米司法省、インドのHindalcoによるアルミ圧延メーカーAleris買収阻止のため訴訟

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米司法省は9月4日、インドのHindalco Industriesの米子会社NovlisによるAlerus買収を阻止するため提訴した。自動車用のアルミシートの値上げを懸念したもの。

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Hindalco Industries は2018年7月、米国の完全子会社のNovelisが米国を拠点とするアルミニウム圧延品メーカーAlerisを25.8億ドルで買収すると発表した。

Hindalco はインドの三大財閥の一角、Aditya Birla Groupの傘下のアルミ製造会社。

Hindalcoは2007年、世界最大手だった米Novelisを60億ドルで買収し、業容を一気に拡大した。

グループ生産能力(年370万トン)の9割を占めるNovelisの売り上げ構成はアルミ缶が61%、自動車が20%、特殊製品が19%。

Alerisは米国を中心に世界に13カ所の生産拠点を持ち、生産能力は年100万トン。自動車向けで米国と欧州、航空機向けはドイツと中国に拠点を持ち、世界の航空機大手と取引する。

Aleris の買収で全体の生産能力は年470万トンと現在より約3割高まり、2位以下を大きく引き離す。

Aleris買収でHindalcoの構成は、自動車が22%に高まり、ビルやトラック向け(8%)、航空機向け(4%)が加わる。

米アルミ大手Alcoa Inc.は2016年に、ボーキサイトやアルミナ、アルミニウムを生産する上流部門と高機能アルミニウム加工製品を製造する下流部門に分社化した。
前者はAlcoaの社名を継承、後者は社名をArconicとした。

Aleris は、Appollo Managementの子会社のOaktree Capital ManagementとSankaty Advisorsが運営する投資ファンドが出資する。

Alerisは、過去数年間に自動車などの事業に約900百万ドルを投資している。中国江蘇省鎮江の工場は、電気自動車 (EV) の需要拡大が見込まれる中国の自動車市場において、アルミシートサプライヤーとしての立場を強化している。また、米ケンタッキー州Lewisport工場では自動車向け投資拡大に着手した。ベルギーDuffelにある自動車工場の技術や製造に関する専門知識を活用する。

航空分野ではAlerisの顧客には米ボーイング、欧州エアバス、カナダのボンバルディアなど大手航空機メーカーが並ぶ。「MRJ」を開発中の三菱重工業とも取引がある。

HindalcoはAlerisの買収で自動車向けを強化し、航空分野への参入も果たす。北米を中心に欧州や中国でも生産拠点を拡充し、自動車、航空分野の需要を取り込む。


Hindalco は今後9~15カ月での買収完了を目指すとした。

買収後のHindalcoの連結売上高は210億ドル、従業員は4万人。生産能力は年470万トンと現在より約3割増える。


実はAlerisは2016年8月に中国のアルミ成形最大手の中国忠旺控股(China Zhongwang Holdings Ltd.)からの23.3億ドルの買収提案を受け入れた。

しかし、これに米国の連邦議員が反対を表明し、抗議が広がった。最終的に対米外国投資委員会がこれを認めず、両社は2017年11月に買収を取り止めた。

その後、Aleris を保有する投資ファンドは販売先を探していた。

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今回の司法省による反対の理由は以下の通り。

目的は、北米市場での自動車用圧延薄板市場での競争を維持すること。

自動車メーカーはより軽く、より燃料効率のよい大型車の需要を満たすため、ますますアルミのボディシートを必要としているが、買収により北米の4社しかないメーカーの2社が統合する。

競合するサプライヤーの減少は最終的に自動車の需要家を傷つける。

Aleris は "aggressive competitor" であるが、この買収で Novelis は国内の能力の60%を握ることとなる。


Novelis は、計画通り1月21日までの取引成立を目指すことに変わりないとしている。

同社は、司法省はアルミは鉄鋼と競合しており、市場はもっと大きいことを認識していないと述べた。自動車車体シート用では鉄鋼は90%のシェアを占めると主張している。

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本件については、欧州委員会も2019年3月、競争が減り、価格が上がることに懸念を示した。

これに対し、Noverisは本年8月、欧州委員会の懸念に対応した譲歩案を提出した。

内容は明らかにされていないが、欧州委員会はこれについての需要家等の反応をみて、10月7日に結論を出す。

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