日立製作所、子会社日立化成を昭和電工に売却へ 

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日立製作所はグループの中核子会社である化学大手、日立化成の売却を巡り、昭和電工に買収の優先交渉権を与えることを決めた。各紙が報じた。

日立製作所は、企業価値向上向上に向けて様々な検討は行っているが、本件も含め、現時点で決定した事実はないとしている。
昭和電工も、業価値向上を目的に日立化成の株式取得を含め、常にさまざまな検討を行っているが、現時点で決定した事実はないとしている。

日立化成は 半導体やリチウムイオン電池の材料などを幅広く手がけ、2019年3月期の売上高は6810億円。かつては日立金属や日立電線とともに「日立御三家」と呼ばれた。

日立化成は2013年1月1日に日立化成工業から改称。
日立電線は2013年7月1日に日立金属に吸収合併された。

付記

昭和電工は12月18日、日立化成を株式公開買い付け(TOB)により買収すると発表した。
TOB価格は1株4630円、買付代金は総額9640億円となる。
昭和電工は、今回の買収よって、5G、半導体、自動車電動化などに注目した7事業領域での成長を目指す、としている。
日立は所有する51.29%全てを譲渡する。譲渡金額は4,940億円。

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日立製作所は「選択と集中」を旗印に、成長分野と位置づけるエネルギーなどのインフラやIoT(モノのインターネット)事業に経営資源を集中させる方針で、日立化成との相乗効果は生み出しにくいと判断した 。

日立製作所は現在約800社のグループ会社を数年問で500社程度まで整理・統合する方針を掲げている。

非中核分野を次々に売却しており、2009年に22社あった上場子会社は日立化成 、日立金属、日立建機、日立ハイテクノロジーズの4社に減った。

子会社 時期 持株比率
日立物流 2016/5/19 59.01%→30.01% 株式の29%をSGホールディングスへ譲渡
日立キャピタル 2016/10 60.61%→33.40% 株式の23.01%を三菱UFJフィナンシャル、4.20%を三菱UFJリースに譲渡
日立国際電気 2017/1   4割超→ゼロ グループで保有する4割超をKKRに売却(配当金を合わせ752億円で)
KKRはTOBを実施、傘下のHKホールディングスの完全子会社とし、2018年に工機ホールディングスと改称。

KKRは日立国際電気の半導体製造装置事業を分離、2018/6にKokusai Electricを設立したが、
2019/7 これをApplied Materialsに22億ドルで売却した。

日立工機
(電動工具)
2017 
  
40.25%→ゼロ
KKRに売却(KKRがTOB)
日立アーバンインベストメントも 10.90%→ゼロ
クラリオン 2018/10 6割超→ゼロ 仏自動車部品大手フォルシアに譲渡、売却価額は899億円
日立オートモティブ
システムズ
2019/10 ホンダのケーヒン、ショーワ、日信工業と統合(下記)
日立製作所が66.6%、ホンダが33.4%

日立製作所、本田技研工業(ホンダ)、日立オートモティブシステムズ、ケーヒン、ショーワ、日信工業の6社は2019年10月30日、日立オートモティブシステムズ、ケーヒン、ショーワ、日信工業の4社の経営統合に関する基本契約を締結した。

CASE分野においてグローバルで競争力のあるソリューションの開発・提供を強化することが目的。経営統合は以下の流れを予定している。

(1)本田技研工業がケーヒン、ショーワ、日信工業の普通株式を対象として公開買付け。
(2)本田技研工業がケーヒン、ショーワ、日信工業を完全子会社化。
(3)日立オートモティブシステムズが、日立オートモティブシステムズを存続会社とし、ケーヒン、ショーワ、日信工業を消滅会社とする吸収合併を実施する。

統合後の新会社の持ち分比率は、ホンダ以外の自動車メーカーへ広く拡販するため日立製作所が66.6%、ホンダが33.4%となる。

日立オートモティブシステムズの ブリス・コッホCEOは「新会社はグローバルなメガサプライヤーとなる。電動パワートレイン、シャシーと自動運転やADASにおいて、規模の力と4社の人材を効率的に活用する」と自信を見せた。

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日立化成は東証1部上場会社で、日立製作所が51%の株式を保有する。

日立製作所は5月以降、日立化成を通じて買収を希望する企業を入札方式で国内外から募っていた。

当初、三井化学などの総合化学メーカーや米投資ファンドなどが名乗りを上げたが、買収額などで折り合わなかった。
2次入札で高値をつけた昭和電工が最終候補となった模様で、報道では、日立化成は11月25日の取締役会で昭和電工に優先交渉権を与えることを決め、日立製作所も同意した。

買収はTOB方式で実施する見通し。

昭和電工は日立製作所の保有分に加え、残りの49%も含めた日立化成の全株式を買い付けることも視野に入れる。

日立化成株の11月25日の終値は3465円で、時価総額は7,219億円。全株買い付けとなれば現在の株価にプレミアムを乗せ、買収額は9,000億円規模になる可能性がある。

日立化成は半導体の封止材料やリチウムイオン電池の負極材などで世界でも高いシェアを持つ。

昭和電工はハードディスクや製鉄用の黒鉛電極で世界トップシェアを持つ。
買収が実現すれば、昭和電工の売上高は単純合算で約1兆7000億円となり、同業の三井化学や信越化学工業を抜く。

日立化成の最近の業績(IFRS方式)は下記の通り。

単位:億円、配当は円

売上高

営業損益

税引前 
損益
株主帰属 損益

配当

中間 期末
16/3 5,465 530 537 385 25 25
17/3 5,541 532 544 402 25 30
18/3 6,692 462 489 363 30 30
19/3 6,810 364 405 287 30 30

20/3予

6,400 300 325 220 30 未定


セグメント別業績

機能材料 電子材料 半導体用材料
ディスプレイ・タッチパネル関連材料
太陽電池用材料
機能性フィルム
食品包装用ラップ
無機材料 カーボン製品・セラミックス
先端部品・システム 樹脂材料 樹脂材料
接着剤・テープ
電気絶縁材料
配線板材料 基板材料
プロセス材料
その他機能材料 LEDリフレクター用白色モールド樹脂
レジンコーテッドサンド


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