EvonikによるPeroxyChemの買収、FTCが反対

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Evonik Industries は2018年11月、投資会社 One Equity Partnersとの間で、PeroxyChemを6億2,500万ドルで買収する契約を締結した。

PeroxyChemは過酸化水素(H2O2)と過酢酸(PAA)を製造するメーカー で、元はFMCの事業部門で FMC Global Peroxygens であった。

One Equity PartnersはJ.P. Morgan Chaseの一部門で、2014年3月にPeroxyChemを2億ドルで買収した。

過酸化水素と過酢酸はいずれも酸化剤であり、パルプ業界の漂白剤や食品加工の消毒剤として、また排水処理など、さまざまな分野で用いられてい る。

過酸化水素は半導体製造、医療用途や宇宙船開発技術など、ハイテク分野での利用が増えてい る。

PeroxyChemは 100年以上もさかのぼるルーツを持ち、フィラデルフィアに本社を構え、世界中で約600名を雇用しており、北米を中心に、ドイツ、スペイン、タイなどに合計8カ所の製造拠点を持っている。

Evonikも過酸化水素とその関連製品を何十年にもわたって製造してきた経験をも ち、世界各地に13の製造拠点を構え、世界で最大手のメーカーの一つである。

Evonik としては、両社の業務内容、ロジスティックス、製品ポートフォリオの拡大や新技術の開発などが相互補完関係にあるため、統合されたグローバルな事業全体において、2,000万ドル規模のシナジー効果を期待して おり、このシナジー効果は2022年までに完全に発揮できるとしていた。

関連当局の承認を条件に、2019年中頃に完了予定としていたが、Federal Trade Commission は8月2日、これをブロックした。審判開始決定書(Administrative Complaint) を出すとともに、最終決定がなされるまでの間、現状を維持するよう求める訴えを連邦地裁に提出した。

両社の統合が米国のPacific Northwest 地区と Southern and Central地区で競争を阻害するというもの。

FTCの主張は以下の通り。

過酸化水素は輸送費の面から、他の地区から運ぶということは考え難い。

Pacific Northwest 地区では、両社のほかに競争力を持つのはSolvayだけであり、統合会社のシェアは50%を超える。

Southern and Central地区では、Solvay、Arkema、Nouryonが存在するが、両社は二大メーカーで、販売量ではトップ3社のうちの2社であり、シェアは約50%である。

両地区で HHI(Herfindahl-Hirschman Index:業界内の全企業のそれぞれのシェアを二乗して足し合わせるもの)は2500をはるかに超え、違法である。

統合は2つの点で競争を害する。

市場は寡占で、談合の長い歴史を持っており、市場での調整の可能性が増す。
両市場ではこれまで需要家は両社の争いで値下がりのメリットを受けてきたが、新しい競合社が出る可能性、他社が増設する可能性は少ない。

買収による統合は、アンフェアな競争方法であり、FTC法に違反し、また、競争を著しく減らすことから、独禁法(Clayton Act)に違反する。

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注)Nouryon

オランダのAkzo Nobelは2018年3月、特殊化学品事業 のAkzo Nobel Specialty Chemicals を米投資会社Carlyle Groupとシンガポールの政府系投資会社GICの連合に売却すると発表した。 負債を含む売却総額は101億ユーロ。

買収されたAkzo Nobel Specialty Chemicals は2018年10月、社名をNouryonに変更した。
スペシャリティケミカル事業の源流の一社である Noury & Van der Lande から採った。日本化薬とのJVの化薬アクゾは当初はNouryとのJVで、社名は化薬ヌーリーであった。

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