米与野党、2兆ドルを超える緊急景気浮揚予算案で合意

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トランプ米政権と与野党の議会指導部は3月25日未明、新型コロナウイルス対策として2兆ドル規模の景気刺激策で最終合意した。25日中にも上下両院で可決し、早期成立を目指す。

Larry Kudlow 国家経済会議(NEC)委員長は、政府からの資金拠出を通じた連邦準備制度理事会(FRB)による企業などへの資金供給が4兆ドルになると説明。経済対策効果は財政支出分を含め「総額で6兆ドル」と述べた。

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トランプ政権がCOVID-19 への対応のために打ち出した本格的な景気浮揚策は当初、議会の反対で行き詰まった。

トランプ政権は当初、景気刺激策の規模を1兆ドルと想定していたが、医療現場の資金支援策などを積み増して、財政支出だけで1.6兆~1.8兆ドルになり、米連邦準備理事会(FRB)の追加策を加えれば2兆ドルを超える。

民主党も経済対策の規模には賛同するが、企業救済策が選挙戦に利用されかねないと強く警戒し、「何の責任も負わない大規模な企業救済」と批判した。

米国史上最大規模の緊急景気浮揚予算案は、3月22日(日曜)に上院で討論終結(Cloture)議案が否決され、投票に至らなかった。

  共和党 民主党 民主系
無所属
合計
賛成 47 47
反対 1 45 1 47
棄権 5 1 6
合計 53 45 2 100

翌3月23日、再度投票が行われたが、同じく否決された。

  共和党 民主党 民主系
無所属
合計
賛成 48 1 49
反対 44 2 46
棄権 5 5
合計 53 45 2 100



フィリバスターを避けるため、3/5以上(60人以上)の賛成が必要であるが、共和党が53議席を持つにもかかわらず、過半数にも至らなかった。

共和党の5人が棄権したが、共和党上院議員1人がコロナウイルステストで陽性となって棄権し、他の4人も感染を懸念して自宅隔離し、棄権した。

さらなる感染拡大が懸念されており、共和党があと2人欠席すると、野党47、与党46となり、上下院ともに野党多数となりかねない。

報道によると、総額2兆ドルにもなるこの法案の内容は下記の通り。

 ・個人に1200ドル(夫婦に2400ドル、子供一人に500ドルずつ)の現金支払い(年収75000ドル以上の場合は減額)
 ・中小企業の、レイオフ回避、給与支払い補助のための3500億ドルの基金

付記 4月4日の受け付け開始から中小企業の利用申請が殺到。4月16日に早くも上限に達した。

 ・被害を受けた産業へのローン、保証、投資のため財務省が5000億ドルを用意
 ・ローンを受けた企業は、その期間は自社株の買戻しを禁止、その企業で425千ドル以上の給与を受ける役員等は次の2年間昇給無し
 ・保険業者は追加コストなしでコロナウイルス予防サービスを対象に加える。
 ・雇用維持の税額控除
 ・ヘルスケア補助に2400億ドル、病院補助に750億ドル、退職軍人のヘルスケアに200億ドル、緊急公共輸送に200億ドル、
  空港救済に100億ドル、CDC補助 45億ドル、航空会社補助のローンに500億ドル、貨物航空補助に80億ドル、
  国防維持に必要な事業(不特定)の補助に170億ドル
 ・失業保険強化(各州の規定に加え、最長4カ月、週600ドルを加算)

野党民主党は、特に以下の点で反対している。

 ・被害を受けた産業への支援の5000億ドルは、対象や目的などの規定がなく、財務省の裁量に任されている。
  民主党はこれを従業員に向けるような規定を求めている。
 ・病院や、必要な人工呼吸器・マスクなどへの支援の増加が必要。

トランプ大統領は3月23日、「これ以上の党派のゲームは避けるべきだ 。政治的な目的ではなくアメリカ国民のニーズに正面から向き合うべきだ」」と述べ、早期の法案の成立を求めた。

そのうえで「私たちは労働者を迅速に救う。規模の大小を問わず、アメリカ企業を救う」と述べ、民主党の意見を取り入れることを示唆し、早期の法案の成立を求めた。

トランプ大統領は3月24日、ツイッターで議会を批判した。

Congress must approve the deal, without all of the nonsense, today.
The longer it takes, the harder it will be to start up our economy. Our workers will be hurt!


