対韓輸出規制のWTO問題

| コメント(0)

韓国への輸出規制を厳しくする日本の措置について韓国政府は7月10日、世界貿易機関(WTO)の理事会で発言し、日本の措置は貿易ルールに反していると批判し撤回を求めた。これに対し日本は「国際ルール上全く問題ない」と反論した。

韓国の白芝娥大使が、日本政府が半導体の原材料などの韓国向けの輸出規制を厳しくしたことについて、「対象になっているのは韓国だけで、WTOの規定に反している。G20大阪サミットで自由貿易の重要性を主張したことに反している」と批判、「日本の措置は、韓国だけでなく世界全体の産業に悪影響を与える」と訴えて、撤回を求めた。

これに対して日本の伊原純一大使は「安全保障上の懸念に基づく貿易管理の見直しで、WTOのルール上、全く問題ない」と反論し、ほかの加盟国に理解を求めた。

取材に対し「禁輸の措置ではなく安全保障に関する貿易管理上の見直しであり、韓国を簡素化手続きの対象から通常に戻す措置だ。したがってWTOのルール上全く問題ないと説明した」と述べた。

韓国の康京和外相は7月10日、ポンペオ米国務長官と電話協議し、日本による輸出規制の強化を巡る懸念を伝えた。「韓国企業に被害をもたらすだけでなくグローバルな供給体制を混乱させ、米企業や世界の貿易秩序にも否定的な影響を及ぼしうる」などと述べた。

ーーー

政府は7月1日、韓国への半導体材料の輸出規制を厳しくすると発表した。有機ELに使うフッ化ポリイミドなど3品目について、個別に審査・許可する方式に切り替える。安全保障上の友好国である「ホワイト国」の指定も削除する。

経済産業省は以下の通り発表した。

輸出管理制度は、国際的な信頼関係を土台として構築されているが、関係省庁で検討を行った結果、日韓間の信頼関係が著しく損なわれたと言わざるを得ない状況である。
こうした中で、大韓民国との信頼関係の下に輸出管理に取り組むことが困難になっていることに加え、大韓民国に関連する輸出管理をめぐり不適切な事案が発生したこともあり、輸出管理を適切に実施する観点から、下記のとおり、厳格な制度の運用を行うこととする。


2019/7/3 政府、半導体材料の対韓輸出規制を発表


世耕経産相は7月3日にツイッターで説明した。

韓国への輸出管理上の措置について、なぜこの時期に?等の疑問がまだ寄せられているし、マスコミもまだ完全に理解できていないようなので、今回の措置に至る経緯を改めて説明します。

経緯①

従来から韓国側の輸出管理(キャッチオール規制)に不十分な点があり、不適切事案も複数発生していたが、日韓の意見交換を通して韓国が制度の改善に取り組み制度を適切に運用していくとの信頼があったが、近年は日本からの申し入れにもかかわらず、十分な意見交換の機会がなくなっていた。

経緯②

また近時、今回輸出許可を求めることにした製品分野で韓国に関連する輸出管理を巡り不適切な事案が発生している。

経緯③

さらに今年に入ってこれまで両国間で積み重ねてきた友好協力関係に反する韓国側の否定的な動きが相次ぎ、その上で、旧朝鮮半島出身労働者問題については、G20までに満足する解決策が示されず、関係省庁で相談した結果、信頼関係が著しく損なわれたと言わざるを得ない。

経緯④

輸出管理制度は、国際的な信頼関係を土台として構築されているものであり、経緯①〜③を勘案した結果、韓国との信頼関係の下に輸出管理に取り組むことが困難になっていると判断し、厳格な制度の運用を行い、万全を期すこととした 。

その前に次の説明をしている。

ホワイト国=友好国ではない。相手国内で輸出管理が厳格に行われているかがポイント。日本にとって重要な友好国であるインドもホワイト国ではない。

さらに重要な事実を指摘しておくと、EUは現在でも韓国を非ホワイト国としています。

軍用品転用可能な技術輸出に関して実効性ある管理を求める国際合意が7つある。合意遵守に必要な見直しを不断に行うことは国際社会の一員として義務。 WTOの自由貿易体制下でも各国にその義務の着実な履行が求められており、各国は履行。今回措置はこの義務履行の一環。 WTO違反には全く当たらない。

