豪州のLynas、米国でレアアースの生産JV

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豪州のLynas Corpは5月20日、テキサスのBlue Line Corporation との間で、Blue Lineのテキサス州の工場内にレアアースを分離・精製する工場を建設する覚書を締結した。

Lynasがマジョリティを持つJVを設立し、来年にかけて処理工場を建設すべく協力する。

Lynasは豪州のMt.Weld レアアース鉱床からレアアース鉱物(モナザイト等)を採掘、西オーストラリア州南部のEsperance 港からマレーシアへ海上輸送し、Lynas Advanced Materials Plant で分離・精製し、更に最終消費者の要求にあったレアアース製品とした後、米国・欧州・日本などへ販売している。(詳細下記)

Blue Line Corporationはテキサス州San Antonioに本社、同州Hondo に工場を持ち、レアアース、ジルコン化合物、ゾル-ゲル法などを扱っている。

レアアースは下図の黄色の部分である。


Lynasは現在、マレーシアで軽希土のPr、Nd を主に生産している。テキサスでは当初は重希土を生産し、その後は軽希土も生産する予定。

中国以外で重希土、中希土を大規模に生産する唯一の工場となる。

Lynas では、これまで米国の需要家に遠く離れたマレーシアから製品を供給してきたが、現地で供給できるようになるとしている。


米国での生産の理由の一つには、マレーシア工場の問題がある。

Lynasは豪州でレアアース鉱物を採掘しているが、希土類鉱石には、トリウム 232 やウラン同位体等の放射性物質が含まれている。

放射性廃棄物の環境基準が厳しく,国民の環境意識が高いオーストラリアでは製錬工場の稼働は困難で、当初は中国に設置する計画が立てられたが,中国政府が環境規制を突然厳しくしたため,マレーシアに変更された。

マレーシアでは、以前に三菱化成のレアアース工場の問題があり2011/7/7 豪州レアアース開発会社Lynas Corp. と三菱の2)、当初から反対運動があった。

2018年5月にMahathir Mohamad 元首相(92)率いる野党連合が予想外の歴史的勝利を収めた。Lynasの工場に反対してきた野党連合が政権を取り、非常に厳しくなった。

現在、ライセンスの更新(2019/9/2) のために、何年にもわたって工場に蓄積している廃棄物を処分することを求められており、今後、生産に支障が出る恐れもある。これが米国進出の理由の一つである.


Lynasは本年5月、マレーシアでの能力増強と廃棄物処理に5億豪ドル(347百万ドル)を投ずる計画を発表した。

Mahathir 首相は5月30日、ライセンスの更新を行うことを明らかにした。しかし、今後、いろいろと問題が生じる恐れはある。

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Lynas は1983年にYilgangi Gold NLとして設立され、1985年にLynas Gold NLに改称し、西オーストラリア州Pilbara地域で金探鉱を行っていた。

2001年6月に金プロジェクトを売却し、社名をLynas Corporation に変更、2002年5月にレアアースのMt.Weld 鉱床の権益100%を取得し、同鉱床の探鉱開発に集中していった。

Mt.Weld 鉱の鉱物資源量は、770万t、酸化レアアース品位12%となっている。
(精測鉱物資源量120万t :品位15.7%、概測鉱物資源量500万t :品位11.8%、予測鉱物資源量150万t :品位9.9%)

第1 フェーズは、投資総額5 億4 千万米ドル、生産能力11,000 トン/年で、2011 年第3 四半期より操業を開始。
第2 フェーズは、投資総額2 億5 千万米ドルで鉱山、および製錬所を拡張(追加生産能力11,000 トン/年)するもので、2012 年第4 四半期より操業を開始。

Mt.Weld レアアース鉱床からレアアース鉱物(モナザイト等)を採掘、西オーストラリア州南部のEsperance 港からマレーシアへ海上輸送、Lynas Advanced Materials Plant で分離・精製し、更に最終消費者の要求にあったレアアース製品とした後、米国・欧州・日本などへ販売する。

2010/10/5 レアアース、米・豪・カザフなど生産拡大 

Lynas Advanced Materials Plant はKuantan港の近くのGebeng Industrial Estateにある。2012年末に生産を開始した。

日本政府はJOGMEC を通じ、第二フェーズの建設資金として約225 億円の融資を実施し,約25 億円を出資している。双日と JOGMEC、Lynasとの間で,年間 8500 トンのレアアース供給を 10 年間行なうという契約が成立している。

2010/11/25 双日、レアアースの供給・拡張プロジェクトで豪州Lynasと戦略的提携の基本合意 


マレーシアの環境問題については下記が詳しい。

http://www.kohara.ac/syllabus/2017a/5ddbf9d7995ea6b7528dfc13432d4d33e275dd82.pdf

Lynasの事業についてのプレゼンテーション:
 https://www.lynascorp.com/wp-content/uploads/2019/05/190521-Investor-Day-Presentation-Lynas-2025-1931391.pdf

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