英下院、離脱延期法案の審議へ、首相は総選挙を提案

| コメント(0)


英議会下院は9月3日、EUからの「合意なき離脱」を防ぐために離脱延期を政府に義務付ける法案の審議に入る動議を、野党などの賛成多数で可決した。

これを受け、ジョンソン首相は国民の信を問う解散総選挙の前倒しを提案した。

ーーー

ジョンソン首相は 8月28日、「合意なき離脱」の阻止を狙う英議会内の勢力を封じ込めるため、おきて破りの奇手に出た。

英国議会は7月26日から夏季休会で、次に議会が召集されるのは9月3日である。首相官邸は8月28日、ジョンソン首相がエリザベス女王に9月9日の週から約1カ月間の議会の一時閉会を要請したと発表した。閉会手続きには女王の許可が必要だが、女王はこれを許可し、次の再開日は10月14日となる。

10月14日に議会を再開しても10月17日にはEU首脳会議があり、議会は、議決や議論を行うための時間的余裕がないことになる。

2019/8/30 英ジョンソン政権、異例の議会封じ 

これに対し、労働党など野党は2日、合意なき離脱を阻止する法案をまとめた。
「10月19日までにEUと合意した離脱協定案を英議会で承認できない場合に、首相はEUに2020年1月31日までの離脱延期を求める」ことを柱に据えた。

ジョンソン首相は9月2日の声明で、10月末のEU離脱を阻もうとする「あらゆる動きを容認しない」と語った。そのうえで「ここ数週の間に、EUと離脱条件で合意できる可能性は高まっている」と強調。離脱延期を狙う野党の動きを「自ら英国の立場を弱め、さらなるEUとの交渉を不可能にする」と批判した。

EU側は一貫して、バックストップ条項が含まれる協定は再交渉しないと力説している。

ジョンソン相は8月21日、ベルリンでメルケル独首相と会談した。メルケル首相は、「バックストップ条項」について、30日以内に代替案を策定できるだろうとの見方を示したが、実現可能な計画を提案するのはイギリス次第だと釘を刺した。

これに対しジョンソン首相は、30日という「苛烈な締め切り」は「大歓迎」だと返答。計画策定の責任はイギリスにあることを受け入れた上で、新たな協定締結には「十分な余地がある」と前向きな姿勢を示した。

しかし、現時点で代替案の検討が進んでいる兆しはない。

英下院は3日、野党・労働党などが提出した離脱延期法案(10月19日までに新たな離脱案が通らなければ、離脱日を10月末から2020年1月末に延ばす)を審議入りする動議を賛成328票、反対301票の賛成多数で可決した。

英下院の総議席650のうち、投票するのは639で、与党(保守党と民主統一党)は320議席となり、僅か1票差での過半数であ ったが、9月3日、保守党の Phillip Lee 議員が自由民主党に鞍替えし、保守党は過半数を失った。

今回の動議には与党・保守党の21人が賛成に回った。

この法案は4日にも下院で採決する。ジョンソン首相は動議の成立後、同法案が下院を通過すれば国民の信を問う解散総選挙の前倒しを提案すると述べた。10月14日に選挙日を設定したと報じられた。

英国では議会任期固定法の規定で、解散には下院の3分の2の賛成が必要になる。

最大野党の労働党のコービン党首は2日の演説で「EU離脱問題の解決には総選挙が必要だ」と述べた が、2つの法案がどのように審議されるかなどは不明である。

ーーー

英下院の総議席650のうち、投票するのは639だが、与党(保守党と民主統一党)は320議席となり、僅か1票差での過半数であ った。

9月3日、保守党の Phillip Lee 議員が自由民主党に鞍替えし、保守党は過半数を失った。

議長と副議長(保守1、労働党2)は投票しない。北アイルランドのSinn Fein党(7人)は 女王に忠誠を誓うのを拒否し、議会をボイコット、歳費も受け取らない。

2019/9/3 投票なし 議決権
保守党 310 1 309
民主統一党 10 10
(与党) (320) (1) (319)
労働党 247 2 245
スコットランド国民党 35 35
自由民主党 14 14
独立党 11 11
独立グループ 5 5
シンフェイン党 7 7 0
ブライドカムリ 4 4
緑の党 1 1
社会民主労働党 0 0
アルスター統一党  0 0
Change UK 5 5
無所属 0  0
議長 1 1 0
合計 650 11 639

コメントする

月別 アーカイブ