民主党のペロシ下院議長3月23日、新型コロナウイルス対策として2兆5000億ドル規模の景気刺激のための法案を公表した。この日、再度阻止された上院共和党の景気対策法案を巡る交渉を方向づける狙いがある。

金融機関は住宅ローンや自動車ローン、クレジットカードの支払いを一時的に猶予するよう義務付けられる。
また、借り手が住宅ローンの支払いを最長360日停止できるよう、連邦準備制度に対し債権回収会社への流動性供給を命じる条項も盛り込まれた。

さらに公共住宅の住民は家賃の支払いを一時的に猶予され、学資ローンの借り手は債務1万ドルが免除されるとしている。 

消費者ローンでの消費者に不利になる信用レポートは停止され、差し押さえや立ち退きは禁止される。

ペロシ下院議長は3月24日、「大きな進展があった」と述べた。政権や与党共和党と続ける協議で近く合意できる可能性があるとの見方を示した。

最終的に与野党協議で、政府案の5千億ドルの企業支援策について、(1)経営者の報酬増に使わない、(2)自社株買いにあてない、(3)使途は議会が監視する――などの条件で合意した模様。


付記

上院は3月25日夜11時、この法案を出席者全員賛成で可決した。下院に回す。

  共和党 民主党 民主系
無所属
合計
賛成 49 45 2 96
反対
棄権 4 4
合計 53 45 2 100

3月23日にコロナで棄権した共和党の5人(陽性が1人、隔離が4人)のうち、2人が出席、他に1人が病気で欠席した。

下院は3月27日、発声投票による採決を実施し、ほぼ全会一致で可決した。トランプ大統領が直ちに署名し、法案は成立した。
下院議員2名がコロナ陽性と判明、少なくとも36名が自宅隔離となっており、投票による採決を避けた。

付記

トランプ米政権と連邦議会は4月7日、新型コロナウイルス対策予算(2兆ドル)に盛り込んだ中小企業への資金支援を最大で2500億ドル増額する検討に入った。

中小企業の給与支払いを連邦政府が肩代わりする仕組みで、3500億ドルの融資枠に申し込みが殺到している。

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トランプ大統領は3月6日、議会上下両院が可決した新型コロナウイルス対策用の83億ドルの緊急補正予算法に署名し、同法が成立した。

トランプ政権は2月24日、議会に対して最低25億ドルの緊急予算を要求したが、議会民主党は不十分と批判していた。 今回の予算法案は下院で415対2、上院でも96対1の圧倒的な賛成多数で可決された。

可決された83億ドルの予算のうち、ワクチンなどの研究・開発費用(30億ドル以上)、連邦・州・自治体の公共衛生機関への財政支援(22億ドル)などが含まれる。
ビジネス支援に関しては、10億ドルを新型コロナウイルス拡大により資金的損害を受けた中小企業などへの低利融資に充てるとしている。
また、4億3,500万ドルを外国の医療機関への支援として計上している。

トランプ米国大統領は3月18日、議会が可決した第2弾の新型コロナウイルス対策法案(「家族第一・コロナウイルス対応法」)に署名し、同法が成立した。


第2弾の対策法では、個人への支援が主となっており、新型コロナウイルスの検査無償化や、従業員がウイルスの影響で休暇を取得せざるを得ない場合の所得保証などが盛り込まれている。

新型コロナウイルスの検査無償化については、無保険者向けの公的プログラムに資金を拠出するとともに、民間医療保険に被保険者の検査費負担を無料にすることを義務付けている。

コロナウイルスの影響で出勤できない従業員への雇用の保証や有休疾病休暇の与え方、給与の支払い額、休業した従業員に支払った給与の税控除などについて定めている。

このほか、低所得者向けの食料補助プログラムや、失業保険拡充のための各州への財政支援などが含まれている。

法律成立から15日以内に有効となり、20201231日に失効する。

今回の法案は、これに次ぐ本格的な対策である。

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