米国国際貿易委員会 、SK InnovationによるLG Chemのリチウムイオン電池技術盗用を認める仮決定

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LG Chemは2019年4月30日に、SK Innovationがリチウムイオン電池技術を盗用したとし、米国
国際貿易委員会(USITC)に提訴したと発表した。

ITCは2019年5月29日に調査開始を決定、その後調査を行ってきたが、ITCは2月14日、SK Innovation敗訴の仮決定(Default Judgment)を下した。SK Innovationが「組織的かつ広範囲に証拠を隠滅した」とした。

SK Innovation は3月3日、これに対して異議を申し立てた。ITCは異議を受け付けるかどうかを4月17日までに決める。異議を受け付ける場合、10月5日までにSK Innovationが米国関税法337条に違反しているかどうか、違反の場合は米国への輸入を禁止するかどうかを決める。

ITCは3月20日、LG Chem、SK Innovationの電気自動車バッテリーの技術流出に関する仮決定の内容を公表した。

「SK InnovationはLG Chemの元社員から陽極材料、陰極材料関連の詳細なレシピ情報を盗み出した」、「L社(LG Chem)から取得した資料を他の場所に全て移動し、電子メールを全て削除するよう指示した」などとしている。

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LG Chemは2019年4月30日、SK InnovationがLG技術者を採用することにより、リチウムイオン電池技術を盗用したとし、LGの米国子会社と共同で、米国国際貿易委員会(USITC)とDelawareの連邦地裁に提訴したと発表した。

米国の関税法337条は、米国への輸入における不公正な行為により米国産業に被害が生じる恐れがあるときに、輸入品の排除、不公正行為の差し止めをITCが判断し、命令を発する権限を規定している。特許侵害は典型的な不公正行為にあたる。

LG ChemはUSITCに対し、LGの企業秘密を侵害するリチウムイオン電池のサンプルと基盤技術を米国に輸入するのを止めるよう求めた。SK Innovationが米国に建設している電気自動車バッテリー工場(下記)への技術や部品の輸入の停止を求める。

LGの主張:

SK Innovationは、LGのリチウムイオン電池部門の77人の高度の技術と経験を持つ従業員を雇用し、LGの企業秘密を取得した。

この技術はLGが世界で初めて商業用に開発した自動車用のパウチ型リチウムイオン電池で、世界中の自動車メーカー、家電メーカーに採用されている。

77人のなかには、最新型の電池を含むリチウムイオン電池のR&D、製造・組み立て、品質保証テストを担当する数十人のエンジニアを含んでいる。

その多くが、SKがパウチ型リチウムイオン電池の開発、製造をするのに役立てるべく、LGの企業秘密を盗んだ。

社内調査の結果、彼らはLGの秘密を盗み、それをSKに提供することで採用してもらっている。SKへの入社のための申請書や履歴書がLGのコンピュータに残っている。例えば、一人は電極製造プロセスに関する秘密情報をSKへの履歴書のなかに挿入していた。何人かはSKへの転職の前にLGのデータサーバーから400~1900件の技術資料をダウンロードしていた。

77人の転職が始まった2016年末から本年初めまでに、SKのEV電池の契約数量は14倍以上に増えている。

LGは以前に、韓国での同様のケースでSKに移動した5人の元従業員を競業禁止条項違反で訴えている。韓国最高裁は、LGの秘密情報が洩れる恐れが実際にあるとして競業禁止条項の発動を認めている。それにもかかわらず、SKは今に至るまでLG従業員を勧誘している。

これに対し、SKは「自然な転職だったにすぎず、技術を盗んだことはない」と反発した。

米国ITCは5月29日、調査開始(discovery)を決定した。

2019/5/7 LG Chem、リチウムイオン電池技術の盗用で米国で SK Innovationを提訴 

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決定文には、2018年にLGからSKに移籍した社員がSK社員に送った電子メールが証拠資料として示されている。

