イスラエル、ギリシャ、キプロスの3国は1月2日、EastMed gas pipeline 建設計画の契約に署名した。イタリアが署名をすれば有効となる。
EastMedラインは、EUのエネルギー不足を補うため、代替ガス源を提供する目的で計画されたもので、東地中海で近接するキプロスのAphroditeガス田、イスラエルのLeviathanガス田の天然ガスをヨーロッパに送る1,900キロメートルのパイプラインである。
Leviathanガス田をスタートし、キプロスのコンプレッサーステーションを経由、ギリシャのクレタ島に上陸、その後、ギリシャのペロポネス半島を経由してギリシャ西岸のThesprotiaに到着する。
その後は、計画中のPoseidon pipelineを使い、イタリアにつなぐ。能力は年間100億立方メーター。
建設コストは70億ドルで、7年かかるとされる。開発はギリシャのガス会社のDEPAとイタリアのEdisonの50/50JVのIGI Poseidon S.A. が担当する。
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イスラエル、ギリシャ、キプロスとエジプト、ヨルダン、パレスチナ、イタリアの7カ国・地域は2019年1月に「東地中海ガスフォーラム」を創設した。
本年1月16日に開いた閣僚級会議では、イスラエルとエジプトのLNG欧州輸出計画や、イスラエル沖から欧州に向けたパイプライン計画を踏まえ、さらに協力を進める方針を確認した。
既報の通り、この地域ではキプロスとトルコが争っている。
天然ガスの発見で、トルコはトルコ系住民の住む北キプロス・トルコ共和国も権利を持つとし、南北で大陸棚での探査について協定を結ぶことを要求したが、キプロスはこれを無視した。
キプロス政府はENIやExxonMobil、Shellなどに採掘権を与えた。
これに対し、トルコが排他的経済水域を設定し、探索のための掘削を始めた。
トルコは2019年5月中旬、100隻以上の軍艦を投入して、同島の近隣で大規模な海上演習を実施した。さらにエルドアン大統領は6月、「地中海東部でのトルコと北キプロスの権利を守る」と宣言。資源をめぐる対立は複雑化している。
欧州連合(EU)は2019年7月15日、度重なる警告にもかかわらずキプロス沖でガス採掘を実施しているトルコに対し、対抗措置を取ることを決めた。
2019/7/18 EU、キプロス沖でのガス採掘めぐりトルコに対抗措置
トルコは、トルコ国内経由で欧州につながるTrans-Anatolian gas pipeline(TANAP)があるため、欧州への新しいパイプラインは不要であるとしており、東地中海でトルコとトルコ系キプロスの権利を無視するどんな計画も失敗すると警告した。
トルコの排他的経済水域が支障となるが、これに加え、トルコとリビアは2019年11月に地中海の境界を決める協定を結んだ。
トルコのエルドアン大統領は演説で「トルコとリビアの承諾がないまま、両国間の海域で採掘したり、パイプラインを通したりすることは不可能になった」とけん制した。
イスラエルはトルコと話し合う考えはあるとしている。
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エジプトとヨルダンに対してはすでにあるパイプラインを通じてイスラエル産ガスを供給し冷え込んだ関係の改善を図ろうとしてい る。
イスラエルは1月15日、沖合で採掘したガスをパイプラインでエジプトに供給し始めた。
イスラエル海域のLeviathan ガス田とTamarガス田のパートナーはエジプトのDolphinus Holdingsに約200億ドルの天然ガス供給の契約を締結した。
米国の Noble Energy とイスラエルの Delek Drilling は両ガス田の主要オーナーであるが、Egyptian East Gas Co と組んでEMEDというベンチャーを設立し、EMG海底パイプラインの権益の39%を520百万ドルで取得した。
イスラエルからエジプトへの最初の天然ガス輸出となる。
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