カナダ、Huawei 孟晩舟・副会長の審理開始

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2018年12月にカナダで逮捕された中国通信機器大手、華為技術の孟晩舟・副会長兼最高財務責任者(CFO)の米国への身柄引き渡しの可否を判断する審理が1月20日に始ま った。

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カナダ司法省は2018年12月1日、中国の通信機器最大手、華為技術(Huawei Technologies)の創業者 任正非(Ren Zhengfei)の娘である孟晩舟(Meng Wanzhou)副会長 兼 最高財務責任者(CFO)をバンクーバーで逮捕した。

米司法省は、イランへの輸出に対する米国の制裁にもかかわらず、華為技術が同国に製品を販売したかどうかについて捜査を始めていた。 8月22日に孟氏の逮捕状を取り、11月29日に孟氏がバンクーバーに立ち寄ることを把握し、犯罪人引渡協定に基づき、カナダに逮捕と身柄引き渡しを求めていた。

2018/12/10 華為技術(Huawei Technologies )の副会長の逮捕

孟氏の弁護団は米側の政治的な意図に基づいた不当な訴追だとして無罪を主張した。

カナダの裁判所は12月11日、同氏の保釈を認める決定を下した。

条件として1000万カナダドル(約8億5千万円)の保釈金を支払 い、GPS(全地球測位システム)付きの追跡装置を身につける。夜間の外出は禁じられ、パスポートは押収される。

米司法省は2019年1月28日、Huawei と孟晩舟 Huawei副会長を起訴した。

司法省の起訴はは2つの案件で行われたが、孟晩舟については、 イランとの取引関係における銀行詐欺と通信詐欺である。

米国の法律および規制では制裁対象国であるイランに関連した米国を通じた米ドル建て決済を含む銀行サービスを禁じており、一般的に金融機関は米国の法律や規制を遵守するために、イラン事業に関係がないことを確認する。IEEPA(International Emergency Economic Power Act :国際緊急経済権限法)により、イランは金融制裁の対象となっている。

華為技術はイランとの取引を香港のSkycom Techを通して行っていたが、米ドルの決済は米国の銀行を通して行っている。

実際にはSkycomは華為技術の子会社で、イランに事務所を有している。このため、取引は 華為技術によるイランとの取引であり、本来なら米国の銀行は取引ができない。

華為技術 および孟晩舟がイラン事業に関して米国の金融機関および米国政府を長期的に欺いたことを訴えの対象とした。

米国は孟副会長の引き渡しを正式に要請し、カナダ司法省は受理した。

2019/2/1 米司法省、Huawei を起訴 

孟被告は2019年3月1日、ブリティッシュ・コロンビア上級裁判所に提出した訴状で、カナダ政府と王立カナダ騎馬警察(RCMP)、カナダ入国管理局(CBSA)による公民権侵害を訴えた。

RCMPに逮捕される前、CBSAが不当な主張を根拠に自分を拘束し、所持品を調べ尋問した 。

当局はその場で孟副会長を逮捕し、カナダ人権憲章に基づく権利を侵害した 。

勾留は「違法」で「恣意的」なもので、当局は勾留の理由や弁護士を呼ぶ権利、黙秘権を意図的に教えなかった 。

カナダ政府は3月1日、米国への身柄引き渡しに関する審理を認めると明らかにした。

カナダと米国の犯罪人引き渡し条約に基づき検討した結果、「手続きを進めるための要件は満たされており、十分な証拠があると確信した」としている。

一般に、引渡し請求の対象となる行為は双方の国において重大犯罪とされていなければならないという「双方可罰性の原則」がある。また、基本的に他国からの引き渡し請求に応じる義務はない。

カナダの法律では同国の法律で違法とみなされない限り、身柄を他国に引き渡すことを禁じている。

カナダの前駐中国大使はイラン制裁違反に関して「カナダはイラン制裁措置に署名していない」としており、犯罪人引渡条約の対象にならない可能性がある。 しかし、カナダ当局は、カナダでも詐欺罪に該当すると主張している。


孟晩舟被告の米国への身柄引き渡しを巡る予備審理は、2019年3月、5月、9月に行われた。

Huawieは2019年5月9日、ステートメントを出した。

第1に、孟に対する嫌疑は事実に基づいていない。孟の事業活動が銀行職員もすべてを把握するなかでオープンかつ透明性を保って行われていた。

第2に、孟の公民権が繰り返し侵害された。

第3に、孟への嫌疑はカナダでは犯罪ではない。カナダはイランに関連した金融サービスについては制裁を行って おらず、引渡し請求は双方可罰性を満たしていない。

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中国政府は、孟被告が昨年12月に居逮捕されたわずか9日後、カナダ人2人を拘束した。
元外交官で独立系シンクタンク「国際危機グループ」に勤めていたMichael Kovrig と、中国を拠点とする実業家で北朝鮮旅行の手配をしていたMichael Spavor で、2019年5月に正式に逮捕された。

Michael Kovrigが非営利のシンクタンク、国際危機グループのために働きながら、スパイ活動と国家機密窃盗に関与し、中国の法律に「著しく違反」したとし、北朝鮮旅行の事業を手掛けるMichael SpavorはMichael Kovrigの主な協力者で、情報が渡されていたとする。

報道では、拘束されて1年になるが、2人は弁護士をつけることもできず、家族に面会できない状態が続いている。

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1月20日に始まる審理では、米国の起訴内容がカナダの法律上でも違法とみなされるかどうかが争点となる。

引渡し請求の対象となる行為は双方の国において重大犯罪とされていなければならないという「双方可罰性の原則」があり、カナダの法律では同国の法律で違法とみなされない限り、身柄を他国に引き渡すことを禁じている。

米国の法律および規制では制裁対象国であるイランに関連した米国を通じた米ドル建て決済を含む銀行サービスを禁じており、これの違反が問題とされた。

上記の通り、カナダの前駐中国大使はイラン制裁違反に関して「カナダはイラン制裁措置に署名していない」としており、カナダの法律では違反にはならないと見られている。

逮捕時の手続きが適切だったかどうかも焦点にな る。

カナダでは逮捕や拘束する際、逮捕の理由や弁護士を呼ぶ権利について説明を受ける権利が法律で定められている が、孟氏側はそういった説明なしに拘束され、人権が侵害されたと主張している。

報道によると、審理は23日ごろまで続き、裁判所の判断は後日示される。

双罰性が認められれば、6月に逮捕手続きの正当性の審理に移る。
双罰性が認められない場合、カナダ当局は上訴できるが、孟氏はカナダ国外に出ることが可能になる。

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