政府、半導体材料の対韓輸出規制を発表

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政府は7月1日、韓国への半導体材料の輸出規制を厳しくすると発表した。有機ELに使うフッ化ポリイミドなど3品目について、個別に審査・許可する方式に切り替える。安全保障上の友好国である「ホワイト国」の指定も削除する。


経済産業省は規制の理由に「不適切な事案の発生」などを挙げるが、元徴用工訴訟をめぐる韓国への事実上の対抗措置である。

付記 韓国政府、日本の規制強化受け半導体素材開発に5500億円投資へ

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発表概要:

経済産業省は、「外為法」に基づく輸出管理を適切に実施する観点から、大韓民国向けの輸出について厳格な制度の運用を行う。

輸出管理制度は、国際的な信頼関係を土台として構築されているが、関係省庁で検討を行った結果、日韓間の信頼関係が著しく損なわれたと言わざるを得ない状況である。
こうした中で、大韓民国との信頼関係の下に輸出管理に取り組むことが困難になっていることに加え、大韓民国に関連する輸出管理をめぐり不適切な事案が発生したこともあり、輸出管理を適切に実施する観点から、下記のとおり、厳格な制度の運用を行うこととする。


1.大韓民国に関する輸出管理上のカテゴリーの見直し

7月1日より、外為法輸出貿易管理令別表第3の国(いわゆる「ホワイト国」)から大韓民国を削除するための政令改正について意見募集手続きを開始する。

2.特定品目の包括輸出許可から個別輸出許可への切り替え

7月4日より、フッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素の大韓民国向け輸出及びこれらに関連する製造技術の移転について、包括輸出許可制度の対象から外し、個別に輸出許可申請を求め、輸出審査を行う 。

注1 ホワイト国 

貨物や技術を輸出する場合、「リスト規制」と「キャッチオール規制」に該当しないことを確認する必要がある。

軍事転用の可能性が特に高い機微な貨物に該当するものは、輸出貿易管理令・別表第1の1~15項で指定されている。これが「リスト規制」

輸出しようとする貨物や提供しようとする技術が、大量破壊兵器等の開発、製造、使用又は貯蔵もしくは通常兵器の開発、製造又は使用に用いられるおそれがあることを輸出者が知った場合、又は経済産業大臣から、許可申請をすべき旨の通知を受けた場合には、輸出又は提供に当たって経済産業大臣の許可が必要となる制度が補完的輸出規制( 「キャッチオール規制」)と呼ばれる。

大量破壊兵器等に関する条約に加盟し、輸出管理レジームに全て参加し、キャッチオール制度を導入している国については、これらの国から大量破壊兵器の拡散が行われるおそれがないことが明白であり、俗称で 「ホワイト国」と呼んでおり、これらの国への輸出はキャッチオール規制の対象外となる。

具体的には、アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、カナダ、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、 大韓民国、ルクセンブルク、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、イギリス、アメリカの合計27ヶ国。

今回、韓国を外す。その場合、軍事転用の恐れがある先端技術や電子部品などを日本から輸出する際に許可が必要となる。

注2 包括輸出許可制度

許可申請は原則個別申請で契約案件ごとに対応する。日本の輸出審査にかかる時間は約3か月が標準である。

包括許可制度は一括して許可を受けることができる手続きで、いちいち個別許可申請の必要がなくなり、業務効率化を図ることができる。

韓国のこれら製品の在庫は通常、1~2か月とされており、個別申請に切り替わると、原料切れで生産に影響を及ぼす可能性がある。

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韓国最高裁が日本企業に賠償を命じた元徴用工訴訟で、原告側は日本企業の韓国内の資産売却の手続きを進めている。実際に現金化されれば、企業に実害が及ぶ。

韓国政府は三権分立を盾に実効的な対策を打っておらず、日本政府は韓国側の姿勢を不当とする立場を明確に示す必要があると判断した。

経産省は今回、フッ化ポリイミド、半導体製造で使うレジスト(感光材)、エッチングガス(フッ化水素)の3品目を対象に、輸出ごとに許可・審査を求めるよう改める。

レジストは日本メーカーの世界シェアが9 割にのぼり、エッチングガスも9 割前後とされる。3品目の対韓輸出では、企業が輸出手続きに時間がかかり、韓国の生産に影響が出るおそれもある。

また、韓国をホワイト国から外した。その場合、軍事転用の恐れがある先端技術や電子部品などを日本から輸出する際に許可が必要となる。

韓国の半導体製造用精密化学原料は、日本からの輸入割合が41.9%になる。精密化学原料の中でもフッ化水素は半導体洗浄に必須のもので90%以上を日本から輸入している。

