米FCC、補助金を受けている米通信事業者に HuaweiとZTEの機器利用禁止 

| コメント(0)

米連邦通信委員会(FCC)は11月22日、政府の補助金を受けている米通信事業者に対し、中国通信機器大手の華為技術(Huawei)と中興通訊(ZTE)製の通信機器の利用を禁止する規制の導入を決めた。次世代通信規格「5G」のネットワーク整備が本格化するなか、トランプ政権は中国製品排除の動きを強めている。

FCCは地方や低所得者の通信料抑制のため通信事業者に支給する「ユニバーサル・サービス基金」の運用規則を改定 し、HuaweiとZTEを「安全保障上の脅威となる企業」に指定し、補助金を受け取る通信事業者に両社の機器やサービスの購入・利用を禁止する。 既存のHuaweiやZTEの機器は他の企業の機器への交換を行わせる。

米国では地方通信事業者の多くが割安な中国製通信機器を利用しており、試算では中国製機器の交換費用は総額約10億ドルに上る 。FCCや米議会は交換費用を補助する制度を検討している。

ユニバーサルサービス基金は、低所得者層や農村部、離島など採算が合わない地域でも、都市部と同等の費用でサービスを提供するなど、すべての消費者が平等に通信サービスを受けられるようにFCCが行っている補助金制度。

同基金は、州際・国際通信サービス提供事業者(長距離通信事業者、移動体通信事業者、衛星通信事業者、IP電話事業者等)による負担金によって維持され、ユニバーサル・サービス管理会社が管理・運用している。

同基金により、①高コスト地域支援、②低所得層支援、③学校・図書館支援、④ルーラル地域の医療機関支援の四つを柱とする支援プログラムが実施されている。

当初は固定電話サービスを補てんするために利用されてきたが、2010年初頭、同基金をブロードバンド・サービスの普及推進に充てる方針へと切り替えた。
10年間かけてユニバーサル・サービス基金によるブロードバンド・サービス支援を実現するとして、学校・図書館を支援するログラムのアップグレード、ルーラル地域の医療機関を支援するプログラムの改革とアップグレード、ブロードバンド未提供地域等を支援する「コネクト・アメリカ基金の創設、すべての州で一定水準以上の3G(又はそれ以上)サービスを利用可能とする「モビリティ基金」の創設が盛り込まれた。

2017年の基金総額は88.5億ドルで、うち高コスト支援が46.7億ドルとなっている。

ーーー

米国では議会が2012年頃から「Huawei と ZTEの通信機器が中国のスパイ活動に利用され、米国が開発した軍事技術が流出している」として米企業に2社の製品を使わないよう呼びかけを始めた。

2017年には国防総省による2社の製品調達を禁止する法律 (National Defense Authorization Bill ) が成立 した。

2018年5月に国防総省は世界中の米軍基地の携帯電話販売店で HuaweiとZTE製のスマホの販売を禁止した。


2018年8月13日には「2019年度米国防権限法」が成立した。

これは禁止を国防総省以外にも拡大するもので、禁止対象製品は次の通り。

(A) Huawei と ZTE製の通信機器

(B) 監視カメラ大手の杭州海康威視数字技術(HIKVISION )、浙江大華技術(Dahua Technology)、海能達通信(Hytera)製のセキュリティ用のビデオ監視・通信機器

(C) 国防長官が国家情報長官、FBI局長との協議で、中国政府の影響下またはつながりがあるとみなす企業の通信機器及びビデオ監視システムも同様の扱いとなる。

禁止は2段階に分かれる。

第1 段階(発効日の1年後=2019年8月13日以降)

  米政府機関(連邦政府、軍、独立行政組織、政府所有企業)が5社の製品や、5社が製造した部品を組み込む他社製品を調達することを禁止

第2段階(発効日の2年後=2020年8月13日以降)

  5社の製品を社内で利用している世界中の企業との取引を禁止
 (米政府機関に収めている製品・サービスが通信機器とは一切関係のない企業でも、5社の製品を使っておれば禁止)

2018/12/11 2019年度米国防権限法(NDAA2019) --- Huawei、ZTE等の米政府機関との取引からの排除

トランプ大統領は2019年5月15日、同国の安全保障にとってリスクのある外国企業の通信機器を米企業が使うことを禁止する大統領令に署名した。

外国の情報・通信技術 or サービスで、商務長官が関係閣僚と協議して下記に該当すると見做したものについて、米国で取得、輸入、移転、設置、取引することを禁止する。

米国の情報・通信技術 or サービスをサボタージュ又は破壊する不当なリスクがあるもの
米国の重要なインフラ、米国のデジタルエコノミーのセキュリティに壊滅的な不当なリスクを与えるもの
米国の安全保障、米国民の安全に受け入れがたいリスクを与えるもの

商務省が具体的な規制案を検討している。

付記

米商務省は11月26日、この米大統領令の運用規則案を発表した。

商務長官が他省庁と協力し、米国の通信網に過度なリスクを及ぼしたり、米国の安全保障が脅かされたりするような商取引を個別に特定する。米企業にまず取引をやめるよう通達し、従わない場合は罰金を科す。

標的とする国や企業の名指しを避けつつ、「外国の敵対勢力から米情報通信技術を守るため、どの取引を禁止するかについてケース・バイ・ケースで決定する」と表明した。
商務省は27日に運用規則案を官報で正式に通知し、30日間にわたり意見を募集する。例外措置の導入も視野に入れている。

米商務省は同日、華為技術(Huawei)に対する米国製ハイテク部品などの事実上の禁輸措置を発表した。

2019/5/16 米国、Huawei を対象に2施策


連邦通信委員会(FCC)の
Ajit Pai 委員長は、大統領令について、「アメリカの通信網の安全を確保する大きな前進だ」と歓迎する声明を発表した。

同委員長は2018年3月に、米通信ネットワークに安全保障上のリスクをもたらす企業からの機器・サービス購入に「ユニバーサルサービス基金」の資金を活用することを禁止する提案を行う意向を明らかにし、議会への書簡で懸念のある企業としてHuaweiに言及している。

委員長は2019年5月の議会公聴会で主張を繰り返した。

これに対しHuaweiは6月12日、携帯通信会社が政府の補助金を使ってHuawei製品を購入することを禁止する米政府の計画に反対を表明した。

Ajit Pai 委員長は10月28日、米国のネットワーク保護を目的に、ユニバーサルサービス基金からの補助金を受け取る通信事業者に対し、HuaweiやZTEなど国家安全保障上の脅威がある中国企業からの機器やサービス購入を禁止するとの提案を行った。

今回、委員会で採決を行った。

コメントする

月別 アーカイブ