2) Renault S.A

1898年にフランス人技術者のLouis Renaultとその兄弟が設立

1979年 に アメリカ第4の自動車会社 American Motors を買収

1987年にAmerican MotorsをChryslerに売却

1993年 - スウェーデンのVolvoとの合併を発表するがその後白紙撤回

1999年、日産自動車を事実上の傘下に収めることを発表。

その後同社と相互に資本提携しRenaultが日産自動車の株を44.4%、日産自動車がRenaultの株の15%を所有する。Renaultが日産自動車に経営陣を送り込む。

2016年、日産自動車が三菱自動車工業の筆頭株主となる。

2010年4月7日、Renault・日産アライアンスとDaimlerは戦略的提携を発表。株式の交換による相互出資も発表。
Renault・日産アライアンスがDaimler株を3.1%、DaimlerがRenault株及び日産株を各3.1%保有する。

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