韓国業界のある関係者は「フッ化水素をまともに作れる国は日本以外にほとんどない。サムスン電子、SKハイニックスなども日本製を使っている」と伝えた。

韓国では、数カ月前からこれを予測する報道が流れていた。

4月8日の韓国 中央日報の記事

日本が強制徴用賠償判決などに対する抗議として経済報復措置を取る場合、半導体業界の打撃が大きいという懸念が出ている。
時事通信は先月、日本政府が韓国に対し報復関税、一部日本製品の供給停止、ビザ発給制限など100種類余りの報復措置を用意したと報道した。供給停止製品にはフッ化水素が含まれるだろうとの観測も流れている。
フッ化水素輸入が途絶えれば韓国の半導体生産がまひする。そうでなくても輸出に困難を経験する半導体業界に致命打になりかねない。

もちろん経済報復が現実化すれば日本も大きな影響を受けることになる。産業研究院のキム・ヤンペン研究員は「先月日本政府が対韓輸出制限を示唆した時に日本の経済団体が懸念を示した」と伝えた。日本の半導体製造装備輸出で韓国の割合は23.1%に達しており対韓輸出の道が閉ざされれば日本企業も莫大な売り上げ減少は避けられない構造だ。

今回の韓国への措置は、貿易上の必要性からではなく、別件での報復で、トランプ政権の中国からの輸入品への追加関税やHuaweiに対する制裁 、以前に起こった中国の日本向けレアメタル輸出規制と同じことである。

自由貿易を掲げてきた日本の方向転換と受け止められかねない懸念がある。

韓国政府は7月1日、 「日本の輸出規制措置はWTOの協定上禁止されている措置であり、遺憾に思う」とし、「政府は国際法と国内法にのっとって断固対応する」と述べた。

日本国内にはWTOルールに抵触しないという意見と、協定違反の疑いもあるグレーなものとする意見がある。

元徴用工訴訟にからむ問題での日本政府の今回の措置は、韓国国民の反発を呼ぶのは必至である。韓国では半導体産業だけが好調で、現在の韓国経済はこれでもっている。この生産に支障がでて、韓国経済が更に悪化した場合、韓国国民の対日感情は更に悪化すると思われる。

脅されて方針を変更すれば、政権はもたない。この措置で韓国政府が動き、元徴用工訴訟の問題が解決に向かう可能性はほとんどない。

単に韓国との関係を更に悪化させるものとなる。


長期的には、韓国は重要原料については自製を図るだろう。その場合、日本企業は需要を失うこととなる。

日本は禁じ手を使ってしまった。日本はフッ化物の原料の蛍石を中国からの輸入に頼っていることも勘案しておく必要がある。

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3品目のうち、フッ化水素は半導体洗浄、エッチングに使用される。ステラケミファや森田化学工業 が生産し、日本が9割程度の高いシェアを握る。

工業的に使用されるフッ素(フッ化物)は、CaF2を主成分とする蛍石を出発原料としている.

少し古いが、2012年の世界の生産量は純分換算(48.7%)で3,440千トンで、うち、中国が62%、以下、メキシコ17%、モンゴル7%となっている。

日本ではフッ素原料として、蛍石及びフッ化水素を輸入している。
蛍石の輸入は高純度品の場合は中国が82%を占める。低純度でセラミック等の用途はメキシコが80%、中国が12%。

フッ化水素の輸入は中国が98%を占める。但し、高純度フッ化水素は中国では生産していない。

国内でフッ化水素の製造を行っているのは、セントラル硝子、AGC(旭硝子)、三菱マテリアル電子化成の3社である。

エッチング用の高純度フッ化水素はテラケミファや森田化学工業が生産する。

石油天然ガス・金属鉱物資源機構 レポート  http://mric.jogmec.go.jp/public/report/2014-06/28.20140601_F.pdf

以前に韓国でも高純度フッ化水素を生産したが、2012年にガス漏れによる死亡事故を起こしている。高純度フッ化水素はごく少量でも致死量に達する猛毒で、また分解スピードが遅いため土壌と植物に長期間にわたり悪影響を与えたとされる。

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フッ化ポリイミドは、高耐熱性・高絶縁性・高強度プラスチックであるポリイミドに新たな機能を付加したもので、下記の特徴・用途を持つ。

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レジストは、半導体や液晶パネルの製造工程で、回路パターンを形成する材料として使用されている。

フォトレジストは光を照射すると物理的・化学的変化を生じるが、この原理を利用して回路パターンを形成する。パターン露光された部分が現像でなくなるポジレジストと露光部分が残るネガレジストの二種類がある。

JSR、東京応化、信越化学、富士フィルム等が生産している。




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