メルケル首相のハーバード大卒業式でのスピーチ

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ドイツのメルケル首相は5月30日、アメリカのハーバード大学の卒業式で演説した。

演説はトランプ米大統領の名前に一言も触れずに、大統領と米政権を痛烈に批判する内容だった。通商や移民、気候変動に至るまで、トランプ氏と衝突した政策を列挙し、首相が誰について話しているのか、聴衆は明確に理解し、 拍手喝采した。


同大学ホームページから

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最初に、旧東ドイツで育った 自らの体験に触れ「ベルリンの壁が文字どおり目の前に立ちはだかり、私の機会を制限した」と述べた。

それが、1989年にポーランド、ハンガリー、チェコ、東ドイツで人々が立ち上がり、壁を壊した。私を含め誰も可能と思わなかったことが事実となった。

30年前に何事も変わらないことはないということを自身で経験した。「何ごとも変えることができる(nothing has to stay the way it is)」 これをまず、皆さんに伝えたい。

次に、世界に立ちはだかる問題を取り上げた。

「気候変動」は宇宙の自然資源にとり脅威であり、これは人間により引き起こされたものだ。2050年までに気候中立(climate neutrality)を達成するよう全力を尽くす。
しかし、改善はみんなでやって可能になる。皆さんに伝えたい2番目は、我々の行動は一方的でなく多角的、国ごとではなく他国的、孤立主義でなく外に目を向けるということだ。
Multilateral rather than unilateral.  Global rather than national.  Outward-looking rather than isolationist

保護主義や貿易摩擦は自由な国際貿易を危険にさらし、我々の繁栄の基礎を台無しにする。

技術は限りない可能性を与えるかもしれない。しかし、技術に対するルールを決めているか? 技術が我々の行動を決めていないだろうか?人間を尊厳ある、多面的な個人として見ているか、それとも単に消費者やデータソース、監視対象としてしか見ていないのではないか?

もし、他人の目で世界を見れば、難しい問題に答えが見つかる。衝動で行動せず、ちょっと立ち止まって考えるのだ。

最も重要なのは、自分自身に正直であることだ。嘘を事実とし、事実を嘘とすり替えるな。

個人の自由は与えられたものではない。民主主義は当たり前と思うものではない。自由も繁栄も同じだ。
しかし、我々を取り囲む壁を壊し、外に出て、新しいことを取り込む勇気を持つなら、全てが可能だ。
"But if we break down the walls that hem us in, if we step out into the open and have the courage to embrace new beginnings, everything is possible."

最後に、この願いを皆さんに残したい。「無知と偏狭の壁をぶち壊せ、何ごとも変えることができる」。
"Tear down walls of ignorance and narrow-mindedness, for nothing has to stay as it is."

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"Tear down walls" は、彼女自身の経験のほか、1987年6月12日にレーガン大統領がブランデンブルク門でのベルリン750周年記念式典のスピーチで発した言葉 Tear down this wall! に因むもので、この演説の2年後にベルリンの壁は崩壊した。

同時にトランプ大統領のメキシコとの壁を皮肉っている。

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