OPECプラス、一旦原油減産を決めるが、メキシコの拒否で合意できず

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石油輸出国機構(OPEC)と、ロシアなど非加盟の主要産油国で構成する「OPECプラス」は4月9日に開いた9時間にわたる緊急のテレビ会議で、5月から日量1000万バレルを協調して減産することを決めたと報じられた。

減産合意内容は下記の通り。

2020/5~6 1000万bpd
2020/7~12 800万bpd
2021/1~2022/4 600万bpd


5~6月についてはOPECを主導するサウジアラビアと非加盟産油国の代表格であるロシアが250万バレルずつ引き受け、生産量をそれぞれ日量 850万バレルに落とす。
他のメンバーは23%カットするというもの。

日量 1000万バレルの減産は世界の供給の約10%に相当する。2020年3月末までの減産取り決めでは、サウジの自主減産40万バレルを入れて OPECプラス合計で210万バレル(サウジが89万バレル、ロシアが30万バレル)で、それに比べると非常に多く、過去最大の減産である。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済活動の落ち込みによる需要の減少は日量2000万バレルを超えるとみられており、需要の喪失分にははるかに及ばない。

OPECプラスは、米国やカナダ、ノルウェーなど枠組みに参加していない産油国については、4月10日に開かれる主要20カ国・地域(G20)エネルギー相会合で減産への協力を取り付けることを目指すと見られた。日量500万バレル削減を求めるとされた。

ノルウェーやカナダは減産に前向きとされるが、米国は需要減によって自然に生産減になるとして協調減産には消極的な立場のままである。

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しかし、この計画は、非OPECのメキシコが削減参加を拒否し、取り決めを認めないまま退席し、破綻した。
メキシコのエネルギー相は、同国が今後2カ月間の日量10万バレル減産を提案したとの声明を公表した。メキシコの2019年の生産は168万bpdで、23%の40万バレルの減産を求められていた。

OPECプラスはメキシコ抜きでの減産は行わない。また4月10日のOPECプラスの会合は予定していない。

付記

トランプ米大統領は4月10日、原油生産削減に向けてメキシコを支援することで合意したと明らかにした。メキシコ大統領は、米国が肩代わりする減産規模が日量25万バレルになると明かした。

トランプ大統領は、この25万バレルの肩代わり減産は「すでに実施済みだ」とし、この減産は他の産油国の合意次第で、メキシコは後日、米国に補償を行うとも述べた。

(ロシアは現在の米国の需要減による減産は協調減産とは認めていない。)

4月10日の緊急のG20エネルギー相テレビ会議は開催される。
G20議長国であるサウジアラビアが主催し、 新型コロナウイルスの感染拡大と経済封鎖によってエネルギー消費国の需要が急減していることへの対応を話し合う。

OPECプラス以外の各国が減産に合意すれば、進展する可能性はあるが、米国が減産に参加する可能性はほとんどない。

付記

G20エネルギー相は4月10日、テレビ会議形式で原油市場の安定に関する会合を行い、声明を発表した。声明は「エネルギー市場の安定確保のために必要かつ緊急の手段」を取ると述べるにとどまった。国別の削減量で産油国間の隔たりが埋まらなかった。

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これまでの経緯:

既報の通り、トランプ大統領が原油価格引き上げに動いた。

2020/4/4 トランプ大統領、原油価格引き上げに動く

サウジアラビア政府は4月2日、ムハンマド皇太子がトランプ大統領と電話会談し世界のエネルギー市場などの問題について協議したと明らかにした。そのうえで、新たな合意を結ぶため、OPECとロシアなどの産油国に対して、緊急会合の開催を呼びかけて減産について協議する考えを示した。

ロシアもプーチン大統領 が会合に賛同し、「世界全体で1日1千万バレル程度」という減産のメドまで示した。

OPECとロシアなどのOPECプラスは4月6日に電話会議を開き、協調減産を探る予定であった。しかし、これが 4月9日に延期となった。

ロシアが、油価低迷はサウジが米国のシェールオイルに対抗しようとして協調減産の合意から離脱し増産に転じたことが原因だと批判、
これに対し、サウジ側が「先に合意しなかったのはロシアだ」などと反発、会合を成功させるには調整が必要と判断した。

トランプ大統領は4月4日に、「多数のエネルギー産業の労働者を守るために輸入原油に関税を課す必要があれば私は必要なことは何でもする」と語り、4月5日に、サウジアラビアとロシアが原油の協調減産再開で合意できない場合、両国から輸入する原油に対して「大規模な関税」を上乗せすると明言した。

米エネルギー情報局によると、米国の原油輸入量は1月に日量640万バレルで、国内生産量の5割にあたる。

米国が関税で輸入を減らせば原油の余剰感が一段と高まりサウジやロシアに打撃になる可能性があるが、米国の消費者から反発が出るリスクもある。

OPECプラスは4月9日に会議を開くが、米国など他の産油国の協力が得られない限り、大幅減産には合意しない構えである。OPEC関係筋は、減産の規模は米国やカナダ、ブラジルなどの意向次第と強調、さらに、協調減産体制 崩壊後、一部加盟国が生産を拡大させており、減産のベースとなる水準も決める必要があると指摘した。

トランプ大統領は4月6日に、OPECから米石油会社に減産を要請するよう求められてはいないと述べた上で、米国の産油量はすでに減少しているとの見方を示した。
米エネルギー省は、米国の産油量は政府が行動しなくてもすでに減少して おり、さらに原油安を受け操業を縮小せざるを得ないため、米国の産油量は一時的に日量200万バレル程度減少するとの見方を示した。

しかし、ロシアの大統領報道官は原油需要減少や原油安を背景にした米国の減産を、市場安定に向けた協調減産は全く異なる削減だと述べ、減産の枠組みへの参加と応分の負担を求めた。

米国はこれまでのところ、減産合意に加わる方針は示していない。米企業は他社との生産調整が反トラスト法で禁止されている。 但し、専門家によると、州当局や連邦政府が生産水準を低く設定すれば減産は合法となる。

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