EU、キプロス沖でのガス採掘めぐりトルコに対抗措置

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欧州連合(EU)は7月15日、度重なる警告にもかかわらずキプロス沖でガス採掘を実施しているトルコに対し、対抗措置を取ることを決めた。

トルコとのハイレベル協議を停止するほか、航空協定交渉を凍結とし、来年のトルコ向け財政支出も1億4580万ユーロ(約177億円)削減する。

またEU加盟国の外相らは欧州委員会に対し、採掘活動に関わる人物らに金融制裁を科す可能性について検討を求めた。

東地中海で巨大なガス田が発見されたことをきっかけに、トルコとEU加盟国であるキプロスの間で対立が勃発。トルコ政府はEUの警告にもかかわらず、採掘実施のため船舶2隻をキプロス沖に派遣していた。

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キプロス島は1974年以来、南北に分断されており、島の北部約37%をトルコ系住民による北キプロス・トルコ共和国(トルコのみが承認)が占めている。
南側のギリシャ系住民が住むのがキプロス共和国で、EUに加盟している。

地中海東部では2009年からガス田の発見が相次ぎ、イスラエルやエジプトが自国のEEZ内で生産を始めた。

2013/4/4 イスラエルで新ガス田からの天然ガス輸送開始 

キプロス共和国は下図の排他的経済水域(EEZ)を設定した。このうち、エジプト、イスラエル、レバノンとの境界は確定しているが、残りは確定していない。

天然ガスの発見で、トルコはトルコ系住民の住む北キプロス・トルコ共和国も権利を持つとし、南北で大陸棚での探査について協定を結ぶことを要求したが、キプロスはこれを無視した。

キプロス政府はENIやExxonMobil、Shellなどに採掘権を与えた。

これに対し、トルコが排他的経済水域を設定し、探索のための掘削を始めた。

2018年2月、トルコ海軍の艦艇は、キプロスの南沖合約70キロの海上をブロック3の掘削現場に向かい航行中のイタリアのEniの掘削船を停船させた。近くでトルコ海軍が演習を行っているためというのが理由。

トルコは本年5月中旬、100隻以上の軍艦を投入して、同島の近隣で大規模な海上演習を実施した。さらにエルドアン大統領は6月、「地中海東部でのトルコと北キプロスの権利を守る」と宣言。資源をめぐる対立は複雑化している。

 

EUは、キプロスのEEZ内でのトルコの掘削活動を違法行為と断定。EU大統領は7月10日、「EU加盟国であるキプロスの主権への挑戦を続けている」とツイートし、掘削活動をやめなければ制裁も辞さない構えを示した。

イタリアやスペインなど地中海地域のEU加盟7カ国も、6月の首脳会議で「キプロスを支持し、トルコに国際法と隣国関係を尊重するよう求める」とする声明を出した。

米国務省は7月9日、トルコ当局に対し、キプロス沖でのガス掘削活動を中止するよう要請した。キプロスは前日、トルコの石油・ガス掘削船がキプロス北東部の沿岸に接近し、錨を下ろしたことに猛抗議していた。

米国務省の報道官は「挑発的な行為は地域の緊張を高める。米国はトルコ当局にこうした活動の中止を要請するとともに、全当事者に対し、自制を促す」と表明した。

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