「これが唯一自分が持ち出した整理資料」と題する電子メールにはLG Chemが保有する「バッテリーのレシピ」に関するファイルが添付されていた。

バッテリーのレシピとは陽極材料を製造するためにニッケル、コバルト、マンガンなどを調合する比率、陽極材料と陰極材料を薄くコーティングする方法、それを一定のサイズに切断する方法などバッテリー製造に必要な「秘訣」が網羅されていた。
ファイルに含まれていた「レシピ」は57件に達した。

電子メールには「自動車モデル別情報」というファイルも含まれていた。
電気自動車を生産する場合、モデル別にそれに合わせたバッテリーを開発しなければならないため、そうした情報も機密に属する。
LG Chem関係者は「今回の訴訟過程でSK Innovationが3万4000件に達するファイルや電子メールを削除したことが判明しており、流出した情報量は推定困難な水準と推定される」と指摘した。

SKはLG出身者を経験者として採用するために面接を行い、そこで得た情報も不正流用していた。

陽極材料と陰極材料を生産するため、固体混合物を溶かし、液状の状態にする泥漿(スラリー)製造法、陽極材料・陰極材料のコーティング速度調整法などの工程技術 で、SKは応募者が面接用に提出したパワーポイントのファイルを社内で共有し、「短期間にL社(LG Chem)の電極工程ノウハウを吸収可能」「競合社のミキシング技術に対する多量の情報を得られるとみられる」などと評していた。

ITCはSKによる証拠隠滅についても詳細に記述した。

SKは2017年12月、LGが大田地裁に自社の社員の国内転職禁止を求める仮処分を申し立てると、本格的に証拠隠滅を開始した。

2018年には「チームルームに存在するL社関連資料、競合社との比較資料、L社から取得した資料などを他の場所に移動させ、電子メールを削除するように」と指示した。

2019年4月12日にはLG Chem関連の削除対象ファイル980件を整理したリストまで作成した。

このリストを作成したLG Chemの元社員がリストを削除した後、「ごみ箱」を削除せずに、パソコンに保存されたファイルをITCに証拠として提出したことで発覚した。

ITCは「SK Innovationの証拠隠滅がLG Chemの訴訟進行に被害を与えたのはもちろん、判事が公正かつ効率的な裁判を進める上でも足かせになった」と指摘した。

ITCは「こうした状況からみて、適法な法的制裁は早期の(SK)敗訴判決しかない (Contrary to SKI's suggestion, default is the only appropriate remedy here.)」とする結論を下した。

これについて、SK Innovation関係者は「先月の早期敗訴判決の際に表明したように、円満な解決のために努力するという立場で何も変わってはいない」と述べた。

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ITCの最終決定は今年10月5日までに下される予定。

最終決定では関税法337条(知識財産権侵害)に違反しているかどうか、SK製品の米国への輸入禁止措置などに関する判断が下される。

ただ、双方が和解した場合にはその時点で訴訟が終了する。

SK Innovationは2019年3月から米ジョージア州に電気自動車バッテリー工場を建設している。双方が和解できないまま、ITCの最終決定が下されれば、2022年からフォルクスワーゲンの米国工場にバッテリーを供給するとしていた計画にも支障が生じかねない 。

SK Innovationは2018年11月26日、米ジョージア州Commerce市に1兆1396億ウォン(約1140億円)を投資して、電気自動車用バッテリー工場を建設することを明らかにした。

韓国企業が米現地に電気自動車用バッテリー工場を建設するのは、2012年に完成したLG Chemのミシガン州ホランド工場に次いで今回が2度目となる。


SK Innovationは、LG Chemと同様、
米国と中国と極東、そして欧州というEVマーケットのシェア9割を占める地域をカバーする。

北米でVolkswagenグループへの供給が決まっている。

2018/12/4 SK Innovation、米に電気自動車バッテリー工場を建設、LG & Samsung も各地で増設 

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