WTO上級委、 日本製バルブの関税で韓国への是正勧告支持 

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世界貿易機関(WTO)の上級委員会は9月10日、韓国による日本製空気圧バルブに対する反ダンピング関税を巡り2018年4月に是正を勧告した紛争処理小委員会(パネル)の判断をおおむね支持すると発表した。

上級委の判断が最終判断となる。

世耕弘成経済産業相は、上級委が「日本の核となる主張」を認めたとの談話を発表。韓国に対し「日本企業に対する不当な措置」を停止するよう求め、韓国が勧告を履行しない場合には、日本にはWTO協定の手続きに従い対抗措置を発動する権利があると述べた 。

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韓国は2014年2月21日から日本製空気圧伝送用バルブに対するアンチダンピング課税調査を開始した。

これは、圧縮空気を利用して空圧シリンダーなどを伸縮・旋回等させるために、圧縮空気の流れ具合を制御するバルブで、半導体、自動車製造工場などの組立装置や搬送装置などに用いられる。

韓国は2015年1月20日に日本製空気圧伝送用バルブのダンピングによって韓国の国内産業が実質的な損害を受けている旨の最終決定を行い、2015年8月19日から課税を開始した。

11.66~22.77%のアンチダンピング税が賦課される。期間は5年間。
日本から韓国への輸出額は、年間約91億円(2017年)

これに対し日本政府は、損害や因果関係の認定、調査手続の瑕疵により、アンチダンピング協定に違反する可能性があると考え、2016年3月15日にWTO協定に基づく協議要請を行い、同年4月28日に韓国との協議を実施した。

2017年に紛争処理小委員会(口頭弁論)が開催され、2018年4月12日、WTOはパネル報告書を公表した。本件はアンチダンピング協定に違反すると認定し、韓国に対して措置をアンチダンピング協定に適合させるよう勧告した。

① 韓国による本件措置の決定は、ダンピング輸出による韓国国内産業への損害・因果関係の認定に瑕疵があり、アンチダンピング協定に整合しない。

② 本件措置は、手続面でも、秘密情報の取り扱いに不備があり、アンチダンピング協定に整合しない。

③ 但し、日本側が主張した調査手続きの不備などについては、日本の主張は認められないか、パネルの付託事項の範囲外であるとして、判断しなかった。

韓国政府は上訴、日本も、かかる一部の論点についてWTO上級委員会の判断を仰ぐべく、上訴の申し立てを行った。

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今回上級委は、日本製バルブは主に精度の高さが重視される半導体製造工程や自動車のエンジン製造工程で使用されているため、一般的に精度の高さが要求されない自動車の塗装工程などに使用されている韓国製バルブとは直接的に競合しないとの日本側の主張を受け入れ、韓国に対し反ダンピング関税措置をWTOの規定に適合させるよう勧告した。

調査手続きの不備の問題についても、上級審はパネルの判断回避は誤りと認定した。

① ダンピングによる損害を認定する前提として、日本製品の輸入が韓国産バルブの価格低下圧力をもたらしたのか、適切な説明がなく、アンチダンピング協定第3.1条及び第3.2条(ダンピング輸入による価格効果の立証)に違反する。

(ア)日本製バルブは韓国産より高価・高機能であり、そもそも両者の価格が比較可能かどうか、適切な説明がない。
(イ)韓国産より高価な日本製品の輸入が、元々安い韓国製品の価格にさらに低下圧力をもたらすことの説明が不十分。

② 本件措置は、秘密情報の取扱いに不備があり、アンチダンピング協定第6.5条及び第6.5.1条に整合しない。

③ 韓国が業界全体を調査せず、アンチダンピング調査を申請した2社のみのデータを「国内産業」と認定した点は、アンチダンピング協定第3.1条及び第4.1条に整合しない。

経産省は本件の意義を次のように述べている。

本件は、韓国の恣意的なアンチダンピング措置の是正を勧告したのみならず、新興国等に多く見られる保護主義的な貿易救済措置の濫用がWTO協定上容認されないことを明確にした点で意義があります。また、パネルによる一部論点の判断回避は誤りであったと明言した点も、信頼性の高い紛争解決制度の維持・改善を主張する我が国の立場に即したものです。


これに対し、
韓国政府は9月11日、「実質的な争点の大部分で協定違反と立証されなかった」との見解を表明した。そのうえで「既存の韓国の勝訴との判定は維持された」と強調している。

二審の上級委員会の判断では9つの実質的な争点のうち6つで一審での勝訴が維持されたと説明している。
日本製バルブによる韓国内の価格への影響立証に関しては韓国が協定違反と判断されたとしている。

輸入関税引き上げの是正を求められた点には触れておらず、今後の対応についても明らかにしていない。

付記

これについて、9月12日付の朝鮮日報は次の通り、分析している。

WTOの判定をめぐり、両国がいずれも勝利したと主張したのは、WTO判定の特殊性のせいだ。
WTO判定は有罪か無罪かを判断したり、両国のどちらが「正しい」と簡潔に判断したりはしない。
争点別に各国の主張を細分化し、どちらの主張が妥当なのかを検討する。

同日の判定も韓国は「WTOが13点の争点のうち10点について、韓国の立場を支持した」として、韓国の勝利と受け止めた。日本は「重要な一つの争点で勝訴し、実質的な勝利だ」との立場だ。

日本が勝利したと主張するのは、「日本製バルブがダンピングで国産バルブの価格を下落させたとする韓国側の分析に問題がある」とする日本側の主張が認められたからだ。WTOは一審で韓国を支持したが、今回は「韓国の分析方式は不適切だ」として、日本を支持した。

実際にこうした主張が認められ、関税が見直された例があるため、日本は重要な争点だと主張した。

しかし、専門家は関税を引き下げるかどうかはまだ推移を見守るべきだと主張する。韓国が論理を補強し、WTOを説得すれば、関税を見直さなくてもよいからだ。

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別途、韓国産業通商資源省は9月11日、日本の韓国に対する半導体材料の輸出管理厳格化措置は不当として、同日に世界貿易機関(WTO)に提訴すると発表した。

日本の輸出管理厳格化は「最高裁の強制徴用判決と関連した政治的動機で、わが国を狙った差別的な措置だ」と提訴理由を説明した。

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