富士フィルム、Xeroxとの提携解消へ

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富士ゼロックスはXeroxとの間でアジアで「ゼロックス」ブランドで製品を販売する契約を締結している。技術/ブランドライセンスや販売テリトリーなどを規定した「Technology Agreement」で、5年ごとに更新してきており、現契約期間は2021年3月31日に満了する。

富士ゼロックスは1月6日、この契約を現行の契約期間満了日の2021年3月31日をもって終了することを決定し、Xeroxに通知したと発表した。

2021年4月以降は、富士ゼロックスは「Xerox」ブランドを使えないが、毎年100億円強のブランド使用料などは不要となる。

両社はこれまでテリトリーを棲み分けしているが、今後は富士ゼロックスは欧米でも製品を販売できる代わりに、Xeroxもアジアでの販売が可能となる。
事務機器市場が縮小するなかで、アジア太平洋市場は成長が続いている唯一の成長市場である。

Xeroxの大株主のCarl Icahn とDeasonは2018年2月20日、Xeroxの株主に対し「競合他社との合併や身売り」や「買収ファンドへの身売り」を提案する書簡を公開したが、その中で、「契約上、Xeroxは2020年に契約を終息するプロセスを始める権利を持つ。その場合、Xeroxは世界で唯一の成長市場であるアジア太平洋市場でXerox商標で事業ができる」と述べている。

2018/2/22 ゼロックス大株主、富士フイルム以外への身売り提案

富士ゼロックスは1月6日の取締役会で商号変更の決議を行った。社名から「ゼロックス」を外すためのもの。

新商号:富士フイルム ビジネスイノベーション(FUJIFILM Business Innovation Corp.)
変更日:2021年4月1日

富士ゼロックスはXeroxから請け負っているOEMについては、「技術契約」終了後も継続する。

富士フイルムホールディングスは2019年11月5日、Xerox が保有する富士ゼロックスの株式の全てを取得する契約を締結したと発表したが、そのなかに、富士ゼロックスによる Xeroxへの5年間の製品供給の継続という項目がある。

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富士フイルムは2018年1月にXerox買収を発表した。

富士フィルムが持つ富士ゼロックスの株式(75%)を61.8億ドル(6710億円)と評価し、これを Xerox に渡す見返りにXerox株の50.1%を取得する。
Xerox株主はXeroxの株式100%の代わりに、Xeroxの49.9%と特別配当25億ドルを受け取る。

しかし、Xeroxの大株主がこの取引に反対、Xeroxが同年5月に富士フイルムと結んだ買収契約を一方的に破棄した。

その後、事態は進展せず、2019年11月に、富士フィルムは米Xeroxの買収を断念し、富士ゼロックスのXerox持分を買い取り、100%子会社とすることを決めた。

2019/11/6 富士フイルム、米 Xeroxの買収断念


事務機器市場が縮小するなかで、アジア太平洋市場は成長が続いている。

上記の通り、Carl Icahn とDeasonは「契約上、Xeroxは2020年に契約を終息するプロセスを始める権利を持つ。その場合、Xeroxは世界で唯一の成長市場であるアジア太平洋市場でXerox商標で事業ができる」と述べている

恐らく、Xerox側から契約終息を持ち出すと思われたが、先手を打って富士フィルム側から通告した。


富士フィルム側も欧米市場で販売できることになるが、これは新規進出である。

これに対し、 アジア太平洋市場では、Xeroxは既に確立されているXeroxブランドで販売することになり、逆に、富士フィルム側は新しいブランドで再出発することになる。

欧米でも、アジア太平洋市場でも、XeroxによるXeroxブランドとの対比で、富士フィルムの技術、富士フィルムの新ブランドが需要家にどう受け取られるかがキイとなる。競合企業には「ゼロックスのブランドがなければ、成長はかなり難しいだろう」とみる向きもある。

また富士フィルムは富士ゼロックスのXerox持分(25%)を22億ドルで買収したが、Xeroxブランドを放棄するなら、もっと安く買う交渉をすべきでなかったのだろうか。

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Xeroxは2019年11月、米パソコン大手HP Inc. に対して買収提案を行った。現金と株式交換の組み合わせによる買収で、買収額は330億ドルとされる。

HP Inc. は11月17日、「評価が低すぎる」として買収提案を拒否したと発表した。条件次第で交渉に含みを残している。

Xeroxは11月21日、買収提案を拒否した HP に対し、買収の前提となる資産査定を25日までに受け入れるよう求めた。応じない場合は「株主に直接持ちかける」とし、敵対的買収も辞さない構え 。

2019/11/11 Xerox、HPに買収提案

それに対し、HPの取締役会は、実質的にXeroxの財務状態は自社よりもはるかに規模の大きな企業を買収できるほど余裕のある状況ではないなどと指摘する書簡を返した。

これを受けてXeroxは、CEOが一部のHPの株主と会い、買収案の要点について説明を行っていることを明らかにした。Xeroxによれば、合併によってキャッシュフローが増加するため、負債は削減され、株主の資本収益が増加し、イノベーション投資の拡大が促されると想定されるという。

今回の富士フィルム側の決断で、世界で唯一の成長市場であるアジア太平洋市場でXerox商標で事業ができることになるが、これはXeroxにとって非常に有利な交渉材料となる。

XeroxとHPの合併(どちらが買収するかは別として)がまとまる可能性もある。

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