米国、EUによる航空機大手エアバスへの補助金を巡り報復関税

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米国は10月2日、EUによる航空機大手エアバスへの補助金を巡り、EUに対する報復関税を10月18日にも発動する方針を表明した。

世界貿易機関(WTO)が同日、米国がEUに年最大75億ドル相当の報復関税を課すことを承認した。航空機に10%、その他の農産品や工業品に25%を上乗せする。

EUは「対抗措置は非生産的で、互いに関税をかけ合えば双方の企業と市民に打撃を与えるだけだ」との懸念を表明した。エアバスも同日、「関税は航空産業だけでなく、世界経済全体に不安と混乱を生じさせる」との声明を発表した。同社の調達の約4割は米国で、米国にもマイナス影響を与えると強調した。

WTO上級委員会は米国政府による米航空機大手ボーイングへの補助金提供はWTO協定に違反するとのEUの主張をおおむね認める判断を下し ている。
EUもWTOに対抗措置を申請し、承認を待っており、WTOの承認が出るのは2020年になる見通し 。

付記

WTOは12月2日、エアバスに補助金を拠出していないとしたEUの主張を退け、先に承認した米国の対EU報復関税を巡るEUの差し止め要請を認めなかった。エアバスのA380型機とA350型機に対する補助金が政府ローンという形で続いていると認定した。

これを受け、米通商代表部(USTR)は12月6日、追加関税の原案を固めた。航空機部品や農産品を加えるほか、発動済関税の税率を最大100%まで引き上げることなどを検討する。
原案によると、エアバスの製造を支援するフランス、ドイツ、英国、スペインの4カ国から輸入する航空機部品を追加、EU域内産の魚介、金属、時計なども加える。

来年1月13日まで企業などから意見を募った上で最終判断する。

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欧州エアバスと米ボーイングが絡む通商紛争で、世界貿易機関(WTO)の紛争処理手続きの最終審に当たる上級委員会は2018年5月15日、EUによるエアバスへの補助金がボーイングに損害を与えたとの判断を下した。

また、WTO上級委員会は2019年3月28日、米国政府による米航空機大手ボーイングへの補助金提供はWTO協定に違反するとのEUの主張をおおむね認める判断を下した。

WTOの判断をもとに、米国とEUは報復関税の応酬を行っている。

米国のUSTRは、EUの補助金により米国が毎年110億ドルの損害を被っていると試算 している。

USTRは4月8日、EUに対する追加関税措置の暫定リストを公表 (210億ドル相当)、大型商用機やその部品のほか、乳製品やワインを含む。
7月1日には追加で40億ドル相当の品目リスト(オリーブやイタリア産チーズ、スコッチウイスキーなどさまざまな食品や酒類)を発表した。

一方、EUは4月17日、米国に対する追加関税措置の200億ドル相当の暫定リストを公表した。
品目は500を超え、航空機に限らず、化学品から農水産・食品(冷凍食品、かんきつ類、ケチャップなどを含む)まで広範にわたる。

2019/7/4 米国、EU航空機補助金巡る報復関税対象追加 

WTOの紛争処理の手続きでは、対抗措置を取るには 紛争処理機関(DSB)に承認を得る必要がある。相手国が対抗措置に対して異論を申し出た場合はWTOが仲裁する形で、WTOが上限額を決める。

WTOによると、米国は年約105億ドルの報復関税の承認を求めていた。今回、WTOは米国とEUを仲裁する形で、対抗措置の上限額を決めた。WTOの仲裁で決めた金額としては過去最高となる。

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