参考までに7つの国際合意を列挙します。()内は参加国数。核兵器不拡散条約(191)、化学兵器禁止条約(192)、生物兵器禁止条約(182)、原子力供給国グループ(48)、オーストラリアグループ【生物化学兵器】(42) 、ミサイル技術管理レジーム(35) 、ワッセナーアレンジメント【通常兵器】(42)

発言のなかの経緯①、②からみれば、軍用品転用可能な製品が他国に再輸出された例があるとみられる。

実際に、韓国の産業通商資源省は7月10日、2015年から19年3月までに戦略物資の東南アジアや中国、中東諸国などへの違法輸出が156件に上ったと明らかにした。対象には、生物・化学兵器を含む大量破壊兵器製造にも転用できるフッ化水素などの輸出も含まれていた。

2018年5月にはウラン濃縮に使われる遠心分離機がロシアなどに輸出された。
2017年12月にフッ化ナトリウムなどがイランへ輸出されていた。
日本政府が今回規制したフッ化水素酸も2017年12月にベトナム、2019年1月にアラブ首長国連邦(UAE)へ不正輸出されていた。

フッ化水素酸は核兵器の製造や猛毒サリなどの化学兵器の合成材料にも使われるが、韓国は日本製ではないとし、「サリンに転用されるのは低純度のフッ化水素で、日本から輸入している高純度のフッ化水素が転用されることはありえない」と強調している。

同省は10日発表したリストについて「輸出管理が効果的にされている証左」と主張。「日本は違法輸出の摘発件数さえ公開していない。一部の事例を選んで公開しているだけだ」としている。

これが理由であれば、今回の輸出規制は大使の言う通り、「安全保障上の懸念に基づく貿易管理の見直しで、WTOのルール上、全く問題ない」。

問題は、経産省発表の「日韓間の信頼関係が著しく損なわれたと言わざるを得ない状況である」と、世耕 経産相の経緯③である。「両国間で積み重ねてきた友好協力関係に反する韓国側の否定的な動きが相次ぎ、その上で、旧朝鮮半島出身労働者問題については、G20までに満足する解決策が示されず」としている。

政府や自民党では、「元徴用工」訴訟での判決や、韓国駆逐艦による海上自衛隊哨戒機へのレーダー照射問題などで、韓国制裁が議論されてきたとされる。

夕刊フジのzakzakは1月19日付で「韓国制裁、官邸決断か...23日に日韓外相会談 半導体原材料 フッ化水素 禁輸の声も」という記事を載せている。

聞く耳を持たない隣国に対し、日本では「国際司法裁判所(ICJ)への提訴」や「韓国人の入国ビザ差し止め」といった、対抗措置が本格検討されており=別表=、国内世論も怒りの声で満ちあふれている。

予想される日本政府による韓国への対抗策

① 国際司法裁判所(ICJ)への提訴
② 韓国人の入国ビザの差し止めを含めた厳格化
③ 韓国製品の関税上乗せ
④ 貿易保険の適用から韓国を外すなどの輸出規制
⑤ 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への韓国の参加申請拒絶
⑥ 日本国内の韓国企業の資産差し押さえ
⑦ 日本からの部品・素材提供の停止(フッ化水素など)
⑧ 長嶺安政駐韓日本大使の帰国


今回、対抗策の第一弾として⑦が発動された。

長嶺安政駐韓日本大使は7月8日、韓国の国会で国会外交統一委員長と1時間ほど会談した。 日本の輸出規制措置の背景に関連し「単に強制徴用者問題のためだけではない。両国間の信頼関係が崩れたため」と述べた。

以上からは、本当の理由は「安全保障上の懸念に基づく貿易管理の見直し」ではなく、韓国の姿勢への制裁と見られる可能性があり、WTOのルール上、全く問題ないとは言えない。

コメントする

月別 アーカイブ